利用報告書 / User's Reports

  • 印刷する

【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.04.21】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

24KU0046

利用課題名 / Title

下部マントル構成候補鉱物の高温高圧大歪変形実験

利用した実施機関 / Support Institute

九州大学 / Kyushu Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

ナノ粒子/ Nanoparticles,電子顕微鏡/ Electronic microscope,集束イオンビーム/ Focused ion beam


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

太田 健二

所属名 / Affiliation

東京科学大学理学院地球惑星科学系

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

夏井 文凜

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

中尾 辰也,阿内 三成

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術補助/Technical Assistance


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

KU-018:イオンビーム・電子ビーム複合型精密加工分析装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

地震波観測より、アフリカと南太平洋地下の下部マントル中部から最下部マントルにかけてS波速度の遅い領域(LLSVPs)が存在することが確認されている。さらにその縁部では地震波速度が地震波の進む方向によって異なる地震波異方性が報告されている。地震波異方性は鉱物の結晶軸が特定の方向に並ぶ結晶方位選択配向(CPO)の発達によって生じている可能性があり、その領域における構成鉱物の変形とCPO発達の関係を調べることで重要な知見が得られる。LLSVPsがマントル対流による撹拌に耐えるためには、周辺マントルに対して約10%高い密度の組成である必要があり、鉄に富むペリクレース(Mg,Fe)Oとブリッジマナイト(Mg,Fe)SiO3が構成鉱物の候補として考えられている。本研究では、下部マントル圧力条件での大歪変形実験が可能な回転式ダイヤモンドアンビルセル(rDAC)を用いて、下部マントルの主要構成候補鉱物であるウスタイトFeO・フェロペリクレース・ブリッジマナイト多結晶体について下部マントル圧力条件での大歪変形実験を行い、変形に伴うCPOの発達とすべり系を調査し、LLSVPsの地震波異方性との関係を考察することを目的とする。本課題では、ARIM共同利用設備である九州大学超顕微解析研究センターのイオンビーム・電子ビーム複合型精密加工分析装置(Helios 5 UX)を用いて、rDACでの変形実験回収試料のウスタイト、フェロペリクレース、 ブリッジマナイト多結晶体の集束イオンビーム(FIB)による研磨を行い、研磨面全体のSEM像および電子線後方散乱回折(EBSD)マッピングデータを取得して解析することで結晶方位マッピングおよび結晶粒径を得る。EBSDデータから決定したCPOをSPring-8にて実施したXRDデータから決定したCPOとの比較を行い、XRDデータから得られるCPOの整合性について確認を行う。本課題の測定試料はrDACを用いて高温高圧変形実験を行った試料である。DAC試料は直径:100 μm、高さ:<35 μmの円柱状の微小試料であり、ねじり変形実験を行った試料については円柱の中心部から離れるほど、回転側アンビルに近いほど、歪量が大きくなるアセンブリであるため、大歪の変形が行われた領域は円柱状試料の上縁部というさらに微小な領域となる。微小領域分析の難しさからこれまでDACを用いて実験を行った回収試料のEBSDマッピング測定は報告されていない。本課題では、これまで報告されていないDAC回収試料のEBSDマッピング測定を行うことで、DAC実験回収試料の微細構造解析を目指す。 加えて、本課題の測定試料であるブリッジマナイトは高圧力下において結晶構造が安定状態を取る高圧相の鉱物であり、常温常圧では準安定状態である。そのため、電子顕微鏡を用いた微細構造観察の際に電子線照射によって結晶構造が破壊されアモルファス化してしまう測定上の問題点がある。これまでブリッジマナイトのEBSD測定は困難であるとされてきたが、近年、CMOSを取り入れた装置を用いたEBSD測定を行うことで、電子線によって試料の結晶構造が破壊される前に測定出来る可能性が議論されている。本課題では、最新のSEM-FIBであるHelios 5 UXを用いて、これまで報告されていないブリッジマナイトのEBSD測定条件の探索を行い、変形実験後のブリッジマナイト多結晶体のCPOの決定を目指す。

実験 / Experimental

高圧ねじり変形実験装置であるrDACを用いて高圧力下で変形したウスタイト、フェロペリクレース、ブリッジマナイト多結晶体のEBSD測定を行った。変形実験中にXRD測定を行った試料の減圧回収後に、XRDおよびEBSD測定を実施し、ウスタイト、フェロペリクレース、ブリッジマナイト試料の微細構造観察およびCPOの決定および比較を行った。変形実験はSPring-8 BL47XUにおいてその場XRD測定を行いながら、圧力0-126 GPa、温度300-950 K、歪速度一定の条件で実施した。加えて、変形実験後の試料を減圧回収し、SPring-8 BL10XUにて多角度(-35°~35°)XRD測定を行った。XRDデータからのCPO決定のための組織解析にはMaterial Analysis Using Diffraction(MAUD)による結晶方位分布関数(ODF)が組み込まれたRietveld解析を適用した。その後、減圧回収試料は別機関のFIBを用いて円柱体試料の縁部分含む角柱状に切り出し、銅製のFIBメッシュ上に配置した。試料準備後、SEM-FIB(Helios 5 UX)を用いて試料のSEM像取得、FIBによる測定箇所の試料研磨、試料研磨面のEBSD測定を試みた。

結果と考察 / Results and Discussion

EBSD測定はイオンビーム・電子ビーム複合型精密加工分析装置(Helios 5 UX)の2回の機器利用で、5試料に対して実施した。Helios 5 UXはSEM-FIBのデュアルシステムの電子顕微鏡であり、FIBの機能を用いて試料の研磨を行い、SEMの機能を用いて試料のSEM像の取得およびEBSD測定を行った。試料にFIB加工によるダメージが加わらないよう、加速電圧および照射電流値を調整し試料研磨を行った。得られたCPOは、変形直後の試料(BL47XUデータ)と減圧回収試料(BL10XUデータ)の両方で一致し、減圧時の変形がCPOに与える影響は少ないことが確認された。一部の減圧回収試料について、FIB研磨により作製した試料を用いてEBSD測定を行い、微細構造観察とCPO解析を行った。その結果、ウスタイトのCPOは一部せん断方向の100軸の配向が弱く示されたがXRDの結果とおおむね一致した。フェロペリクレースのCPOについてはXRDの結果と一致した。また、EBSDマッピングから、同じ結晶内で結晶方位が連続的に変化する様子が観察され、変形実験時に試料は転位クリープにより変形したことが示唆された。なお、本課題では、ブリッジマナイトの試料研磨面の菊池パターンの安定的な取得条件の決定には至らなかった。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

本研究の一部は、文部科学省マテリアル先端リサーチインフラの支援(課題番号:24KU0046)を受けて実施された。中尾辰也様と阿内三成様のSEM・BSE・EBSD分析の技術支援に深く感謝申し上げます。また、東真太郎様(東京科学大学)と安武正展様(高輝度光科学研究センター)のご助言に深く感謝申し上げます。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

印刷する
PAGE TOP
スマートフォン用ページで見る