【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.05.22】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
24TT0020
利用課題名 / Title
無機・金属結晶表面を用いた構造作製の表面科学研究
利用した実施機関 / Support Institute
豊田工業大学 / Toyota Tech.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion
キーワード / Keywords
ワイドギャップ半導体/ Wide gap semiconductor,エレクトロデバイス/ Electronic device,走査プローブ顕微鏡/ Scanning probe microscope
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
岡田 有史
所属名 / Affiliation
京都工芸繊維大学材料化学系
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
吉村雅満
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),共同研究/Joint Research
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
(1) 近年,世界中で増加し続ける電力需要を背景に、ロスの少ないパワーデバイスの開発が急務となっている.酸化ガリウムは絶縁破壊電圧の高いデバイスを作製することに適しており,融液から成長可能であるという利点を持っている.しかしながら酸化ガリウムはp型にすることが極めて困難であるという欠点があり,この問題に対するアプローチが広く研究されている.その中で,p型層として別の物質を用いたヘテロ構造の作製は特に有望である.p型の物質には酸化ニッケル等がある.本研究では,酸化ガリウムの上に異なる方法で酸化ニッケル層を作製し,作製条件と微細構造の関係を明らかにすることを目的とする.ゾルゲル法及びミスト化学気相析出法(CVD)で作製したNiO/β-Ga2O3試料をAFMで観察し,結晶性の良い条件を探索した.(2) 有機分子溶液を出発物質とした2次元構造の構築は,条件設定が難しい分子蒸着を要しないという利点から,新規デバイスや新たな触媒の開発等において重要な技術になると期待される.本研究ではUllmannカップリング反応に注目し,Au表面上での平面状分子の重合を試みてきたが,反応の進行には金属触媒の酸化的付加が必要であり,2量体以上を合成するのは困難であった.しかし酸化しやすい金属の基板は大気中での取り扱いが困難である.そこで,本研究ではAu表面に少量の異種金属が露出した表面を作製することを考案した.基板は従来の真空蒸着法で結晶質のAu-Ag-AuおよびAu-Cu-Auサンドイッチ構造を作製し,使用直前に真空中でアニールして一様な組成とした.その上で有機分子を反応させ,重合度の高いネットワーク構造の作製を試みた.
実験 / Experimental
(1) ミストCVDでは,基板を石英ガラスまたは劈開マイカとし,石英管中に設置し,管状炉にセットした.原料には0.03Mのニッケルアセチルアセトナート水溶液を用いた.これを3MHzの超音波でミスト化させ,キャリアガスで管状炉に輸送した.キャリアガスは窒素とした.反応中の温度は最大650℃とした.排気はガス洗浄瓶を通して排出した.析出物生成後の試料はX線回折(XRD)および原子間力顕微鏡(AFM)で構造評価を行い,透過スペクトルによって光学バンドギャップを見積もった.(2) 合金薄膜を作製する基板には劈開マイカを用い,2台の真空蒸着装置を用いて薄膜を生成させた.一つめの蒸着装置にはAuとCuをタングステンボートに,二つめの蒸着装置にはAuとAgをタングステンバスケットに充填した.充填した金属は全て粒状のものとした.蒸着中の真空度は2~4×10-4Pa,温度は350℃とした.金属薄膜はいずれも全体の厚さを約60nmとし,最初にAuを蒸着させ,異なる厚さでCuまたはAg,そして最終的にAuを蒸着した.これらのサンドイッチ状の膜は使用直前に真空加熱炉に入れ,ロータリーポンプで排気しながら400~500℃で加熱し,一様な組成とした.加熱後の薄膜基板の上に,1.4-ブタンジオールを溶媒とした2,4,6-トリス(4-ブロモフェニル)トリアジン(TBPT)の0.05mM溶液をマイクロピペットで滴下し,セラミックカバーを置いてホットプレートで70~80℃で加熱し,溶媒を蒸発させた.生成物は走査トンネル顕微鏡(STM)で構造の評価を行った.
結果と考察 / Results and Discussion
Fig.1に,ミストCVDで作製されたNi-O膜のAFM像の例を示す.膜は基板において同心円状に色の異なる領域を示し,最も内側が黒色,外側が銀色の金属光沢を持つ部分となっていた.金属光沢を持つ部分については,反応中に酸素が不足したため金属Niが析出したものと考えた.AFM像は中心付近について測定されたものである。Fig.1に,AFM像の例を示す.Fig.1(a)は400℃で1時間,(b)は500℃で1.5時間それぞれ成膜したものである.基板はいずれも劈開マイカである.それぞれのAFM像の右側に,断面プロファイルを示す.AFM像からわかる通り,析出自体には成功しているが,析出物は晶癖の見られない粒状のものであり,結晶性の向上のためにはガス種を酸素にしたり,温度やミスト供給速度を調節する必要があると考えられる.Fig.2(a)に,Au-Cu 5:1の合金表面,(b)にAu-Cu 11:1の表面にTBPT溶液を滴下して150℃で加熱乾燥した後の走査トンネル顕微鏡(STM)像を示す.Au-Cu 5:1の基板はステップが多いものの原子レベルで平坦な箇所が多く見られ,分子の反応に好適ではないかと期待される.Au-Cu11:1の表面に分子を置いた試料については,2次元ではなく3次元的な成長が見られたため,合金基板の組成や加熱条件を最適化する必要があるものと考えられた.
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig. 1 AFM images of NiO layer grown on fleshly cleaved mica substrates via mist-CVD. (a) After 400℃, 1h-growth. (b) After 500℃, 1.5h-growth. Right panels: cross-sectional profiles along the selected lines.
Fig. 2 STM images of (a) bare Au-Cu 5:1 substrate after annealed at 400℃ for 2h and (b) after application of the precursor solution and solvent evaporated at 150℃. Inset: cross-sectional profile along the selected line.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件