【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.04.17】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
24NM0181
利用課題名 / Title
磁鉄鉱の酸化メカニズムのナノスケール観察
利用した実施機関 / Support Institute
物質・材料研究機構 / NIMS
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed
キーワード / Keywords
磁気記録材料/Magnetic recording materials,電子顕微鏡/ Electronic microscope
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
興野 純
所属名 / Affiliation
筑波大学 生命環境系
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
笠嶋 梨緒
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
NM-505:200kV透過電子顕微鏡
NM-510:FIB加工装置(JIB-4000)
NM-516:TEM試料作製装置群
NM-503:200kV電界放出形透過電子顕微鏡(JEM-2100F1)
NM-504:200kV電界放出形透過電子顕微鏡(JEM-2100F2)
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
【はじめに】
鉄は地球上に非常に豊富に存在する元素である.地球の核は鉄-ニッケル合金であるため,地球の質量の約3分の1は鉄に相当する.また,地殻中では,酸素,ケイ素,アルミニウムに次いで,鉄は4番目に多い元素である.先カンブリア時代には,地球上に誕生したシアノバクテリアが光合成で酸素を発生し,それが海中に溶けたことで海洋は酸化的環境に変化した.これにより,海水中の鉄は3価の鉄イオンとして安定化し,酸素と結合して水酸化鉄として海底に大規模に沈殿して縞状鉄鉱床を形成した.したがって,縞状鉄鉱床の形成は,海洋が還元的環境から酸化的環境に変化した地球の歴史上,非常にインパクトの大きいイベントであった.
鉄は酸素と結合し多様な酸化物を形成する.地殻に含まれる酸化鉄は,その多くはmagnetite(Fe3O4)とhematite(γ-Fe2O3)である.Magnetiteは,2価と3価の鉄イオンからなる強磁性酸化物であり,スピネル型構造を示す.一方,hematiteは,3価の鉄イオンからなる反強磁性酸化物であり,コランダム型構造を示す.しかし,Fe2O3には様々な多形が存在する.α-Fe2O3のhematiteの他に,ビクスビ鉱(bixbyite)(Mn,Fe)2O3のFe端成分が知られている.ビクスビ鉱は,2021年からMn端成分とFe端成分に分けてそれぞれをbixbyite-(Mn)とbixbyite-(Fe)に分類することになった(Miyawaki, et al., 2022).そのため,ビクスビ鉱型構造は β-Fe2O3として分類されている.次に,2017年に米国アイダホ州メナン火山帯の玄武岩スコリアから発見された結晶サイズが約 20~120 nm のガラスの酸化生成物のluogufengiteが,新しい酸化鉄として発見され(Xu et al., 2017),これが ε-Fe2O3として分類されている.そして,magnetiteの風化生成物として知られているmaghemiteが γ-Fe2O3として分類されている(Wagner, 1927; Schwertmann and Cornell, 1991).Maghemiteは,magnetiteと同じスピネル型構造であるが,2価の鉄イオンが3価の鉄イオンに酸化したことにより,チャージバランスを保つために八面体席に空孔を持つことが特徴である.本研究で着目するmaghemiteは,材料としても様々な分野で応用研究が進められている.例えば,これまで私たちの生活の中で,記録媒体の磁気ディスクや磁気テープの記憶装置にmaghemiteが使用されてきた.最近では,バイオメディカル分野においても研究が進められ,磁気共鳴画像スキャン(MRI)の造影剤や(Lee et al., 2007; Na et al., 2009),磁気ハイパーサーミアがん治療法(Jang et al., 2009; Quinto et al., 2015)に利用されている(Andersen et al., 2021).
