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装置編
データ編
装置編
概要
装置名 |
走査電子顕微鏡(SEM) |
---|---|
製造メーカ |
株式会社 日立ハイテク |
製造モデル |
S-3700N, S-4300, S-4700, S-4800, S-5200, S-5500, SU6600, SU8000, SU-8020,SU8230, SU8240, SU-9000, TM3000, TM4000Plus, TM4000PlusII, Regulus8230 |
対象物 |
半導体、金属、絶縁体、有機、高分子材料など、様々な材料に適用可能。 |
測定対象 |
粉体、 バルク、 基板・板材、フィルム、線材など |
サンプル調整 |
非破壊 |
測定環境 |
真空下 |
測定情報 |
微小領域観察、表面構造観察 |
保有機関
機関名 |
機器ID |
ARIM装置名 |
モデル |
---|---|---|---|
産業技術総合研究所 |
AT-004 |
電界放出形走査電子顕微鏡 |
S-4800 |
筑波大学 |
BA-008 |
電界放出型走査電子顕微鏡 |
SU8020 |
千歳科学技術大学 |
CT-010 |
走査型電子顕微鏡 |
TM4000Plus |
北海道大学 |
HK-404 |
超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡 |
Regulus8230 |
東京科学大学 (旧:東京工業大学) |
IT-006 | 走査型電子顕微鏡 | S-5200 |
北陸先端科学技術大学院大学 | JI-010 | 低加速走査電子顕微鏡 | Regulus8230 |
京都大学 | KT-301 | 超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡 | SU8000 |
京都大学 | KT-302 | 分析走査電子顕微鏡 | SU6600 |
京都大学 | KT-325 | 卓上顕微鏡 | TM3000 |
九州大学 | KU-511 | 超高分解能走査電子顕微鏡装置 | SU9000 |
分子科学研究所 | MS-202 | 低真空分析走査電子顕微鏡 | SU6600 |
名古屋工業大学 | NI-019 | 走査電子顕微鏡 | S-4700 |
物質・材料研究機構 | NM-006 | 卓上走査型電子顕微鏡装置群 | TM4000PlusII TM3000 |
物質・材料研究機構 | NM-227 | 電界放出形走査電子顕微鏡 | SU8000 |
物質・材料研究機構 | NM-621 | FE-SEM | S-4800 |
物質・材料研究機構 | NM-647 | FE-SEM+EDX | S-4800 |
物質・材料研究機構 | NM-648 | FE-SEM+EDX | SU8000 |
物質・材料研究機構 | NM-649 | FE-SEM+EDX | SU8230 |
物質・材料研究機構 | NM-650 | 卓上電子顕微鏡 | TM3000 |
奈良先端科学技術大学院大学 | NR-205 | 超高分解能電界放出型電子顕微鏡 | SU9000 |
奈良先端科学技術大学院大学 | NR-206 | 低真空分析走査電子顕微鏡 | SU6600 |
名古屋大学 | NU-227 | 走査型電子顕微鏡 | S-5200 |
名古屋大学 | NU-228 | 走査型電子顕微鏡 | S-4300 |
広島大学 | RO-521 | 走査電子顕微鏡 | S-4700 |
信州大学 | SH-101 | 電界放出型走査電子顕微鏡 | SU8000 |
東北大学 | TU-314 | 熱電子SEM | S-3700N |
電気通信大学 | UE-010 | 走査型電子顕微鏡 | S-4300 |
早稲田大学 | WS-011 | 電界放出型 走査電子顕微鏡 | S-4800 |
早稲田大学 | WS-012 | 電界放出型 走査電子顕微鏡 | SU8240 |
早稲田大学 | WS-013 | 電界放出型 走査電子顕微鏡 | S-5500 |
装置の目的・特徴
走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)の特長は、微細構造の詳細な観察と分析にあります。SEM は高い分解能を持ち、数ナノメートル以下の微細な構造を可視化することができます。このため、材料科学や生物学、半導体工業などの分野で重要なツールとなっています。SEM を使用することで、試料の表面形態を高精度に観察できるだけでなく、エネルギー分散型X 線分光法(EDS:Energy DispersiveX-ray Spectroscopy)を併用することで元素組成の分析も可能です。また、三次元構造の観察により、試料の立体的な形状を明らかにすることができます。
SEM は試料を破壊せずに観察できるため、非破壊検査としても利用されます。こうした特性により、SEMは研究開発や品質管理、故障解析など、さまざまな応用分野で不可欠な役割を果たしています。
【前処理】
1. 高分解能
・数ナノメートル以下の分解能で微細構造を観察できる。
・光学顕微鏡に比べて非常に高い分解能を持つ。
2. 高い拡大率
・数十倍から数十万倍までの拡大が可能。
・観察対象の微細な部分を詳細に見ることができる。
3. 広い焦点深度
・高い焦点深度を持ち、立体的なイメージを得ることができる。
・表面の粗さや凹凸を詳細に観察可能。
4. 多様な検出器
・二次電子検出器(SE):表面形態の観察に使用。
・反射電子検出器(BSE):材料の組成や密度のコントラスト観察に使用。
・X 線分光器(エネルギー分散型EDS, 波長分散型WDS):元素分析に使用。
・電子線後方散乱回折検出器(EBSD):結晶方位解析に使用。
