【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.04.04】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
24KT2327
利用課題名 / Title
細胞選択的がん治療に用いる短飛程放射線による微視的エネルギー付与分布の計測
利用した実施機関 / Support Institute
京都大学 / Kyoto Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
放射線計測, 微視的エネルギー付与,固体飛跡検出器,光刺激ルミネッセンス線量計,共焦点レーザー顕微鏡,3D測定レーザー顕微鏡
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
高田 卓志
所属名 / Affiliation
京都大学 複合原子力科学研究所
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
KT-305:共焦点レーザー走査型顕微鏡
KT-306:3D測定レーザー顕微鏡
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
近年、生体内で生じる短飛程の放射線を利用した細胞選択的がん治療法への関心が高まっている。RI内用療法では、腫瘍集積性を有するRI標的薬から放出されるアルファ粒子やベータ線、オージェ電子等の短飛程放射線による殺細胞効果が利用される。また、中性子捕捉療法では、腫瘍集積性を有する標的薬と体外から照射される中性子線との核反応により生じる短飛程放射線が高い殺細胞効果を示す。これらの治療法に用いられる放射線の飛程は数nmから数百μmにわたり、標的薬の細胞選択性および生物学的効果を評価する上で、放射線の微視的なエネルギー付与分布を把握することが重要となる。
本研究では、放射線によるエネルギー蓄積を蛍光として読み出す光刺激ルミネッセンス(OSL)線量計、および化学エッチングにより飛跡を同定するPADC検出器を用いて、数nmからμmオーダーの飛程を有する放射線による微視的なエネルギー付与分布を計測評価することを目的とする。
実験 / Experimental
酸化アルミニウムを基材としたOSL線量計素子(Landauer, Inc.)に放射線を照射した後、素子内の蛍光強度の空間分布を計測することで、微視的なエネルギー付与分布を評価する。本課題実施期間では、前期間に引き続き線量計の基本特性を把握するための実験を行うとともに、中性子捕捉療法のための標的核種として期待されているガドリニウムと中性子の反応により生じるオージェ電子の計測を試みた。
京都大学複合原子力科学研究所のコバルト60ガンマ線照射施設を使用して、100~500mGy程度のガンマ線を一様に照射した線量計試料を作成した。また、同研究用原子炉を使用して、硝酸ガドリニウム塩を密着させた線量計に中性子を照射し、反応により生じるオージェ電子を含む放射線照射試料を作成した。京都大学ナノテクノロジーハブ拠点の共焦点レーザー蛍光顕微鏡(KT-305, FV-1000, Olympus Corporation)を使用して蛍光強度を計測した。これらに加えて、本実施期間から、PADC検出器による短飛程放射線の飛跡計測を開始した。計測の諸条件を確認するため、アルファ線および陽子線を照射したCR-39プラスチックを強アルカリ溶液によりエッチング処理し、形成されたエッチピットの形状を3D測定レーザー顕微鏡(KT-306, LEXT4000, Olympus Corporation)を用いて計測した。
結果と考察 / Results and Discussion
OSL線量計の計測条件について前実施期間に引き続き探索を行った。前期間と同様に、深部方向に指数関数的に減衰する信号強度分布が観測され、高倍率(60x)レンズを使用することで数μm以下の深さ分解能の計測が可能であることが確認された。しかしながら、蛍光スペクトル計測では、ガンマ線照射試料およびガドリニウムからのオージェ電子照射試料ともに、蛍光波長の明瞭な信号ピークが観測できなかった。電離による線量計内でのエネルギー付与が空間的に疎であることが要因の一つとして考えられ、このような状況において有用とされるパワースペクトル法による解析を進める。また、PADC検出器による飛跡のエッチピット計測では、アルファ線および陽子のエッチピット形状が明瞭に観測された。100倍のレンズを用いて計測した3D表面形状を図に示す。ピット開口部の楕円形状や飛跡の進行方向に沿った円錐形状を明瞭に観察することができている。3D形状計測により、通常の光学顕微鏡による2次元的なピット計測と比較して高度な計測が可能であることが確認された。多数のピットの形状を迅速に解析するツールを作成し、入射放射線のエネルギーや角度分布等の測定について検討を進める。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図 3D測定レーザー顕微鏡により計測されたPADC検出器の表面形状
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
本研究は京都大学複合原子力科学研究所共同利用研究(No. R5P9-10, R6P8-13)の一部として実施されたものである。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件