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装置編
データ編
概要
| 装置名 | X線光電子分光装置(XPS) |
|---|---|
| 製造メーカ | 日本電子株式会社 |
| 製造モデル | JPS-9010TR, JPS-9200 |
| 対象物 | 半導体、金属、絶縁体、有機、高分子材料など、様々な材料に適用可能。 |
| 測定対象 | 固体、薄膜、粉体 |
| サンプル調整 | 非破壊 |
| 測定環境 | 超高真空下 |
| 測定情報 | 元素同定、元素定量、化学結合状態 |
保有機関
| 機関名 | 機器ID | ARIM装置名 | モデル |
|---|---|---|---|
| 筑波大学 | BA-015 | X線光電子分光装置 | JPS-9010TR |
| 北海道大学 | HK-201 | X線光電子分光装置 | JPS-9200 |
| 北海道大学 | HK-406 | X線光電子分光装置 | JPS-9200 |
| 電気通信大学 | UE-007 | X線光電子分光装置 | JPS-9200 |
装置の特長・目的
X線光電子分光法(XPS)は固体表面 にX線を照射して表面から放出される光電子のエネルギーを分析することにより、固体表面の元素同定や元素定量および化学結合状態を分析する手法です。XPSは以下の特徴を持ちます。
- 軟X線(Al線源)を用いると~10 nm程度、硬X線(Cr線源)を用いると~30 nm程度の検出深さで分析が可能
- Li以上のすべての元素が分析対象
- 検出下限はおよそ0.1 atomic%程度
- 10数 µm程度の微小領域分析が可能
- 基本的に非破壊分析法であるが、イオンスパッタリングと組み合わせる(破壊法)ことにより深さ方向分析が可能
- 金属、半導体からセラミックスや有機材料まで幅広い材料を分析可能
- 超高真空下で分析することが必要
XPSはこれらの特徴を活かして薄膜や積層膜の表面・界面分析,表面処理材料の状態分析,表面における劣化・故障解析などに用いられます。
(引用文献:日本表面科学会編(1998)表面分析技術選書 X線光電子分光法 丸善出版、ISBN 978-4621081556)
計測原理
XPSはX線を試料に照射して試料表面から放出された光電子の運動エネルギーを分析する手法です。X線の励起エネルギー(hν)と試料表面に存在する元素が持つ電子軌道の束縛エネルギー(B.E.)とその電子軌道から放出された光電子の運動エネルギー(K.E.)との間には下記のような運動エネルルギー保存則が成り立ちます。
hν = K.E. + B.E.+Φ (Φ:試料の仕事関数)
X線の励起エネルギーは既知であるため、光電子の運動エネルギーを測定すれば光電子が存在した電子軌道の束縛エネルギーが求まります。この束縛エネルギーは元素固有の値を持つため、元素の同定を行うことができます。また、検出された各元素のピーク面積とそれらの相対感度係数を用いて元素定量を行うことができます。さらに、同一元素の同一軌道の束縛エネルギーは、注目している原子の結合状態により微妙に変化(化学シフト)するため、この変化量を読み取ることで元素の化学結合状態を分析することができます。
(引用文献:日本表面科学会編(1998)表面分析技術選書 X線光電子分光法 丸善出版、ISBN 978-4621081556)
推奨測定条件
【サンプルサイズ】
基本的には縦10 mm×横10 mm×高さ2 mm以内
【前処理】
サンプルから出るガスを極力少なくするため、真空デシケーターへ入れ脱ガスを行う。その他、加熱が可能なサンプルについては、100 ℃下で加熱を行い、脱ガスを行う方法も有効。また、表面敏感な装置のため、試料表面には触れないよう注意すること。試料の試料ホルダーへのセッティング方法を付帯情報として表1に記載します。
【計測条件】
推奨実験条件を次の表2に示します。(ピンクでハッチングした項目が該当条件)
【推奨実験条件】
表2に、推奨される測定条件を示します(ピンクでハッチングされた項目が該当条件)。これには、エネルギー分解能、測定時間、試料の帯電補正方法、及びスパッタリング条件が含まれます。
表1:試料の試料ホルダーへのセッティング方法について
