利用報告書 / User's Reports

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【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.05.08】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

24UT0016

利用課題名 / Title

超音波プロセスによるアルミニウム合金の組織制御手法の検討

利用した実施機関 / Support Institute

東京大学 / Tokyo Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion(副 / Sub)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions

キーワード / Keywords

アルミニウム基合金,金属間化合物,電子顕微鏡/ Electronic microscope,イオンミリング/ Ion milling,電子回折/ Electron diffraction


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

市川 雅巳

所属名 / Affiliation

東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

劉思恩

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

押川浩之,寺西亮佑

利用形態 / Support Type

(主 / Main)技術補助/Technical Assistance(副 / Sub),機器利用/Equipment Utilization


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

UT-154:イオンスライサー
UT-157:TEM用ハイスループットイオン研磨システム
UT-007:高分解能分析電子顕微鏡
UT-006:ハイスループット電子顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

A2017(ジュラルミン)の析出挙動に超音波プロセスが与える影響を検討するために利用した。超音波プロセスを受けた試料と通常の熱処理を受けた試料の析出物を直接観察した。主におもにハイスループット電子顕微鏡(UT-006)を用いたSTEM観察およびEDS分析を行った。

実験 / Experimental

TEM観察用試料はイオンスライサー(UT-154)を用いて作成した。また、作成後の試料における別視野の確保等を目的としてTEM用ハイスループットイオン研磨システム(UT-157)による追加の研磨も行った。UT-006および007によるSTEM観察では、GPゾーンやθ'を観察することに重点を置いた。また、これらの析出物の特性上、電子線の入射方位が(100)になるように調整した。特徴的なコントラストが得られた場合は、溶質元素の偏析の有無を確認するためにEDS分析を行った。

結果と考察 / Results and Discussion

A2017を190℃で3h時効した試料のSTEM-DF像を図1a)、b)に示す。大量の線状の析出物が分散していることが確認された。これらの析出物は長さが10nmほどのものから100nmを超えるものがある。この試料では、GPゾーンとθ’が混在していると考えられる。GPゾーンは、転位運動に切断される際に周辺のひずみが転位の移動を妨害する。θ’は強度が高く、転位をピンニングして強化に寄与するが、粗大化しやすく、過時効の原因となる。熱処理による時効では、これらの二種類の析出物によって最大の強度が得られることが確認できた。超音波振動をA2017に施した試料のSTEM-DF像を図1c),d)に示す。人工時効で観察されたような線状の析出物は確認できなかった。一方で、10nmに満たないサイズの明るいコントラストが大量に存在していることが確認された。STEM-DF像では原子番号が大きいほど明るいコントラストで観察される。そのため、観察された無数の明るいコントラストの領域には、原子番号の大きい元素が偏析している可能性がある。そこで、STEM-DF像と同じ視野でEDSを用いた元素分析を行いCu原子の分布を評価した結果、明るいコントラストと銅原子の偏析が一致している領域が存在することを確認できた。また、超音波接合を施した試料でも大きさが5nmにも満たない細かいコントラストが大量に分散していることが確認されており、こうした微細なコントラストは超音波プロセスを施した試料に特有のものであった。 ピーク時効前のAl-Cu系合金を室温で繰り返し変形させた場合、大量の過剰空孔が導入され、4~5nmほどのサイズのGPゾーンや銅原子のクラスターが生成し、機械特性か向上することが報告されている[1]。超音波プロセスにおいても、繰り返しの塑性変形が生じ、過剰空孔が注入され、析出過程が促進されると考えられる。よって、超音波プロセスを施した試料では、大量の過剰空孔が導入されることで、微細なGPゾーンや銅原子のクラスターが析出すると考えられ、観察された微細なコントラストは、これらの析出物に対応していることが示唆された。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 STEM観察結果 a), b): 190℃で3hの時効処理を行った試料のSTEM-DF像 c),d): 超音波プロセスを受けた試料のSTEM-DF像 e): d)の視野における元素マッピング結果


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

参考文献
[1] W.Z.Han, et al: Materials Science and Engineering A 528 (2011) 7410-7416


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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