【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.05.16】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
24JI1055
利用課題名 / Title
次世代高周波対応プリント基板製造実現のための真空紫外光照射を用いた実装プロセス技術
利用した実施機関 / Support Institute
北陸先端科学技術大学院大学 / JAIST
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials
キーワード / Keywords
利用された「その他」の装置: ウルトラミクロトーム,異種材料接着・接合技術/ Dissimilar material adhesion/bonding technology,高周波デバイス/ High frequency device,電子顕微鏡/ Electronic microscope,高品質プロセス材料/技術/ High quality process materials/technique
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
有本 太郎
所属名 / Affiliation
ウシオ電機株式会社
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
東嶺孝一,小林祥子
利用形態 / Support Type
(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
近年,半導体ICチップを実装するパッケージ基板の後工程技術(More than Moore技術)の重要性が増している.後工程では高集積化・高密度化が進められており,配線の微細化が必要である.基板表面が凹凸形状をもっていると微細配線形成が困難となり基板樹脂の表面を平滑に維持したまま配線回線の密着性を保持することが課題になっている.エキシマランプ(λ=172 nm)を利用した紫外線照射によるドライプロセスの前処理では,樹脂表面を平滑に維持したまま,表面に官能基を導入でき,金属銅配線層との化学的な密着が可能になる.照射条件を変えることで樹脂と金属層との密着強度が変化することが確認できているが[1-2],密着のメカニズムは明らかになっておらず,密着性を上げるための方策がいまだ不明瞭のままである.その理由のひとつに,金属めっき層と高分子樹脂基板との界面における,微視的な構造に関する学術的な知見や,これを調査するための技術が不足していることがあげられる.これまでに,VUV照射によって表面の前処理を行った樹脂基板と,その樹脂基板上 に堆積した金属銅めっき層との接合界面には,HRTEM観察,電子回折,EDS,および,EELSの結果から,Cu2Oの存在が示唆されている[3-4].また,VUV照射後の樹脂基板表面には,酸素を含む官能基が形成されていると考えられるが,その分布に関しては明確になっていなかった.これまで,ARIM事業を利用することにより,VUV処理により樹脂表面に生じる変化を観察することで,密着性に寄与している要因を明らかにしてきた.課題番号23JI0009[6]では,VUV照射したシクロオレフィンポリマー(COP)樹脂基板表面の,ヨウ素イオン染色法[5]による染色条件を検討し, COP表層に形成されていると考えられる酸素を含む官能基の分布の可視化を試みた[7].本研究では,前報[6](課題番号23JI0009)の続きとして,VUV照射中のサンプル温度に着目し,サンプルのガラス転移温度を超える200℃まで加熱した状態でVUV処理を行い改質層に与える影響を調査した.
これらの評価技術が確立されることにより,密着性向上のためのエキシマランプ処理条件の指針も明確になり,半導体パッケージ工程への応用が期待される.平滑性を維持した密着技術の確立は,プリント基板実装業界に大きなインパクトを与え,エレクトロニクス産業 全体にとっても有用な技術になる得ると考えている.
実験 / Experimental
以下,サンプルは75μm厚のシクロオレフィンポリマー(以下COP)フィルムを用いた.VUV照射(λ=172 nm)にはウシオ電機製の照射装置を用いて実施した.VUV照射時にはホットプレートの上にサンプルを乗せ200℃まで加熱した状態でVUV照射を行った.
実験工程としては以下の工程を実施した.
①VUV照射によりサンプルフィルムを表面改質処理(ウシオ電機)
②ウルトラミクロトームにより観察用試料作製(JAIST)
③ヨウ素イオン染色法により改質層を観察(JAIST)
結果と考察 / Results and Discussion
図1に,表面にVUV照射したCOPと包埋樹脂との界面の断面TEM像を示す.200℃に加熱しながらVUV処理を実施した今回の試料でも,異なるコントラストを示すTEM像が得られた.得られたTEM像から,200℃加熱しながらのVUV照射による改質層は,やや明るい領域とやや暗い領域とが混在している層と,暗い領域が存在している層があることを示唆している.いずれも酸素を有する官能基がヨウ素イオンにより染色されたことを示しているが,各層の染色の様子には差異が観られる.この傾向は,前報[6](課題番号23JI0009)で観察した100℃加熱の試料と同等の傾向である.一方で,未照射,室温処理ではこのようなコントラストは観察されなかった.
今回,200℃でVUV照射されたCOP表層の断面TEM観察を行い,前報[6]と同様,ヨウ素イオン染色法による酸素含有官能基の分布の可視化に成功した.今回のヨウ素イオン染色法による観察の結果,200℃でVUV照射されたCOPの表面から数百ナノメートルの深さ領域層に,酸素含有官能基が比較的多く存在することを示唆していることが分かった.ただし,その深さは100℃加熱の試料と比べ同等であり,一定温度以上では内部への拡散は飽和すると考えられる.今後,同手法を評価にとりいれ,他の評価方法と複合的に利用することで,表面改質のメカニズムを明らかにし,密着強度向上施策に活用できると期待している.
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1 Cross-sectional TEM image of COP stained with Iodine ions.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
謝辞 本研究を実施するにあたり東嶺研究員には評価全般にわたり多大な協力を頂きまし た.
また,小林研究員には染色条件の条件出し,観察サンプルの前処理加工でご協力頂きました.感謝いたします.
参考文献
[1] 有本太郎,三浦真毅,竹元史敏,表面技術協会 第145回講演大会要旨集 20A-08, (2022)
[2] 有本太郎,三浦真毅,竹元史敏,第37回エレクトロニクス実装学会講演大会 13B-21, P21 (2023)
[3] 有本太郎, 三浦真毅, 竹元史敏, 東嶺孝一.接着学会第61回年次大会, 47 (2023)
[4] 東嶺孝一,有本太郎.日本顕微鏡学会第79回学術講演会,P-M_29 (2023)
[5] 白神昇, 小島啓太郎. 繊維と工業 49(4), 140 (1993)
[6] 有本 太郎,東嶺孝一,小林祥子,ARIM利用報告書,課題番号23JI0009
[7]小林祥子,東嶺孝一,有本太郎,日本顕微鏡学会第80回学術講演会,(2024)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 有本 太郎, 竹元 史敏, 東嶺 孝一, 小林 祥子, 大久保 雄司,プラスチック成形加工学会第32回秋季大会,2024年11月28日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件