【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.05.21】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
24UT0222
利用課題名 / Title
透過型電子顕微鏡観察に基づく生物源リン酸カルシウム中におけるレアアース元素の濃集メカニズム解明ー人工レアアース資源の生成に向けて
利用した実施機関 / Support Institute
東京大学 / Tokyo Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
アパタイト系材料, 透過型電子顕微鏡, 走査型透過電子顕微鏡,電子顕微鏡/ Electronic microscope
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
畠山 裕亮
所属名 / Affiliation
東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
桑原佑典,矢野萌生
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
押川浩之
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術補助/Technical Assistance
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
UT-004:環境対応型超高分解能走査透過型電子顕微鏡
UT-007:高分解能分析電子顕微鏡
UT-154:イオンスライサー
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
レアアースはその光学的・磁気的特性から、脱炭素技術や最先端技術において必要不可欠な元素群である。近年、日本の南鳥島近海の排他的経済水域内の海底から、高濃度のレアアースを含む海底堆積物である「超高濃度レアアース泥」が発見され、注目を集めている。レアアース泥中において、レアアースは魚類の骨格などの生物源リン酸カルシウム (BCP) に濃集していることが判明しているものの、BCP中へのレアアースの濃集プロセスは未解明であり、レアアース泥の成因解明の上での大きな課題となっている。そこで本研究では、南鳥島近海のレアアース泥から採取したBCPに対してTEM、 STEMを用いた原子スケールでの観察を実施し、BCP中におけるレアアース元素の配置を可視化することで、レアアースの濃集プロセスの解明を目指す。
実験 / Experimental
本研究において、TEM試料として観察対象としたのは、現生のサメの歯、モロッコ産サメの歯化石、超高濃度レアアース泥中のBCP、の3種である。研磨したTEM試料の薄膜加工にあたり、イオンミリング装置 (JEOL EM-09100IS) を使用した。試料のTEM観察にあたり汎用TEM (JEM-2010F) を使用した。前述のイオンミリング装置 (UT-154) で作製した現生のサメの歯のTEM試料に加えて、同様に薄膜加工したシリコンウエハーとサメの歯化石の粉末試料の観察も実施した。実像と回折図形の観察を行い、必要に応じて下部に取り付けられたCCDカメラでの撮影を行った。その後、前述のUT-154を用いて作製した現生のサメの歯のTEM試料、および薄膜加工したシリコンウエハーのSTEM観察を原子分解能STEM (ARM200F(STEM Double SDD)) を用いて実施した。この観察にはBF検出器とADF検出器を用いた。
結果と考察 / Results and Discussion
汎用TEM (UT-007) を用いた観察により得られた、現生サメの歯のTEM像を図1、図2に示す。サメの歯は主にリン酸カルシウム結晶からなる。サメの歯の表面のエナメロイドの横断面の観察の結果、図1のように六角柱のアパタイト結晶の断面が観察され、アパタイト結晶の長軸と歯冠の上下方向が一致していた。一方、サメの歯の内部の象牙質の横断面では、図2のようにアパタイト結晶の長軸と歯冠の上下方向が一致していない。これは、サメの歯のエナメロイドと象牙質における、アパタイト結晶の配列の違いを表している。原子分解能STEM (UT-004) を用いた観察により得られた、現生サメの歯のSTEM像を図3に示す。図3では明るい点と暗い点がそれぞれ六角形をなしており、これらは両方ともCa原子である。Ca原子のうち、[0001]方向に連なる原子の個数が多い列が明るく見えている。今後の研究では、超高濃度レアアース泥中のBCPを試料とする予定である。はじめにTEMによる予備観察により、STEMでの観察が可能な領域が存在の確認を行う。その後、STEM観察によりABF像、ADF像を取得するとともに、EDSによる元素分析も行う予定である。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1 現生サメの歯のエナメロイド部分の横断面における明視野TEM像
図2 現生サメの歯の象牙質部分の横断面における明視野TEM像
図3 現生サメの歯のエナメロイド部分におけるアパタイト結晶の[0001]方向からの暗視野STEM像
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
一連の実験を進行するにあたって、総合研究機構技術専門職員の押川浩之氏には、試料の作製方法からTEM、STEMを用いた観察方法に至るまで、1から丁寧に教えていただいた。氏の全面的なご支援に心より感謝申し上げる。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件