【公開日:2026.04.01】【最終更新日:2026.04.01】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
24HK0067
利用課題名 / Title
遷移金属酸化物薄膜の構造解析
利用した実施機関 / Support Institute
北海道大学 / Hokkaido Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
ARIM半導体基盤PF関連課題 / Related to ARIM-SETI
指定なし/No Designation
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
電子顕微鏡/ Electronic microscope,集束イオンビーム/ Focused ion beam,トポロジカル量子物質/ Topological quantum matter,原子薄膜/ Atomic thin film,スピン制御/ Spin control,量子効果/ Quantum effect,表面・界面・粒界制御/ Surface/interface/grain boundary control,超伝導/ Superconductivity
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
迫田 將仁
所属名 / Affiliation
北海道大学 大学院工学研究院
共同利用者氏名 / Names of Collaborators Excluding Supporters in the Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Supporters in the Hub and Spoke Institutes
谷岡 隆志,澤 厚貴,平岩 健聖
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術代行/Technology Substitution
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
HK-107:量子・電子制御ナノマテリアル顕微物性測定装置
HK-304:集束イオンビーム加工・観察装置
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
2021年、申請者は強相関化合物CaRuO3を超薄膜化することで、フェルミ波長のオーダーに厚さを制御して人工的に低次元電子系を創出した。膜厚に対して25Å周期で絶縁化する新奇なサイズ効果を発見した。量子井戸に起因する従来のサイズ効果と比較すると、低温で数十億倍も変化が大きい。この低次元電子系を発展させるため、本研究では高品質なCaRuO3超薄膜の作製に取り組んだ。CaRuO3を成膜する分子線エピタキシー法の条件を系統的に変化させて物性を測定した。成膜温度・カルシウムルテニウム供給比率・酸素圧において広い成膜ウィンドウを示した。 当初電気抵抗率測定した新奇サイズ効果の絶縁化は、薄膜の厚さに依存して変わっていた。その顕著な絶縁化の条件を明らかにするため、カルシウムとルテニウムの分子線を精密制御することで、その比率を変えてサイズ効果を測定した。その結果、カルシウムの供給比率が多い成膜条件Ca/Ru = 1.2~1.8で、化学量論比のCaRuO3が平坦に成長することを明らかにした。このようなカルシウムリッチな成膜によってサイズ効果が顕著にみられることを明らかにした。薄膜の表面粗さが ~ 2 ÅのCa/Ru=1.6の条件下でサイズ効果がはっきりと表れることを示した。 本研究を始めるきっかけとなったサイズ効果は、従来の発現メカニズムによっては説明できない。新奇サイズ効果による絶縁化は、Ea=2.4eVにも達する熱励起エネルギーに相当する。本研究ではサイズ効果の絶縁化が格子の拡大を伴っていることを示し、ルテニウムサイト間の強いクーロン斥力による‘Mott絶縁体’であることを突き止めた。申請者は面内X線回折を、さまざまな膜厚のCaRuO3に対して測定した。 24.8 Åの膜厚周期の格子d(004)の拡大を発見し、絶縁化する膜厚に一致することを突き止めた。また、報告されたフェルミ面の中に結晶の~25Å周期を示すネスティングベクトルを発見した。電荷に変化がないことから、スピン密度波であることを報告した。
実験 / Experimental
料評価方法 面内・面直X線回折を用いてそれぞれの薄膜の構成定数を決定した。測定にはSmartLab (Rigaku Co., Ltd.)を用いた。薄膜の厚さは、SmartLab (Rigaku Co., Ltd.)を用いたX線反射率測定により決定した。原子間力顕微鏡を用いて表面粗さを決定した。薄膜の断面を観察する為、透過電子顕微鏡を用いた観察を行った。そのための薄膜の資料を加工するために、終息イオンビームを用いた。その後表面の不純物を取り除くため、アルゴンイオンを用いた表面ミリングを行った。走査透過電子顕微鏡JEM-ARM 200F (JEOL Co., Ltd.)を用いて断面微細構造を観察した。加速電圧は 200 kV であった。収差補正を用いて暗視野像と明視野像を取得した。透過電子顕微鏡の回折には同様にJEM-ARM 200F (JEOL Co., Ltd.)を用いた。加速電圧は V = 50-200 kVである。カメラ調は l = 100 cm である。
結果と考察 / Results and Discussion
ルテニウムに対するカルシウム元素の供給比率をあげることで、サイズ効果の絶縁状態のエンハンスを確認した。Ca/Ru = 1.2の成膜条件では電気抵抗率の極大値は4 Kの低温において 2x 10-3 Wcmであった(図1左)。一方で、Ca/Ru = 1.6の成膜条件においては、4Kで最大103 – 10-2 Wcmまで上昇した(図1右)。Ca/Ru ≦ 1.2の条件では、薄膜表面に~10Åの深いクラックが形成されることを原子間力顕微鏡によって確認した。この構造が同一の薄膜中での厚さの違いを生み出しており、サイズ効果のエンハンスを抑制していると結論付けた。一方で、Ca/Ru ≧ 1.4 とカルシウム供給を多くする成膜条件においてクラックが消失しており、特にCa/Ru = 1.4の条件では平均面粗さが Ra = 1.4 Åと、下地となるネオジガレート基板に匹敵する平たんさを達成した。従来の量子サイズ効果と比較して、申請者が発見したCaRuO3の膜厚に依存するサイズ効果の変化率は室温でも数千倍大きい。一方で、サイズ効果の極大値である絶縁状態についても、膜厚に依存して電気抵抗率の大きさが変わっておりそのエンハンス条件が不明であった。新奇サイズ効果を有効に活用するためには、その絶縁化を再現よく達成する必要がある。その成膜条件の1つであるカルシウムとルテニウムの供給比率に注目し、ターゲット物質であるCaRuO3の成膜条件に対するサイズ効果の変貌を明らかにした。カルシウム元素の供給比率をあげることで、サイズ効果の絶縁状態のエンハンスを確認した。Ca/Ru=1.2の成膜条件では電気抵抗率の極大値は4Kの低温において 2x 10-3 Wcmであった。一方で、Ca/Ru=1.6の成膜条件においては、4Kで最大103 Wcmまで大きく上昇した。Ca/Ru ≦ 1.2の条件では、薄膜表面に~10Åの深いクラックが形成されることを原子間力顕微鏡によって確認した。この構造が同一の薄膜中での厚さの違いを生み出しており、サイズ効果のエンハンスを抑制していると結論付けた。一方で、Ca/Ru ≧ 1.4 とカルシウム供給を多くする成膜条件においてクラックが消失しており、特にCa/Ru = 1.4の条件では平均面粗さが Ra = 1.4 Åと、下地となるネオジガレート基板に匹敵する平たんさを達成した。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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M. Sakoda, Mott insulators appearing at a thickness period corresponding to nesting in CaRuO3, Applied Physics Letters, 126, (2025).
DOI: https://doi.org/10.1063/5.0267360
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件