【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.05.02】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
24NM5001
利用課題名 / Title
物質空間テクトニクスプロジェクトの研究
利用した実施機関 / Support Institute
物質・材料研究機構 / NIMS
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
触媒材料/ Catalyst materials,エネルギー貯蔵/ Energy storage,資源使用量低減技術/ Technologies for reducing resource usage,電子顕微鏡/ Electronic microscope
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
山内 悠輔
所属名 / Affiliation
物質・材料研究機構
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
中津 牧人
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
NM-516:TEM試料作製装置群
NM-203:誘導結合プラズマ発光分析装置群
NM-502:実動環境対応電子線ホログラフィー電子顕微鏡
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
本研究の主な目的は、新しい材料の開発を通じて触媒およびエネルギー貯蔵アプリケーションの性能を向上させることです。具体的には、ZIF-67とZIF-8を組み合わせたコアシェル構造の合成と、その後の高温処理による中空構造の形成に焦点を当てています。この中空構造は、高い表面積と特異な形状により、触媒反応の効率を向上させると同時に、様々な化学物質やガスを吸収・解放することでエネルギー貯蔵機能を拡張することが期待されます。物質・材料研究機構(NIMS)の先進的な電子顕微鏡ユニットを利用して、合成されたサンプルの構造と組成の詳細な分析を行いました。透過型電子顕微鏡(TEM)、走査透過型電子顕微鏡(STEM)、エネルギー分散型X線分析(EDS)を駆使して、コアシェル構造と高温熱分解による中空構造の形成を確認しました。これらの分析により、中空構造の正確な形成と、構造内の元素の均一な分布が示されました。このことは、材料が研究目的に適合していることを裏付けるものであり、高温条件下での構造的および化学的安定性に優れた新規複合材料の開発へと繋がります。これらの結果から、持続可能なエネルギーソリューションおよび高効率触媒システムの設計に対する貢献が期待されると同時に、ナノレベルでの材料構造の制御が機能的特性に与える影響を理解するための基盤が築かれました。
実験 / Experimental
この研究では、ZIF-67をコアとして、その表面にZIF-8をシェルとして成長させる方法でコアシェル構造を合成しました。合成したコアシェル構造を高温炉で熱処理することにより、構造を中空化させ、材料の熱安定性と機能的特性を向上させることを目指しました。このプロセスは、触媒およびエネルギー貯蔵アプリケーションでの使用に向けた材料の性能を最適化するために重要です。支援機関での実施内容物質・材料研究機構(NIMS)の電子顕微鏡ユニットで行われた本研究では、以下の設備を利用しました:1. 透過型電子顕微鏡(TEM):JEM-ARM200F-Bを使用して、高解像度でサンプルの構造を観察しました。この装置を通じて、ナノスケールでの精密な構造評価が可能となり、特に中空構造の形成状況を詳細に確認することができました。2. 走査透過型電子顕微鏡(STEM)とエネルギー分散型X線分析(EDS):STEMを使用してコアシェル構造の内部を詳細に観察し、EDSによる元素分布のマッピングを行いました。これにより、サンプル中の各元素が適切に配置されていることを確認し、中空構造の均一性と完整性を保証しました。3. 高温炉:制御された条件下での高温熱分解を行うために使用されました。この熱処理は、コアシェル構造の中空化を促進し、材料の熱安定性を向上させるための重要なステップです。
結果と考察 / Results and Discussion
TEM分析(図1)を通じて、サンプル2の詳細なナノ構造が明らかにされ、その形態と結晶性が評価されました。高解像度のTEM画像は、特定の機能特性を強化するために調整された合成プロセスの成功を示唆しており、材料内の微細な詳細や不具合を明瞭に捉えています。これにより、アプリケーションの性能に影響を与える可能性のある要素が評価されます。一方で、STEM分析(図2)はサンプル内の内部構造に焦点を当て、特にエッジ、境界、および界面の詳細を強調しています。これらのSTEM画像は、触媒やセンサー技術を含むさまざまなアプリケーションで材料がどのように機能するかを微視的レベルで理解するのに不可欠です。さらに、高角アニュラー・ダークフィールド(HAADF)で捉えられた画像は、サンプル内の重い元素の分布を示し、原子番号に基づくコントラストを明らかにしています。この情報は、材料の組成分析および機能的特性の理解を深めるのに役立ちます。このように、TEMとSTEMの両方の分析は、サンプル2の詳細な構造的および組成的特性を評価するために重要な役割を果たしています。エネルギー分散型X線分析(EDS)(図3)は、その元素組成に関する重要な情報を提供するために使用されました。EDSは特に、サンプルの化学的性質を定量的および質的に評価するのに役立ちます。この分析を通じて、亜鉛(Zn)、コバルト(Co)、窒素(N)など、材料の機能に不可欠な元素の存在とその均一な分布が確認されました。これらの元素は、触媒反応やエネルギー貯蔵といったアプリケーションにおいて中心的な役割を果たすため、その均一分布は材料の性能に直接影響を与えます。
サンプル6TEM分析(図4)により、高度に整ったナノ構造を示し、これが特定の機能的特性を有することが確認されました。粒子は均一なサイズと形状を持ち、その表面と内部構造は、高解像度の画像で詳細に捉えられました。また、STEM分析(図5)は、粒子の内部構造をさらに詳しく可視化し、特に中空部分の明瞭な画像を提供しました。これらの中空構造は、物質の吸収や触媒反応において重要な役割を果たすと考えられます。EDS分析(図6)により、サンプル6内の元素分布がマッピングされました。特に亜鉛(Zn)、コバルト(Co)、窒素(N)、炭素(C)、酸素(O)の均一な分布が確認され、これにより材料の合成が適切に制御されていることが示されました。各元素の均一な分布は、材料の機能的一貫性と性能を保証するために不可欠です。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1. ZIF-67/ZIF-8-Cの透過型電子顕微鏡(TEM)
図2. ZIF-67/ZIF-8-CのSTEM画像、左がBright Field (BF)、右が Annular Dark Field (ADF)
図3. 中空化後のエネルギー分散型X線分析(EDS).Zn, Co, N, Cの分布を示し、中空構造の形成後も元素の損失がないことが確認できる
図4. Co-NCの透過型電子顕微鏡(TEM)
図5. Co-NCのSTEM画像、左がBright Field (BF)、右が Annular Dark Field (ADF)
図6. Co-NCのエネルギー分散型X線分析(EDS)
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件