【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.04.07】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
24KT0002
利用課題名 / Title
STEM-EELSによる振動スペクトルの空間分解能評価
利用した実施機関 / Support Institute
京都大学 / Kyoto Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions
キーワード / Keywords
表面・界面・粒界制御/ Surface/interface/grain boundary control,電子顕微鏡/ Electronic microscope,先端半導体(超高集積回路)/ Advanced Semiconductor (Very Large Scale Integration)
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
川崎 直彦
所属名 / Affiliation
(株)東レリサーチセンター
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
稲元伸,玉岡武泰
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
治田充貴
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
KT-403:モノクロメータ搭載低加速原子分解能分析電子顕微鏡
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
半導体デバイスの絶縁膜として使われる非晶質SiO2膜において、絶縁性に影響を及ぼすSi-O-Si結合角やネットワーク構造を、従来の赤外吸収分光よりも高空間分解能で、実デバイスで評価することがSTEM-EELSに期待されている。モノクロメータ付きSTEM-EELSを用いて140 meV付近のSiO2の非対称伸縮振動ピークを検出できるが、非弾性散乱電子の非局在性により、通常のon-axis測定条件では、空間分解能がプローブ径よりも大きく悪化することが、昨年度の我々の実験で明らかになった[昨年度ARIM課題番号:23KT0051]。そこで今回は、高角度に散乱された電子のみでスペクトルを取得するoff-axis条件を用いて空間分解能の向上を試みた。
実験 / Experimental
Si基板上に厚さ100 nmのSiO2膜が成膜された試料に対して、FIBで断面薄片試料を作製し、STEMモードで収束された電子ビームを用いて、表面側からSi基板側に向かって連続的にEELSスペクトルを取得した。Si-Oの非対称伸縮振動ピークは140 meV付近であり、通常のEELSでは検出できないため、モノクロメータ搭載低加速原子分解能分析電子顕微鏡JEM-ARM200Fを用いて、加速電圧60 kVで測定を行った。図1に断面HAADF-STEM像を示す。EELS測定時の電子ビームの収束角は23 mradであるが、on axis条件では、ダイレクトビームがEELS aperture内に全て入るように調整した。off axis条件では図2のように、ダイレクトビームを検出せず、69 mradの角度で散乱された電子を検出できるように調整した。
結果と考察 / Results and Discussion
図3に、on-axis, off-axisそれぞれの条件で取得した、SiO2膜の非対称伸縮振動ピーク強度の深さ方向プロファイルを示す。上段に示すon-axis条件では、非対称伸縮振動ピーク強度はSi基板/SiO2薄膜界面よりも30 nm程度手前から緩やかに減少するのに対して、下段に示すoff-axis条件では、Si基板/SiO2薄膜界面のプロファイル傾きは急峻である。従って、on-axis条件では30 nmであった実効的な空間分解能がoff-axis条件では数 nm程度まで向上することを実験的に確認できたと言える。つまり、非晶質SiO2膜のSi-O-Si結合角やネットワーク構造に関して、Si基板との界面近傍の数nm程度における局所的な情報を得るには、off-axis条件での測定が必須であると言える。しかし、今回の測定条件では、界面近傍での結合変化に由来する伸縮振動ピークのシフトは検出されなかった。これは、図4に示すように、on-axis条件で33 meVであったゼロロスピーク半値幅がoff-axis条件では51 meVまで拡がっており、off-axis条件でエネルギー分解能が悪化したことが原因と推察される。off-axis条件でもエネルギー分解能が悪化しないような、STEM側のビーム、レンズ条件の最適化が必要であると考えられる。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1. Si基板/SiO2膜試料の断面HAADF-STEM像
図2. on-axis/off-axis EELSの測定条件
図3. on-axis/off-axis条件下でのSiO2非対称伸縮振動ピーク強度の深さ方向プロファイル
図4. on-axis/off-axis条件下でのEELSスペクトル
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 川崎直彦, Off-axis STEM-EELSによる振動スペクトルの空間分解能向上, 日本顕微鏡学会 第81回学術講演会, ポスター発表, 2025年6月9~11日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件