【公開日：2025.06.10】【最終更新日：2025.05.15】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

24QS0015

利用課題名 / Title

高圧フラックス法を用いたバナジウム酸水素化物の反応メカニズムの解明

利用した実施機関 / Support Institute

量子科学技術研究開発機構 / QST

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】（主 / Main）計測・分析/Advanced Characterization（副 / Sub）物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis

【重要技術領域 / Important Technology Area】（主 / Main）量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions（副 / Sub）革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion

キーワード / Keywords

X線回折/ X-ray diffraction,放射光/ Synchrotron radiation,水素貯蔵/ Hydrogen storage,全固体電池/ All-solid battery

利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名（課題申請者）/ User Name (Project Applicant)

山本 隆文

所属名 / Affiliation

東京工業大学フロンティア材料研究所

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

劉 丘民,栃沢 晴希,佐原 広樹,松島 航暉,西久保 匠,大見 拓也,長瀬 鉄平,小菅 大輝,谷口 航

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

齋藤 寛之

利用形態 / Support Type

（主 / Main）共同研究/Joint Research（副 / Sub）-

利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

QS-141：高温高圧プレス装置

報告書データ / Report

概要（目的・用途・実施内容）/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

近年、酸化物イオン（O^2-）とヒドリド（H^-）を固体中に含む酸水素化物が、新しい物質群として、その物性に注目が集まっている。最近我々のグループでは、SrCl₂をフラックスとして加えることでSrVO_2.4H_0.6などのアニオン無秩序型のペロブスカイト型構造が高温高圧合成法で単相で合成できることを明らかにした[1]。本研究では層状ペロブスカイト試料においても、SrCl₂フラックスを用いた高温高圧合成のその場観察をSPring-8 BL14B1ビームラインで実施することで、酸水素化物の反応メカニズムを明らかにした。

実験 / Experimental

実験は、BL14B1設置のマルチアンビル型高圧装置SMAP-2を用いて行った。白色光モードにて、エネルギー分散法によるＸ線回折実験により、高圧下での試料を観察した。試料を白金カプセルに封入し、昇温用のグラファイトヒーター、測温用の熱電対とともにパイロフィライト製の高圧セルに組み込んだ。このセルをBL14B1据え付けの高圧発生装置SMAP-2を用いて、昇圧を行った。昇圧後、ヒーターに通電して昇温し、100℃おきに回折パターンを測定し、回折実験を行った。

結果と考察 / Results and Discussion

SrH₂ : SrO : V₂O₃を1:3:1で混ぜ、fluxとしてSrCl₂を20wt%加えた試料の2GPaにおけるin-situ XRDパターンを図1に示す。これはK₂NiF₄型構造となるSr₂VO₃Hとなる仕込み比に対応する。2GPaで温度を上げていくと、900℃あたりで仕込み比に対応するような層状ペロブスカイト化合物が現れた（黄色星マーク）。しかし、その後温度上昇を続けると、1000℃では立方晶ペロブスカイト構造になることが明らかになった（青色星マーク）。その後、1200℃まで加熱しても、融解はしなかった。この試料を冷却すると今度は低温で二層のペロブスカイトブロックを持ったSr₃V₂(O,H)₇とみられるピークが出現した（緑色星マーク）。これらの結果は文献[1]のSrVO_2.4H_0.6の合成で報告したように、高温になるにつれて、層状ペロブスカイトから立方晶ペロブスカイトが安定化していくことを示している。すなわち、これら層状ペロブスカイトの合成において温度制御が非常に重要であることが明らかとなった。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations

Fig.1. SrH₂ : SrO : V₂O₃を1:3:1で混ぜ、fluxとしてSrCl₂を20wt%加えた試料の2 GPaにおけるin-situ XRDパターン.

その他・特記事項（参考文献・謝辞等） / Remarks(References and Acknowledgements)

参考文献
[1] Suzuki, J.; Okochi, H.; Matsui, N.; Nagase, T.; Tochizawa, H.; Sahara, H.; Nishikubo, T.; Sakai, Y.; Ohmi, T.; Pan, Z.; Saito, T.; Saitoh, H.; Ikezawa, A.; Arai, H.; Kanno, R.; Yamamoto, T.; Azuma, M.; “Selective Synthesis of Perovskite Oxyhydrides Using a High Pressure Flux Method”, J. Am. Chem. Soc., 145, 16398-16405 (2023).
報告書作成時の所属：京都大学大学院理学研究科
受賞：西久保匠(神奈川県立産業技術総合研究所), 13th SPRUC Young Scientist Award, 令和6年9月6日.

成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング（DOIのあるもの） / DOI (Publication and Proceedings)

口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.

1. Haruki Tochizawa, Teppei Nagase, Takumi Nishikubo, Kei Shigematsu, Masaki Azuma, Takafumi Yamamoto, "Control of anion ordering in oxyhydrides under high pressure", The 14th International Conference on the Science and Technology for Advanced Ceramics（横浜市）, 令和6年10月8日.
2. 西久保匠, 廣岡孝聡, 酒井雄樹, 東正樹, "新規プロセスによる負熱膨張物質 BiNi1-xFexO3 のアモルファス前駆体の調整及び微細粒子の合成・評価", 日本セラミックス協会第37回秋季シンポジウム（名古屋市）, 令和6年9月12日.
3. Qiumin Liu, Takumi Nishikubo, Masaki Azuma, "Giant Thermal Expansion in Ca Substituted PbCrO3", The Fourteenth International Conference on the Science and Technology for Advanced Ceramics（横浜市）, 令和6年10月9日.
4. 劉丘民, 西久保匠, 東正樹, "Ca置換PbCrO3の巨大熱膨張", 粉体粉末冶金協会2024年度秋季大会（第134回講演大会）（新潟市）, 令和6年10月20日.

特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications：0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents：0件