Magnetite(Fe3O4)は空間群 Fd-3mのスピネル型構造をとり,陽イオンサイトには4配位の四面体席と6配位の八面体席が存在する.そのうち四面体席はFe3+,八面体席はFe2+とFe3+によって占有されている;IV[Fe3+]1.0VI[Fe3+Fe2+]2.0O4.しかし,magnetiteの八面体席のFe2+がすべてFe3+に酸化され,チャージバランスを維持するために八面体席の1/6が空孔になったものがmaghemiteである;IV[Fe3+]1.0VI[Fe3+5/3□1/3]2.0O4,□は空孔を表す. Maghemiteには空孔の配置によって異なる3つの空間群が存在し(Pecharromán et al., 1995),粉末回折実験によって,空間群の連続的な遷移が確認されている(Kelm and Mader, 2005; Kinebuchi and Kyono, 2021).空孔が八面体席に無秩序(ランダム)に分布した無秩序配置型のmaghemiteの場合は,magnetiteの空間群 Fd-3 mを維持する.八面体席の空孔の分布が部分的に秩序配置化すると,スピネル型構造の八面体席の対称性が失われ2種類の非等価な八面体席に分かれ,空間群 P4132の部分秩序配置型のmaghemiteに構造相転移する.この際,1つの八面体席はFe3+によって完全に占有されるのに対し,もう1つの八面体席は2/3が空孔となる.さらに八面体席の空孔分布の秩序配置化が進むと,空間群 P41212の完全秩序配置型のmaghemiteに構造相転移する.この際,八面体席の対称性は7種類の非等価な八面体席に分かれ,6つの八面体席はFe3+によって完全に占有されるのに対し,1つの八面体席のみが完全に空孔になる.
Magnetiteからhematiteへの酸化過程では,スピネル型構造のF格子の無秩序配置型maghemiteから,P格子の空間群 P4132の部分秩序配置型maghemiteを経て,P格子の空間群 P41212の完全秩序配置型maghemiteに変化するが,3相の連続的な出現は,放射光粉末X線回折測定において確認されている(Kinebuchi and Kyono, 2021).しかし,単結晶内で構造相転移が空間的に連続であるかは確認されていない.また,単結晶magnetite表面でのmaghemiteの形成と空孔の秩序配置の進行過程についても,これまでに観察された例はない.
そこで本研究では,単結晶magnetite内でのmaghemiteの形成過程をナノスケールオーダーで観察することによって,maghemiteの空孔の秩序配置メカニズムを解明することを目的とした.そして,単結晶magnetite表面の結晶面ごとのmaghemiteの構造相転移の違いを観察することを目指した.
実験 / Experimental
【実験方法】
〇試料準備
水熱法を用いて,単結晶magnetiteの合成を行った.まず,超純水(Milli-Q水,メルクミリポア社製超純水製造装置)8 mLに塩化鉄(Ⅱ)四水和物(富士フイルム和光純薬,試薬特級)を3 mmol(616.53 mg)を加え攪拌し溶解させた.次に,水酸化ナトリウム(富士フイルム和光純薬,試薬特級)から作成した4 mol/L水溶液を4 mLを加え,容積28 mlのテフロン容器に入れ,直ちにステンレス製密閉式溶解るつぼ(オーエムラボテック株式会社,MR28型)に密閉した.続いて,密閉式溶解るつぼを電気炉(アドバンテック東洋,定温乾燥器,DRM320DA)にセットし,200℃で24時間加熱した.加熱後,電気炉から取り出し30分程度流水中に沈め急冷した.その後,密閉式溶解るつぼを開けテフロン容器から試料を取り出し,シリカゲルを入れたデシケーター内で乾燥させた.ここまでの過程で得られた試料を試料Aとする.さらに,試料の一部を磁器るつぼに移し,電気炉(ヤマト科学,電気炉,FO300)に入れ大気中で400℃,6時間の加熱を行った.この試料を試料Bとする.
〇試料分析
・放射光粉末X線回折(XRD)
高エネルギー加速器研究機構つくばキャンパス内のフォトンファクトリー(PF)のビームラインBL-8Bにおいて,放射光粉末XRDによる物質同定を行った.試料A,Bはメノウ乳鉢で十分に粉砕し粉末にした後,直径0.7mmのリンデマンガラスキャピラリー(Hilgenberg社製Mark tube)に封入した.X線波長は,NIST(米国国立標準技術研究所)のCeO2(NIST標準物質674b; 格子定数 a = 5.41153 Å)を用いて較正し,照射したX線の波長を0.6821Åと決定した.X線回折は,湾曲イメージングプレート(IP)検出器(リガク株式会社,R-AXIS RAPID)を装備した半径191.3 mmの大型デバイシェラーカメラで測定した.測定条件は,振動角φ±10°で,照射時間は3分間とした.IPデータは,リガクソフトウェアRapid-Auto(リガク株式会社)を使用して2次元パターンに統合し,QualXソフトウェア(Altomar et al.,. 2008; 2015)を用いて解析した.
