利用報告書 / User's Reports

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【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.05.26】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

24NU0217

利用課題名 / Title

高度分離を目的とした機能性ナノファイバー膜の創製

利用した実施機関 / Support Institute

名古屋大学 / Nagoya Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

ナノワイヤー・ナノファイバー/ Nanowire/nanofiber,電子顕微鏡/ Electronic microscope


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

向井 康人

所属名 / Affiliation

名古屋大学大学院工学研究科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

塩﨑 竜平,岳 云鵬

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

NU-228:走査型電子顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

従来の濾過方法では、濾材が固体粒子を直接濾し取ることで分離を行うが、濾過の進行に伴い濾材細孔の閉塞や濾材表面へのケーク形成などのファウリングが生じる。ファウリングは濾過抵抗を増大させて性能低下を招くため、その抑制が重要な課題である。そこで、コロイド粒子の電気的性質に着目し、電場を活用して高効率的に濾過を行う新規システムを開発した。電場によってコロイド粒子の移動を制御し、細孔閉塞やケーク形成を抑制することで、従来の濾過法の問題解決を図った。このシステムは濾材孔径よりも小さな粒子の濾過も可能であり、幅広い産業分野への適用が期待される。本研究では、システムに組み込む濾材としてナノファイバー膜に着目した。三次元的なネットワーク構造をもつこの膜は、高い粒子捕捉性能を有し、濾材表面だけでなく濾材内部での粒子の捕捉も可能である。電場を利用したこの濾過システムによりコロイド粒子の濾過実験を行い、分離特性や分離機構を明らかにするとともに、濾材条件の最適化を図ることで濾過性能の向上を目指した。

実験 / Experimental

本システムに使用する濾材としてナノファイバー膜の優位性を調べるため、孔径が同程度の様々な濾材を用いて電場中で水性染料の濾過を試みた。本実験で用いた水性染料は青色と赤色の色素からなる混合試料である。実験に用いたPA6ナノファイバー膜のSEM画像を図1、ポリエステルメッシュのSEM画像を図2に示す。濾室内に電圧を印加して一定流量で試料液を供給し、一定流量で濃縮液および濾液を排出させて濾過を行った。このとき、濾液の排出方向と同じ向きに電場が発生するように電圧を印加した。実験前後の濃度差から各色素成分の阻止率Rを算出した。

結果と考察 / Results and Discussion

電圧を印加しない条件では色素はほとんど捕捉されず、濃青色の濾液が得られた。一方、印加電圧の高い条件では無色透明の濾液が得られ、阻止率は非常に高い値を示した。いずれの濾材を用いた場合も非常に高い阻止率を示したため、印加電圧を下げて比較を行った。図3に各濾材における色素成分の阻止率をそれぞれ示す。ナノファイバー膜を使用した条件では、他の濾材と比較して青色と赤色のどちらの成分においても高い阻止率を示した。特に青色色素に関しては、メッシュフィルタでは完全には捕捉することができなかったのに対し、ナノファイバー膜では99.9%以上の高い阻止率が得られた。粒子を濾材表面で捕捉するメッシュフィルタと異なり、ナノファイバー膜は濾材内部で粒子を捕捉する。これにより、粒子が濾材内に侵入した場合にも濾材内で粒子をある程度保持することができる。さらに、ナノファイバー膜は高い比表面積を有するため、粒子との接触面積が増大し、粒子が実質的に濾材表面から受ける電気的作用は大きくなる。ナノファイバー膜がもつこれらの特色により、高い濾過性能が得られたと考えられる。以上の結果より、低い印加電圧で高い粒子捕捉性能が得られるナノファイバー膜が他の濾材よりも優れた性質を有することが示された。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 ナイロン6(PA6)ナノファイバー膜



図2 ポリエステルメッシュフィルタ



図3 各濾材を使用したときの色素の阻止率


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

本研究の遂行にあたり多大なご協力を頂いた三菱化工機株式会社研究開発部の皆様に心より感謝いたします。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 塩﨑竜平,向井康人,大森一樹,鎌谷彰人,谷 孝一,“電場を利用した濾過法の性能改善におけるナノファイバー膜特性の影響”,化学工学会第55回秋季大会(札幌),2024年9月12日
  2. 牛田敏弘,塩﨑竜平,向井康人,大森一樹,鎌谷彰人,谷 孝一,“ナノファイバー膜を用いた電界濾過法の適用性に関する検証”,繊維系三学会東海支部共催第37回東海支部若手繊維研究会(名古屋),2024年12月6日
  3. 向井康人,塩﨑竜平,牛田敏弘,岳 云鵬,大森一樹,鎌谷彰人,谷 孝一,“電界フィルターとナノファイバー膜の融合によるナノ粒子やタンパク質の高精度分離”,化学工学会第90年会(東京),2025年3月14日
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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