【公開日：2025.07.25】【最終更新日：2025.07.10】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22KT0049

利用課題名 / Title

ポリマーアロイ界面の化学結合状態評価

利用した実施機関 / Support Institute

京都大学 / Kyoto Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

ARIM半導体基盤PF関連課題 / Related to ARIM-SETI

指定なし/No Designation

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】（主 / Main）計測・分析/Advanced Characterization（副 / Sub）-

【重要技術領域 / Important Technology Area】（主 / Main）マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials（副 / Sub）-

キーワード / Keywords

モノクロメータ付EELS,高分子材料,電子顕微鏡/Electron microscopy,電子分光

利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名（課題申請者）/ User Name (Project Applicant)

稲元 伸

所属名 / Affiliation

株式会社東レリサーチセンター

共同利用者氏名 / Names of Collaborators Excluding Supporters in the Hub and Spoke Institutes

川崎 直彦,大塚 祐二

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Supporters in the Hub and Spoke Institutes

治田 充貴

利用形態 / Support Type

（主 / Main）機器利用/Equipment Utilization（副 / Sub）,共同研究/Joint Research

利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

KT-403：モノクロメータ搭載低加速原子分解能分析電子顕微鏡

報告書データ / Report

概要（目的・用途・実施内容）/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

高分子(ポリマー)材料は我々の身の回りで広く使用されており、その用途に応じて耐熱性、耐衝撃性、成形性など、様々な性能が要求される。より多様かつ高度な要求を満たすためには、単一のポリマーだけでは難しくなってきており、複数の成分を混合したポリマーアロイの開発が盛んに行われている。ポリマーアロイは混練や重合の方法・条件により、大きく性能が変化し、特に異種成分間界面の化学結合を最適な状態に制御することは重要になる。このような界面設計指針を得るためには界面近傍のポリマーの化学結合状態を正確に把握する必要があるが、ポリマーアロイの界面層は100 nm以下のごく局所的な領域でしか形成されておらず、高い空間分解能を有する化学結合状態解析手法が求められる。本研究では、モノクロメータ付走査透過型電子顕微鏡法(STEM)-電子エネルギー損失分光法(EELS)を用いて、ポリマーアロイの界面層の情報を取得することができないか検討を行った。

実験 / Experimental

測定用試料として異なる2成分のポリマーから構成されるポリマーアロイを用いた。TEM観察用試料薄片化は凍結超薄切片法を用いて行った。
測定には京都大学が保有するモノクロメータ搭載低加速原子分解能分析電子顕微鏡(日本電子　JEM-ARM200F)を使用した。EELSのエネルギー分解能を向上させるために、加速電圧は60 kVで測定を実施した。

結果と考察 / Results and Discussion

事前に実施した電子染色を適用したTEM観察結果より、本ポリマーアロイは海島構造を形成しており、島相のサイズはµmオーダーであることが分かっている。Fig. 1(a)示した円環状暗視野(ADF)-STEM像においても、2成分の像コントラストが発現しており、無染色でも各成分を可視化することができている。
Fig. 1(b)及び1(c)にそれぞれ海相領域と島相領域で取得した低エネルギー損失領域のモノクロEELSスペクトルを示す。海相領域から得られたスペクトルには6.5 eV近傍に明確なピークが確認される。このエネルギー位置にはカーボンのπ→π*遷移に起因するピークが出現することが知られており、海相はπ電子を有することを意味している。一方で、島相から取得したEELSスペクトルは5 eV近傍からブロードなピークが立ち上がっており、明らかに海相とは異なるスペクトル形状を示している。
今回当初の目的であったポリマーアロイ界面近傍の特異的な電子状態を捉えることを試みたが、測定した凍結超薄切片の試料厚みが不均一であり、信頼性のある界面情報を取得するに至らなかった。一方で、各成分を反映したEELSスペクトルの取得には成功することができたため、良好なTEM試料さえ準備できれば、ポリマーアロイ界面の電子状態情報を取得できる可能性がある。本テーマについては、前処理方法の最適化が今後の課題となると考えられる。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations

Fig. 1(a)：無染色で観察したポリマーアロイのADF-STEM像、
(b)：海相領域から取得したモノクロEELSスペクトル、
(c)：島相領域から取得したモノクロEELSスペクトル

その他・特記事項（参考文献・謝辞等） / Remarks(References and Acknowledgements)

測定の際にご指導を頂いた、京都大学化学研究所先端ビームナノ科学研究センター　倉田博基教授、治田充貴准教授に感謝申し上げます。

成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング（DOIのあるもの） / DOI (Publication and Proceedings)

口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.

特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications：0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents：0件