利用報告書 / User's Reports

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【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.04.18】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

24QS0117

利用課題名 / Title

カルシウム系材料の超高圧下における水素化挙動の調査

利用した実施機関 / Support Institute

量子科学技術研究開発機構 / QST

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

X線回折/ X-ray diffraction,放射光/ Synchrotron radiation,水素貯蔵/ Hydrogen storage


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

宮岡 裕樹

所属名 / Affiliation

広島大学自然科学研究支援開発センター

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

中平 夕貴,内海 伶那,杉田 秦太,恒松 紘喜,長塚 祐輝

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

齋藤 寛之

利用形態 / Support Type

(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

QS-141:高温高圧プレス装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

GPa級の高圧下で金属元素と水素のモル比H/M>3となる多量の水素を結晶内に取り込むLaH10やCaH6といった物質はスーパーハイドライドと呼ばれ,常圧下で形成する水素化物(LaH2,CaH2)とは異なる物性を示す。このようなスーパーハイドライドは,高い重量水素密度を実現可能であるため水素貯蔵材料としての利用も期待される。NEDO燃料電池・水素技術開発ロードマップの2050年仮目標には,液化アンモニアと同程度である「80 g H2/kg (8 wt.%)以上」という値が設定されているが,この値は非常に高く,既存の水素貯蔵材料研究の延長では達成が困難である。従って,これまでとは異なる材料設計が必要不可欠であり,上記のようなスーパーハイドライドはその候補材料の一つである。しかしながら,GPa級の水素圧力は実用上利用が困難であるため,スーパーハイドライド形成圧力の低減が求められるが,これら水素化物の安定性や形成メカニズムについては未解明な部分が多い。本研究では,スーパーハイドライドを形成する典型物質としてCaに注目する。Caは常圧水素化物相に加え,高圧条件下でCaH4及びCaH6を形成することが報告されている。水素化物の熱力学的安定性については,結晶構造に基づき概ね決定されるが,多量の水素を含む水素吸蔵状態の形成においては,反応プロセスやその動力学特性の理解も非常に重要である。そこで,スーパーハイドライドの形成を促進することを目的とし,Caに異種元素を10 at.%程度添加した試料を合成,その水素化特性の調査を実施した。 上述したように,スーパーハイドライド形成にはGPa級の高圧条件が必要となるため,一般的な実験装置では本研究の実施は不可能であるが,BL14B1の高温高圧プレス装置を利用すれば,種々の温度,圧力条件における上記試料の構造変化をin-situで調査を行うことが可能である。本研究で得られた知見を基に,実用的に許容される圧力条件下におけるスーパーハイドライド形成実現の足掛かりとする。また,本研究で得られる知見は,Ca以外のスーパーハイドライドにも利用できると考えられるため,超電導をはじめとした他分野の発展に対する貢献も期待できる。

実験 / Experimental

試料は,Caと10 at.%の異種元素を機械的方法(メノウ乳鉢,ボールミリング法等)にて混合した。これらの高温高圧プレス装置を用いた放射光その場観察実験については,QST水素材料科学研究グループの有する知見に基づき以下の通り実施した。 白色X線を入射X線とし回折角2θを6°固定した半導体検出器で回折X線を測定するエネルギー分散法により,Ca系材料の水素化反応過程のX線回折プロファイルを測定した。高温高圧発生にはBL14B1に設置された180トン超高圧発生装置と加熱電源を用いた。スーパーハイドライド形成における元素添加の影響を調査するため,9 GPa, 800 °Cまでの高温高圧水素流体中に試料を保持し,水素化反応の進行の有無を放射光粉末X線回折その場観察により観測した。Ca系材料の高圧下での水素化は一般的に遅いため,反応動力学の観点では高温での水素化が有利と考えられる。本研究では,まず9 GPaまで加圧した状態で内部水素源から水素が放出される400 °Cまで昇温し,その後,得られるX線回折パターンを確認しながら,必要に応じて圧力,温度を保持し状態変化を観測した。

結果と考察 / Results and Discussion

Ca+10 at.% C試料について,室温で9 GPaに加圧後,400℃まで昇温したが,特に大きな変化は見られず,X線回折パターンはCaH2のPbCl型常圧相及び微量のCaO相で概ね帰属された。その後,100℃毎に800℃まで昇温したが回折パターンに変化は見られなかった。800 ℃付近から粒成長に伴うX線回折強度の変動が観測され始めた。最終的に900℃まで昇温し,長時間保持したがスーパーハイドライド相CaH4に帰属される回折ピークは観測されなかった。Ca+10 at.% SiとCa+10 at.% Sn試料は,一つの試料容器内にセパレーターを介して封入し,同時に高圧下XRD測定を行った。C添加試料と同様に,室温で9 GPaに加圧,400℃で保持した後,段階的に昇温を行った。この際,C添加試料時に800 ℃から粒成長が見られたため,最高温度は750℃とした。Si添加試料については,C添加試料同様構造変化やスーパーハイドライドの生成は確認できなかった。その他の結果については,データ解析を進めている。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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