・走査型電子顕微鏡(SEM)
試料の外形観察は,筑波大学生命環境系電顕室のオープンファシリティー施設の走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社,電界放射形走査電子顕微鏡,JSM-6330F)を用いて行った.SEMで観察した試料は,試料Aと同様の水熱法で,加熱時間が7日間のものを使用した.試料は,SEM観察用真鍮製試料ホルダーに接着したカーボンテープ上に均一に散布し固定した後,イオンスパッタ装置(日立ハイテク,イオンスパッタMC1000)で白金-パラジウム合金を60秒間イオンスパッタリングし,導電処理を行った.加速電圧5.0 kV,放電電流 12 mA,高倍率観察時には焦点深度の調整を行い,表面の微細構造を詳細に観察した.
・透過型電子顕微鏡(TEM)
TEM観察の試料準備として,集束イオンビーム(FIB)を用いて単結晶magnetiteの{111}面から薄片を削り出した.Fig. 1に,magnetite単結晶の薄片作製工程を示した.まず,試料Bから約10 ㎛サイズの単結晶magnetiteを一粒ピックアップし,{111}面に対して垂直に掘削加工ができるようにTEMグリッドに固定した(Fig. 1a).固定した単結晶magnetiteにカーボン蒸着装置(日本電子株式会社,オートカーボンコータ,JEC-560)を用いてカーボンコーティングを行い,国立研究開発法人物質・材料研究機構付設の集束イオンビーム加工装置(日本電子株式会社,集束イオンビーム加工観察装置,JIB-4000)によって厚さ約50 nmの{110}面に平行な薄片を削り出した(Fig. 1b, c). TEM観察は,同じく国立研究開発法人物質・材料研究機構付設の透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社,電界放出形透過型電子顕微鏡,JEM-2100F)を用いて行った.試料Bを用いて,集束イオンビーム(FIB)により薄片を作成したのち,透過像と回折パターンを取得した.加速電圧は200 kV,エミッション電流は124-127 µAで行った.取得した画像の処理には,Gatan社製のDigital Micrographソフトウェア,または画像処理ソフトウェアImage Jを使用した.電子回折像の解析には,回折シミュレーションReciProソフトウェア(Seto and Ohtsuka, 2022)を用いて解析した.
結果と考察 / Results and Discussion
【結果】
〇SEM
SEMによる結晶の外形の観察結果をFig. 2に示す.最大で約20㎛の単結晶も観察されたが,おおむね約10㎛程度の単結晶であった.多くの単結晶が明瞭な正八面体型の自形結晶を示し,結晶形態より立方晶系の単結晶であることが示唆された.正八面体型の単結晶には8つの正三角形の結晶面が発達しているが,これが立方晶系である場合は,正三角形の面は{111}面に相当する.さらに,{111}面間の境界を縁取るように狭い平面が観察されたが,これは{110}面に相当している.なお,SEMとTEMでは観察した単結晶magnetiteを合成した水熱法の加熱時間が異なっているが,両者間では単結晶の大きさ,外形とも大きな違いはなかった.
