利用報告書 / User's Reports

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【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.03.27】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

24BA0025

利用課題名 / Title

空間的スペクトル分解法を用いた食品分析手法

利用した実施機関 / Support Institute

筑波大学 / Tsukuba Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)その他/Others(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

非破壊分析, 糖類,光学顕微鏡/ Optical microscope,赤外・可視・紫外分光/ Infrared/visible/ultraviolet spectroscopy


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

粉川 美踏

所属名 / Affiliation

筑波大学生命環境系

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

塚原史裕,宍戸桜輔

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術補助/Technical Assistance


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

BA-020:顕微ラマン


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

非破壊分析の利点は試料の抽出や分離を行わずにその場で迅速に計測ができる点にあるが、食品やバイオマス加工品のように多数の成分が混ざり合った試料の中から、分離を行わずに目的成分のみを選択的に定量することは難しい。本研究では、非破壊分析手法でありながら、目的成分とその他の成分を分離してから検出・定量する手法を開発することを目指した。試料を破壊せずとも、試料表面の多点計測を行うことで、元々空間的に分かれて存在している成分のスペクトルを計測時に分離できる点に着目し、空間情報を用いてスペクトルを分解する本手法を「空間的スペクトル分解法」とよぶ。
今年度は、糖類の混合物、および水中油滴型エマルジョンを試料とし、顕微ラマン分光法を用いて多点計測を行った。

実験 / Experimental

[糖類混合物の計測および成分割合推定] グルコース、フルクトース、ガラクトースを異なる割合で混合した試料を対象とし、1) 成分の存在有無の推定、および2) 成分の割合定量 を試みた。
1) の実験では、グルコースを0 %、10 %、15 %、20 %、25 %混合した試料を調製し、試料表面を顕微ラマン分光装置で100点計測した。顕微ラマンのスポット径は約4 μmであるため、照射点にグルコース粒子が存在すれば、純粋なグルコースラマンスペクトルに近いスペクトルが得られると予想される。このような仮説のもと、各試料につき100点計測したスペクトルと、純粋なグルコースのラマンスペクトルのコサイン類似度を計算し、成分の有無を判定する閾値を求めた。この閾値以上の類似度を示す点が100点のうち1点でも存在すれば、グルコースは存在すると判定できる。逆に計測した100点すべての類似度が閾値未満であれば、グルコースは存在しないと判定できる。
2) の実験では、混合スペクトルを純粋スペクトルの線形和に分解するスペクトル分解手法(特に非負値行列分解)を用い、糖類混合物に含まれる各糖の割合の推定を試みた。グルコースを0 %、10 %、15 %、20 %、25 %にフルクトースとガラクトースを混合した試料を調製し、グルコース割合の推定を行った。この際、フルクトースとガラクトースの割合を1:1、1:3、3:1の3通りに振ることで、混合スペクトルを複雑に変化させた。

[水中油滴型エマルジョンの測定条件検討]
水中油滴型エマルジョンでは、水が占める空間と油滴が占める空間が明確に別れているため、空間的スペクトル分解法を用いることで油の割合や、水相における溶解物の濃度の推定が可能になると期待されている。一方で、これまでの予備実験より、エマルジョンが不安定化すると計測中に水相と油相に分離してしまうことが懸念されていた。そこで本実験では、エマルジョンの調製方法を検討してより安定的なエマルジョンを作製するとともに、顕微ラマン分光装置で多点計測した際に得られるデータのスペクトル分解特性を調べた。

結果と考察 / Results and Discussion

[糖類混合物の計測および成分割合推定] 
1) グルコース成分の存在有無の推定:グルコースが含まれていない試料では、計測点100点の類似度(純粋グルコーススペクトルとの類似度)がすべて0.3未満であったが、グルコースが10 %以上含まれると最大の類似度は0.7以上となった。つまり、100点計測した場合は、0.3から0.7の間の閾値を設定することで、成分の有無を判定できることがわかった(図1)。
2) グルコース割合推定モデルの精度を示す決定係数R2は、モデルの条件により0.66から0.73の間で変動した。推定精度は高くないため、試料の調製条件や計測条件を見直す必要がある。

[水中油滴型エマルジョンの測定条件検討]
油を50 %、乳化剤(Tween 80)を5 %混合したエマルジョンを調製したところ、バルクの状態で保存した場合は数日にわたって安定性を示していたが、顕微ラマン分光のためにスライドガラスに載せたところ、数時間を要する計測中に分離が起きた。また、バルクのまま計測をしたところ、計測点によるばらつきがなくなり、顕微計測の利点が失われてしまった。以上より、計測容器の工夫が必要であることが示された。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 顕微ラマン分光による多点計測を用いた成分の存在有無の判定


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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