利用報告書 / User's Reports

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【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.04.18】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

24KU0022

利用課題名 / Title

TEM/FIB-SEM用試料ホルダーの新規開発によるオペランド電子顕微鏡法の開拓

利用した実施機関 / Support Institute

九州大学 / Kyushu Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed

キーワード / Keywords

大気非暴露,電池材料,FIB-SEM,嫌気性材料,冷却ステージ


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

權堂 貴志

所属名 / Affiliation

株式会社メルビル

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

KU-011:三次元走査電子顕微鏡
KU-007:収差補正高分解能電子顕微鏡
KU-010:三次元原子分解能透過電子顕微鏡
KU-020:雰囲気遮断加熱・冷却試料ホルダー


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

リチウムイオン電池の需要拡大に伴い、その高性能化が求められている。リチウムイオン電池材料は電子線照射や大気に対して敏感な嫌気性材料である。そこで本研究では、大気非暴露搬送機構と冷却ステージを組み込んだSEM用サブステージを開発した。一般的な嫌気性材料への応用を見据え、シャッター機構で大気接触を制御し、ペロブスカイト対応電池材料(PCB)を非暴露・暴露下で比較観察して有効性を確認した。従来困難だった安定観察が可能となり、材料評価精度向上に寄与する。本報告では、その開発経緯と成果を報告する。

実験 / Experimental

本実験では、大気非暴露環境下での電子顕微鏡観察を可能にするため、電動シャッター機構を備えた大気非暴露モジュール(Fig.1)を試作し、既存の冷却ステージを組み込んだサブステージを用意した。まず、密閉された試料およびシャッターを開放したサブステージ、携帯バッテリーをグローブボックス内に入れ、真空引きを行った。十分に真空状態が得られた後、アルゴンガスで大気圧程度までガス置換し、密閉していた試料ビンを開封して試料を乳鉢で粉砕した。粉砕した試料は、冷却ステージの冷却面にあらかじめ貼り付けたシリコン基板上に塗布し、モジュールをバッテリーに接続してシャッターを閉めた。その後、グローブボックスを大気開放し、モジュールをFIB-SEM(Scios DualBeam, Thermo Fisher Scientific)へ搬送して事前に用意したフィードスルーに接続した。次に、チャンバー内を真空引きし、シャッターをゆっくり開放して内部のガスを排気することでSEM観察の準備を整えた。 観察は、チャンバー内に装着したモジュールのシャッターを開放した状態でSEMおよびEDS分析を行い、その後一度チャンバーを大気開放してモジュールを取り出し、試料を約15分間大気に暴露した。再度モジュールをチャンバー内に取り付けてSEM観察とEDS分析を行い、形状や酸化状態の変化を比較検討した。

結果と考察 / Results and Discussion

Fig. 2に、大気暴露前後のSEM像を示す。Fig. 2(a)では、多数の四角い結晶が観察される。一方、Fig. 2(b)にも同様の四角い結晶が認められるが、角がやや丸くなっているように見受けられる。次に、それぞれの試料について実施したEDS分析の結果をFig. 3に示す。大気暴露後の試料では、暴露前と比較してCsスペクトルの強度が増加しており、その位置にはOスペクトルが重なっている。これは試料の酸化に伴ってCs由来のピーク強度が高まったものと推察される。 以上の結果から、大気非暴露モジュールを用いることで、嫌気性材料を空気に晒すことなくSEM観察およびEDS分析が行えることが確認された。また、部分的な角の丸みや酸化の進行がSEM像やスペクトルに現れるため、大気暴露の有無が材料形態および組成に与える影響の評価に本手法が有効であると考えられる。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig.1. FIB-SEMチャンバー内に装着された大気非暴露モジュール。シャッターは開いた状態。



Fig. 2. (a)大気暴露前のSEM像。(b)大気暴露後のSEM像。大気暴露後はわずかに丸みを帯びた形状になっている。



Fig. 3. (a)大気暴露前のEDSスペクトル。(b)大気暴露後のEDSスペクトル。大気暴露後、酸素のエネルギー位置の強度が増えている。


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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