〇放射光粉末XRD
放射光粉末XRD測定の結果をFig. 3に示す.試料A,BのXRDパターンからは,ほとんどのピークはmagnetiteの回折ピークと一致した.さらに,hematiteと金属鉄の回折ピークも検出した.金属鉄の回折ピークが観察された理由としては,本実験の水熱法でmagnetiteを合成する場合は,magnetite結晶表面が触媒として, H2OとFe2+が電子のやり取りをすることでH2が発生することが知られている(Mayhew et al., 2013).この反応容器内で発生したH2によって,鉄イオンが還元を受けて金属鉄が形成したと考えられる.そして,加熱前の試料Aと比較して,400 ℃で加熱した試料Bではhematiteの回折ピーク強度が増加していた.これは,試料Bではmagnetiteからhematiteへの酸化が進行したことを示している.そこで,本研究では,TEMによる単結晶magnetite内でのmaghemite形成過程のナノスケールオーダー観察に,試料Bを用いることとした.さらに,特筆すべきこととしては,試料A,B のXRDパターンからはmaghemiteに相当する回折ピークは検出されなかったことである.この原因については,先行研究の結果も踏まえて,後ほど考察で議論する.
〇TEM
TEM観察の結果をFig. 4に示す.試料観察は,同一単結晶内の2か所で詳しく行った.本研究では,{110}面に接する領域を領域I,{111}面に接する領域を領域IIと呼ぶ.Fig. 4からは,領域Iには明度の異なる複数の層がグラデーション状に分布している様子が分かる.領域IIには,明瞭な相境界が形成されていることが確認できる.
領域IのTEM観察の結果をFig. 5に示す.領域Iでは,結晶表面から深さ700 nmまでの間に明度の異なる4相が観察された.最も内部のA層では,電子線回折パターンは6回回転対称を示し,これは空間群 Fd-3 m のスピネル型構造の<111>方向からの回折パターンと一致する.次にB層では,6回回転対称ではあるものの回折パターン内の像が増加しており,これはA層より対称性の低下した P4132 の空間群を示すmaghemiteであると考えられる.続いてC層では,再び電子線回折パターンが変化し,これはP41212 のmaghemiteに相当するものであると考えられる.そして,最表面のD層では,回折パターンはリング状を示した.このことは,試料は単結晶ではなく多結晶化したことを示しており,リングの中心から環状の回折パターンから,これはhematiteであると推定される.したがって,単結晶magnetiteの{110}面では最も内部のmagnetiteから結晶表面に向かって,3種類のmaghemiteを経てhematiteへと変化していると考えられる.
領域IIのTEM観察の結果をFig. 6に示す.領域IIでは,最表面から深さ300 nmに明瞭な相境界が観察された.この境界の内部と外部に異なる2相が存在し,内部のE層ではmaghemiteの電子線回折パターンが観察された.一方,外部のF層ではhematiteの2回回転対称の電子線回折パターンがみられた.そして,ここで重要な点は,{111}面は{110}面とは異なり,結晶の最表面は多結晶化はしておらず,結晶方位がそろっていることである.これより{111}面ではmagnetiteからhematiteへの酸化はmaghemiteを経ずに進行していると考えられる.
【考察】
TEM観察結果より,{110}面と{111}面で異なる酸化過程が確認できた.したがって,maghemiteの空孔の秩序化は結晶面によって異なる進行の仕方をすると考えられる.Magnetite単結晶の{111}面方向は,八面体席間距離が{110}面方向より短く,3価の鉄イオンと空孔間での原子拡散が{110}面方向よりも容易なため,空孔の秩序化の進行が{110}面方向よりも速いと考えられる.反対に,{110}面方向は{111}面方向と比較すると四面体席が近接しており,八面体席間距離が遠いため,相対的に空孔の秩序化の進行が遅くなると推察される.それによって,3価の鉄イオン拡散が遅い{110}面は,{111}面と比較するとP格子が出現しやすいと考えられる.これにより,3相のmaghemite間の境界は曖昧になり,空孔の秩序化の進行とともに単結晶性の維持ができなくなった結果,最表面では粉末状のhematiteが観察されたと考えられる.それに対して,{111}面では空孔の秩序化の進行が速くなり,magnetiteからhematiteに直接変化し,2層間には明瞭な境界が形成されると考えられる.そして,単結晶から単結晶への相転移が起こることで,単結晶性を失わずに酸化が進行している.
