【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.04.15】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
24AT5010
利用課題名 / Title
ジシラン結合を持つ銅錯体の温度による構造変化
利用した実施機関 / Support Institute
産業技術総合研究所 / AIST
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies
キーワード / Keywords
核磁気共鳴/ Nuclear magnetic resonance
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
山野井 慶徳
所属名 / Affiliation
東京大学大学院理学系研究科化学専攻
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
服部峰之,大沼恵美子,佐藤景一
利用形態 / Support Type
(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
本研究の目的は、ジシラン結合を有する新規銅(I)錯体の構造変化が温度によってどのように変化するかを明らかにすることである。ジシラン基は柔軟なσ-骨格を有し、温度による立体配置の変化が分子全体の構造および物性に影響を与える可能性がある。本研究では、ジシラン架橋を含むビスピリジン配位子と銅(I)ヨウ化物との錯形成反応により目的錯体を合成し、その構造変化を可変温単結晶X線構造解析および固体状態での分光測定によって評価する。
実験 / Experimental
ジシラン架橋を有するビスピリジン配位子を合成し、CuIとの反応によって銅(I)錯体を得た。生成した錯体は再結晶により単結晶を得た後、100 K〜300 Kの範囲で可変温単結晶X線構造解析を行った。錯体の温度依存的な蛍光スペクトルを固体状態で測定し、構造変化と発光特性の関係について検討した。測定された15N CP/MASスペクトルは感度が極めて低いためS/N比が大きく、ピーク形状が正しく判別できないものであったため再解析を行った。CP/MAS NMRは、交差分極によって水素原子核のスピン占有数差を観測核に移すことで観測核の感度を向上させる手法だが、分子運動が速い構造では交差分極しにくいためにピーク強度が小さくなることが知られている(1)。DP/MAS NMRでは分子運動にほぼ依存せずにピークが観測されるため、両測定を比較することで固体中での分子の運動性を定性的にだが評価できる。結晶中に含まれるアセトニトリル分子の運動性を確認するために13CのCP/MASとDP/MASを測定した。
結果と考察 / Results and Discussion
X線構造解析の結果、温度上昇に伴いジシラン架橋部分のSi–Si–C角がわずかに広がり、配位子間の相対配置が変化することが確認された。また、銅中心のCu–NおよびCu–I結合距離も温度依存的に変化し、立体的な歪みが生じることが明らかとなった。蛍光スペクトル測定では、低温では青色発光、高温ではやや赤方偏移した発光が観測され、構造変化に起因する励起状態の再配置が示唆された。これらの結果は、ジシラン結合が温度応答性材料の設計に有用な構造要素である可能性を示している。測定済みの15N CP/MASスペクトルのLBパラメータを調整し手動で位相補正した結果,メインピークの形状だけでなくスピニングサイドバンドの存在も確認できる程度に鮮明なスペクトルが得られた.結晶中に含まれているアセトニトリル分子の運動性が高いならば、13C DP/MAS測定では13C CP/MAS測定の場合よりも相対的に強いピークが観測されるはずだが、実際に測定した結果、DP/MAS測定でのピーク強度の増大は見られなかったため、結晶中のアセトニトリル分子は運動性が低く結晶内に固定された状態であることが判明した。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
(1) Macromolecules 1977, 10, 2, 384–405.
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件