【公開日：2025.06.10】【最終更新日：2025.04.01】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

24UE0101

利用課題名 / Title

新超伝導体の開発

利用した実施機関 / Support Institute

電気通信大学 / UEC

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用（ARIM事業参画者以外）/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】（主 / Main）物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis（副 / Sub）-

【重要技術領域 / Important Technology Area】（主 / Main）革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion（副 / Sub）-

キーワード / Keywords

金属間化合物, 超伝導物質, Re-Ru-X三元素系合金

利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名（課題申請者）/ User Name (Project Applicant)

村中 隆弘

所属名 / Affiliation

電気通信大学 大学院情報理工学研究科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

中村　亮,川上 裕史,奥村 太一,大澤 薫平,日野 豊,鈴木 悠太,門脇 佳史,秋光 正子

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

桑原 大介,北田 昇雄,松橋 千尋,三崎 亜衣

利用形態 / Support Type

（主 / Main）機器利用/Equipment Utilization（副 / Sub）-

利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

UE-001：超伝導量子干渉型磁束計
UE-002：高磁場多目的物性測定システム
UE-011：電子線元素状態分析装置
UE-018：精密構造解析用X線回折装置
UE-020：超伝導量子干渉型磁束計

報告書データ / Report

概要（目的・用途・実施内容）/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

単体金属 Re (Mg 型構造 SG: P6₃/mmc)は T_c＝1.6 K の第一種超伝導体であることが知られているが、他元素を固溶させることで、Re-W系合金, Re-V系合金, Re-Ru系合金のようにT_cが上昇する。これらのT_c上昇の原因については、元素置換によって E_F直下の鋭い状態密度のピークがぼやけ、結果として E_F近傍の状態密度が上昇することが指摘されている。我々は、これらの中で最高T_cを示す合金Re_0.825Ru_0.175 (T_c=2.23K)に対し、Tiを固溶させたRe₅₀Ru₁₂Ti_4.5 (T_c＝4.5K)の新規超伝導体を報告している。この報告はRe-Tiの二元素系に着目すると、α-Mn型構造の生成が非常に安定な仕込み組成比において、Ruの固溶によってMg型構造へと構造制御された結果と考えられる。そこで、我々は新たにRe-Tiと同様にα-Mn型Re化合物が存在するSc, Zr, Nb, Hf, Taを用い、Re-Ru-X (X= Sc, Zr, Nb, Hf, Ta)三元素系合金におけるMg型構造への構造制御と新規超伝導体の開発を行った。その結果5種の新規超伝導体を発見し、、金属ReのT_cが格子定数の制御によってさらに上昇していく可能性を見出した。

実験 / Experimental

試料作成は、Reの一部をRuに置換した物質に対して、Sc, Zr, Nb, Hf, Taそれぞれを所定のモル比で混合成型したペレットをAr雰囲気下におけるアーク溶解法を用いて溶解させ合成した。合成された試料は、精密構造解析用X線回折装置を用いて粉末X線回折測定によって試料中に合成された相の同定を行い、電子線元素状態分析装置による表面観察から、試料組成の定量評価を行った。超伝導量子干渉型磁束計(MPMS3, MPMSXL-7), 高磁場多目的物性測定システム(PPMS)を用いて、直流磁化率の温度依存性, 直流磁化の磁場依存性, 電気抵抗率の磁場・温度依存性, 比熱の温度依存性測定を行い、種々の超伝導特性（T_c, H_c2 , ΔC /γT_c等）を決定した。

結果と考察 / Results and Discussion

Re-Ru-X三元素系合金の試料合成の結果、金属ReのMg型構造を維持したRe₅₀Ru₁₈Sc_4.5, Re₅₀Ru₁₈Zr_4.5, Re_93.5Ru₁₈Nb_4.5, Re₆₆Ru₂₄Hf₃ , Re₅₀Ru₁₂Ta_4.5の合成に成功した。図1, 図2に示すように、Re₅₀Ru₁₈Sc_4.5 がT_c＝2.6Kの新超伝導体であることを発見した。同様の測定から、Re₅₀Ru₁₈Zr_4.5 (T_c＝3.2K), Re_93.5Ru₁₈Nb_4.5 (T_c＝4.2Ｋ), Re₆₆Ru₂₄Hf₃ (T_c＝2.6), Re₅₀Ru₁₂Ta_4.5 (T_c＝3.8Ｋ)についても新超伝導体であることがわかった。さらに、全ての物質の磁化測定から、それぞれ第 2 種超伝導体であることを確認した。比熱の温度依存性、電気抵抗率の磁場・温度依存性の測定から種々の超伝導パラメータを求め、これらの超伝導体が弱結合超伝導体であることを明らかにした。 Re-Ru-X三元素系合金において、図3に示すようにc軸長とT_cとの間に正の相関が見られ、金属ReのT_cが格子定数の制御によってさらに上昇していく可能性を見出した。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations

図1 : Re₅₀Ru₁₈Sc_4.5の磁化率の温度依存性

図2 : Re₅₀Ru₁₈Sc_4.5の電気抵抗率の温度依存性

図3 : Re-Ru-Xの格子定数とT_cの関係

その他・特記事項（参考文献・謝辞等） / Remarks(References and Acknowledgements)

成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング（DOIのあるもの） / DOI (Publication and Proceedings)

口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.

1. 日野豊, 倉又健人, 村中隆弘, 18aPS-92, 日本物理学会第79回年次大会(2024年)
2. 中村亮, 村中隆弘, 18aPS-112, 日本物理学会第79回年次大会(2024年)

特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications：0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents：0件