※1アルゴンスパッタ時に、隣接する他試料にスパッタされた成分が付着する恐れがあるため、試料間の距離は出来るだけ離すこと。 ※2粉体でも基板でもないもの(例えば線状、岩石系、ゲル状など不定形)については、装置担当へ確認すること。基本的には何かしら加工を行って薄い板状に近づけ、貼り付ける、留める方法が望ましい。
※3カーボンテープが目視で見える状態で分析を行うと、テープ由来の情報が検出されてしまうため、隠れるように試料を貼り付けること。
表2-1:Wide scanの推奨実験条件
表2-2:Narrow scanの推奨実験条件
※ Wideスキャン、Narrowスキャンの推奨実験条件欄「Ag3d5/2のFWHMの数値」は参考数値
較正/キャリブレーション
【標準サンプル】
高純度のAg、Cu、Au 板
【実施者】
装置メーカー
【実施頻度】
1年に1回
【較正方法】
清浄なAg、Cu、Au表面を用いてエネルギー分解能、感度、ピークの束縛エネルギーの位置を確認する。
①アルゴンイオンスパッタを用いてAg、Cu、Au 表面の清浄化処理を行う。
②エネルギー軸調整を行う。
1.エネルギー軸較正
X線源: MgKa
電圧・電流: 10 kV / 5 mA
Energy Step: 0.05 eV
Dwell Time: 0.1 s
Pass Energy: 10 eV
実施内容: Au 4f7/2、Cu-LVV、Cu2p3/2のピーク位置を確認し、エネルギー軸の較正を行う。Offset値を記録する。
2.Pass Energy
X線源: MgKa
電圧・電流: 10 kV / 5 mA
Energy Step: 0.05 eV
Dwell Time: 0.1 s
Pass Energy: 5, 10, 20, 30, 50 eV
実施内容: 各Pass energyのAg 3d5/2のピーク位置を確認する。
③各分析条件の状況確認
1.マクロモード
X線源: MgKa
電圧・電流: 12 kV / 2.5 mA
Energy Step: 0.05 eV
Pass Energy: 10, 20 eV
分析径: 3.0, 1.0 mm
実施内容: Ag 3d5/2の分解能、感度を確認する。
2.マイクロモード
X線源: MgKa
電圧・電流: 12 kV / 25 mA
Energy Step: 0.05 eV
Pass Energy: 10, 20 eV
分析径: 0.2, 0.03 mm
実施内容: Ag 3d5/2の分解能、感度を確認する。
3.モノクロメーター
X線源: モノクロX線(AlKa)
電圧・電流: 12 kV / 25 mA
Energy Step: 0.05 eV
Dwell Time: 0.1 s
Pass Energy: 10 eV
分析径: 3.0 mm
実施内容: Ag 3d5/2の分解能、感度を確認する。
4.Wide Scanスペクトル確認
X線源: MgKa, AlKa
エネルギー範囲: 1000~0 eV
分析径: 3.0, 0.2 mm
実施内容: Au, Ag試料のWide Scanを行い、スペクトルの確認をする。
※記載にない条件についてはデフォルト設定に従う
運用条件(主な消耗品)
JPS-9200用の各パーツの寿命の目安(使用環境や使用状況に依存)
| 部品 | 交換時期の目安 |
|---|---|
| チタンサブリメーションポンプのフィラメント | 1本15時間程度 |
| ヌードイオンゲージのフィラメント | 誤って大気中で点火した場合 |
| ターボポンプのオイル | 年1回程度 |
| ロータリーポンプのオイル | 年1回程度 |
| ロータリーポンプのミストトラップ | 2~3年に1回程度 |
| TMP潤滑オイル | 6ヶ月程度 |
| X線アノード冷却用循環水 | 年3~4回程度 |
| X線アノード冷却用循環水のフィルター | 年2回程度 |
| X線アノードのフィラメント(モノクロメーター用も含む) | 1000時間以上 |
参考文献
[1] H. Shinotsuka et al.“Automated information compression of XPS spectrum using information criteria”, J. Electron Spectrosc. Relat. Phenom., 239, 146903 (2020).
https://doi.org/10.1016/j.elspec.2019.146903