5. 非破壊検査
・試料を破壊せずに観察・分析が可能。
・生体組織や工業製品の検査に適している。
測定原理
走査電子顕微鏡(SEM)は、試料の表面構造を高精度で観察するための装置です。SEM の主な計測原理は以下の通りです。
①電子プローブの照射:
SEM では、非常に細い電子線(電子プローブ)を生成し、この電子プローブを試料表面に照射します。
②二次電子の放出:
照射された電子プローブが試料に当たると、試料表面から二次電子と呼ばれる電子が放出されます。この二次電子は、照射された電子プローブのエネルギーを受けて放出されるものであり、試料表面の情報を持っています。
③二次電子の検出:
試料から放出された二次電子を検出器で検出します。この検出器は、二次電子の多い少ないを測定するための装置です。
④画像の形成:
電子プローブを試料表面上で二次元的に走査します。すなわち、電子プローブを横方向および縦方向に移動させながら試料全体を照射します。検出された二次電子の強度に基づいて、試料表面の凹凸や微細な構造が画像として表示されます。この画像は、二次電子の強度の変化に応じて明暗がつけられるため、試料表面の形状や質感を視覚的に確認することができます。
⑤反射電子の放出と検出:
照射された電子で試料により散乱されて再放出されるものは反射電子と呼ばれ、二次電子より高いエネルギーを持ちます。エネルギーが大きいため二次電子よりも深い領域からも放出され、検出されます。二次電子と同様の検出器で検出されるが、センサー入射部にバイアス電圧をかけるなどして二次電子と区別して検出したり、二次電子と独立したセンサーを用いて同時計測したりする場合もあります。
推奨測定条件
【前処理】
① 試料マウント
試料の移動(ドリフト)を防ぐため、試料は一般に導電性テープやペーストで固定します。
② 導電性コーティング
観察面に導電性がない場合、異常コントラスト(チャージアップ)が発生して観察できなくなります。この場合は、導電性コーティングが必要となり、その厚みは一般に二次電子が放出される10nm 以下が目安となります。
【観察条件】
① 加速電圧
一般にプラスチック、紙、生物試料など密度の小さい試料は低加速電圧(目安として〜5kV)、金属など密度の大きい試料は高加速電圧(目安として15kV)で観察します。
② 照射電流/ スポットサイズ
高倍率での写真を必要とする場合は、スロースキャンで像が確認できるくらいの小さいスポットサイズを使います。低倍率で撮影する場合には、大きめのスポットサイズにすると鮮明な画像が得られます。ただし、試料が電子線の照射で壊れる場合は、小さいスポットサイズにします。
③ 作動距離/ ワーキングディスタンス(WD)
一般に、短いWD では分解能が上がり、長いWD では焦点深度が増します。ただし、検出器やその取り付け位置によって、最適なWD は異なるため、適切な値を設定する必要があります。
より詳細な測定方法については、「走査電子顕微鏡試験方法通則」[1]、「 SEMと友達になろう」[2]、「実践SEMセミナー ―走査電子顕微鏡をつかいこなす」[3]、「新・走査電子顕微鏡」[4] をご参照ください。
較正/キャリブレーション
一般的な使用における較正日常的な利用の範囲では、通常、特別な較正は不要です。較正は、定期保守点検やオーバーホールの際に、メーカーの担当者が実施することが一般的です。装置のカタログスペックにおいては、カーボン上の金粒子を用いたギャップ分解能(空間分解能)の測定がよく用いられます[5]。
観察条件ごとの調整
最適な画像を得るためには、観察条件を変更する際に光軸やビームの調整が必要です。この調整は、例えば加速電圧や倍率を変更する場合に重要です。調整項目はSEM の機種やモデルによって異なるため、装置のマニュアルを確認するか、担当者にご相談ください。
運用条件(主な消耗品)
部品 |
消耗箇所 |
交換時期*の目安 |
---|---|---|
タングステンフィラメント |
タングステンフィラメントは使用中に高温で加熱され、電子を放出しますが、これによりフィラメント自体が劣化し、最終的には切れて、電子が放出できなくなります。 |
通常50時間程度が目安です。 |
LaB6フィラメント |
タングステンワイヤーに六ホウ化ランタン(LaB6)の結晶を接合したもので高い分解能を提供しますが、長期間の使用により劣化して輝度が落ちるか、最終的には切れて、電子が放出できなくなります。 |
約1年程度の使用で交換を推奨します。 |
FEエミッタ |
フィールドエミッションタイプのエミッタはさらに高い分解能を提供しますが、長期間の使用により劣化し輝度が落ちます。 |
約3年程度の使用で交換を推奨します。 |
試料台 |
アルミ・真鍮・カーボン製の物が一般的です。EDS分析を行う場合には分析対象に干渉しないものを選択します。装置や測定モードにより試料台の形状が異なりますので、詳細は装置担当者とご相談下さい。 |
汚れがひどくなった場合、破損した場合は交換を推奨します。 |
コーティング材料 |
カーボン・金・オスミウム・白金パラジウムなどの蒸着膜がよく利用されます。粒状感がなく、導電性が良く、影に回り込みやすいものが理想的です。 |
使い捨てのものから、約1年程度の使用できるものがあります。 |
参考文献
[1] 日本規格協会“JIS K0132 走査電子顕微鏡試験方法通則”(1997)
[2] 株式会社日立ハイテク, “SEM と友だちになろう”(2020)
[3] 鈴木俊明, 本橋光也, “ 実践SEM セミナー ― 走査電子顕微鏡をつかいこなす”, 裳華房(2023)
[4] 日本顕微鏡学会関東支部編, “ 新・走査電子顕微鏡”, 共立出版 (2011)
[5] 熊谷和博, 黒河明, “SEM における分解能評価法と評価用標準物質”, 顕微鏡, 57, No1, p.23-30
(2022)