最後に,本研究の試料A,B のXRDパターンからはmaghemiteに相当する回折ピークが観察されなかった原因について考察する.先行研究では,maghemiteに関する研究は粉末試料を用いた研究がほとんどである.Kinebuchi and Kyono (2021)は,粉末にしたmagnetite試料を大気中で250℃,3時間加熱し,hematiteが形成されることを確認した.本研究では,単結晶magnetite試料を大気中で加熱ししたが,先行研究(Kinebuchi and Kyono, 2021)で行った250℃,3時間の加熱条件の他にも,250℃で6時間,250℃で24時間の加熱を行ったが,XRDパターンからは,hematiteの回折ピークにほとんど変化は見られず,magnetiteからhematiteへの酸化の進行はまったく観察されなかった.本研究でのSEMによる観察から,単結晶magnetiteの外形が非常に明瞭で,{111}面が発達した八面体形の{111}面境界を縁取る{110}面も確認できた.また,TEMによる観察から,{111}面ではmagnetiteからhematiteに直接酸化が進行し,P格子のmaghemiteは{110}面に限定的であることが判明した.粉末XRDからP格子のmaghemiteが観察されなかった理由は,単結晶magnetite上で形成されるmaghemiteが僅かであったためと考えられる.一方,結晶面がランダムに露出した単結晶を粉砕した粉末結晶においては,{111}面以外の結晶面が表面に露出し,様々な速度でmaghemiteの空孔の秩序化が進行すると考えられる.そのため粉末試料では,250℃,3時間でもmaghemiteの空孔の秩序化の進行には十分な温度であったと考えられる.
【結論】
本研究では,放射光粉末XRD測定,SEM,TEMを用いて,単結晶magnetite内でのmaghemiteの形成過程をナノスケールオーダーで観察し,maghemiteの空孔の秩序配置メカニズムを調べた.単結晶の深さ方向に観察した結果,結晶面によって秩序化の進行過程が異なることが判明した.これは,magnetiteの八面体席間の距離の違いにより,八面体席における空孔の秩序化の進行速度が異なるため,単結晶内での秩序配置メカニズムに違いが生じていると結論付けた.
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig. 1 Magnetite単結晶をFIBを用いて{111}面に対して垂直に切断を行った薄片作製工程.(a) 切断前のmagnetite単結晶のSIM像.(b) Magnetite単結晶の{111}面に対して垂直に切断した薄片断面のSIM像.露出しているのは{110}面.左下側から下側最外部の色の濃い部分はカーボンコーティング.TEM観察は{110}面方向から実施.(c) 薄片を上方向から撮影したSIM像.厚さは約50 nm.
Fig. 2 Magnetite単結晶のSEM像.(a) Magnetite単結晶の集合体.5~10㎛程度の単結晶が多く観察される.(b) 20㎛程度の比較的大きく成長した正八面体のmagnetiteの自形結晶.正三角形の面が{111}面,{111}面の境界にあたる面が{110}面.
Fig. 3試料A,Bの放射光粉末XRDパターン.
Fig, 4 Magnetite単結晶の{110}面のTEM像.Fig. 1bの薄片断面のSEM像に対応.図中の領域Ⅰと領域IIは,それぞれmagnetite単結晶の{110}面と{111}面に対応している.領域IIの外側の透明な部分はカーボンコーティング.
Fig. 5 {110}面の領域IにおけるTEM像と領域I内の各点の電子線回折パターン.結晶表面から深さ700 nmまでの間に明度の異なる4相が観察された.A層では空間群 Fd¯3 m のスピネル型構造の回折パターンが観察された.B層ではA層より対称性の低下した結晶群 P4_1 32 の回折パターンがみられた.C層ではP4_1 2_1 2 のmaghemiteが観察され,D層では多結晶化したhematiteの回折パターンがみられた.
Fig. 6 {111}面の領域IIにおけるTEM像と領域I内の各点の電子線回折パターン.Fig.5の領域Iよりも境界面が明瞭である.E層では空間群 Fd¯3 mのmaghemiteの電子線回折パターンが観察された.F層では結晶方位のそろったhematiteの2回回転対称のパターンがみられた.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
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論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
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特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件