【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.05.13】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
24UT0122
利用課題名 / Title
天然における未知試料中の鉱物種の特定とその定量分析法の開発
利用した実施機関 / Support Institute
東京大学 / Tokyo Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)その他/Others(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
X線回折, 鉱物, 定量分析,X線回折/ X-ray diffraction
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
小暮 敏博
所属名 / Affiliation
東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
府川和弘,飯盛桂子
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
ベントナイトなどの粘土鉱床は窯業、土木、掘削など様々な産業における重要な原料や素材として利用されてきたが、最近では使用済み核燃料などの地層処分における放射性核種の拡散バリアー用材料などの新たな用途が開けつつある。また農業の今後のさらなる高度化のためにはその基礎となる土壌の詳細な理解が不可欠となっている。これら粘土や土壌などの天然物質は様々な細粒の鉱物で構成されているが、その種類や割合を定性・定量的に分析するには、従来より粉末X線回折(Powder X-ray Diffraction: PXRD)が用いられてきた。しかしながら数種類以上の鉱物種を含む試料では回折ピークの重なり、結晶配向、そして微量あるいは粗大な粒子の存在等により、再現性の取れた精度のいい分析は容易ではない。そこで本研究ではCu Kα1の単色X線によるPXRDの測定が多種の鉱物を含む天然の粘土・土壌試料中の鉱物同定・定量化にどれほど有効かを検討することにした。
実験 / Experimental
用いた試料は、米国粘土鉱物学会(Clay Minerals Society)が2024年に配布した鉱物同定の精度や分析能力を競うための3つのラウンドロビン用試料(Reynolds Cup12-1,2,3)で、どの試料も数種類の粘土鉱物に石英や長石などの様々な造岩鉱物を一定量混入させたものである。この試料の一部を乾式あるいは湿式(媒体はエタノール)による遊星ボールミル装置を用いてある程度粉砕し、XRD測定用の試料とした。装置はARIM東京大学データハブ拠点の粉末X線回折装置SmartLab (Kα1)(装置No. UT-204)を用いた。この装置のX線源は3kW封入型X線管のCuターゲットで、ここから出るCuの特性X線のうち対称ヨハンセン型モノクロメータによってCu Kα1のみが選択されて試料に照射される。ゴニオメーターの光学系はBragg-Brentano法(集中法)で、発散スリットは低角での回折線を考慮して1/6°を用いた。また散乱・回折X線の検出はシリコンストリップ型の1次元検出器(Rigaku D/tex Ultra)を使用した。ガラス製試料ホルダーへの粉末試料の装填は、結晶配向を極力避けるために、いわゆる”サイドローディング法”を用いた。また結晶配向の低減効果を調べるため、内径約0.5mmのガラス製キャピラリーに入れた試料を回転させて試料を透過したX線を測定する“キャピラリー法”も実施した。
結果と考察 / Results and Discussion
Kα1とKα2が混在する通常のX線源を用いた測定に比べ、Kα1単色での測定では明らかに近接する回折ピークがより明瞭に分離できており、今回のような十種類以上の様々な鉱物・結晶が含まれる試料の鉱物相の同定や定量化には明らかに有利であることが示された。もちろんソフトウエアを用いてKα1-Kα2による回折パターンからKα2の成分をある程度取り除くことはできるが、バックグラウンド等が不自然に減じられたり、ピーク形状が非対称になることがある。特に波形分離などで近接する回折ピークを分離する場合などに、Kα1単色での測定は優位性をもつと考えられる。また通常のNiフィルターでは完全に取りきれないCu Kβによる回折ピークも現れないことも有利となる。一方キャピラリー法で測定された回折パターンは明らかに結晶配向の影響が減っていることが確認されたが、測定にかかる試料全体の量が少ないため、封入型のX線管球を使う限り十分なS/N比をもつ回折パターンの測定には通常の測定の10倍近い時間を有することがわかった。またキャピラリー法での幾何学強度補正因子(ローレンツ因子)をどのように考えるかも結晶相の定量化には重要であり、今後検討していきたい。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 小暮敏博,山口飛鳥,”2次元検出器付XRDを用いた粘土試料中の不純物鉱物の分析”,第67回粘土科学討論会 (北九州) 令和6年9月5日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件