【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.04.07】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
24NM0162
利用課題名 / Title
耐放射線サーモパイル試作
利用した実施機関 / Support Institute
物質・材料研究機構 / NIMS
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
耐放射線,サーモパイル,センサ/ Sensor,蒸着・成膜/ Vapor deposition/film formation
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
山我 拓巳
所属名 / Affiliation
高エネルギー加速器研究機構
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
伊多波辰徳
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
吉田美沙
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術補助/Technical Assistance
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
NM-660:マスクレス露光装置 [MLA150]
NM-626:触針式プロファイラー [Dektak XT-A #1]
NM-662:低ダメージ精密エッチング装置 [Spica]
NM-605:水蒸気プラズマ洗浄装置 [AQ-500 #1]
NM-609:電子銃型蒸着装置 [ADS-E86]
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
J-PARCハドロン実験施設では、30GeVに加速された1次陽子ビームをAu標的に照射し生成するπ中間子やK中間子などの2次粒子ビームを用いた原子核・素粒子実験が行われている。現在使われているAu標的は標的であるAuをCu製の台座に接合した固定標的で、Cu台座を水冷することで間接的に冷却している。大強度陽子加速器施設(J-PARC)にあるハドロン実験施設では、加速された陽子ビームを金属標的に照射し生成する2次粒子ビームを用いた素粒子・原子核実験が行われている。金属標的の健全性監視では標的温度の監視が特に重要である。現在使用している標的は冷却用の台座に固定されたもので、台座に接触させた熱電対で標的温度を測定している。近い将来には、今後段階的に増強されていくビーム強度に耐えるため、回転標的を用いる予定である。回転標的の場合には接触型の温度計を用いることが難しいため、非接触温度計である赤外線温度計を用いることを検討している。しかし一般の赤外線温度計は半導体が使われているため放射線環境下で用いることができない。そこで本研究では、耐放射線性を有する赤外線温度計の開発を行う。
実験 / Experimental
赤外線温度計は、赤外線を吸収する赤外線吸収膜、赤外線を吸収した時の温度上昇を図るためのサーモパイルからなる。対放射線性を持たせるためにはこれらの構成要素を全て金属・セラミック材料で作らなければならない。本研究では、赤外線吸収膜は炭素膜、サーモパイルの電極材として銅とニッケルを選んだ。銅とニッケルのゼーベック係数はそれぞれ0.76V/℃と-1.48V/℃である。初めに石英基板上に銅とニッケルからなるサーモパイル配線を作製した。サーモパイル配線を接点数を16, 32, 64, 128, 512, 1024としたサンプルを作製し温度特性を測定した。その後、サーモパイルの温接点側に炭素膜を形成した。炭素膜の厚みはあらかじめ膜厚と赤外線吸収率の関係を測定し最適な膜厚となるよう調整した。
結果と考察 / Results and Discussion
銅とニッケル電極からなるサーモパイルパターンのみを形成したサンプルを図に示す。各接点数につき4サンプルを作製したが、残念ながら配線間の断線が多々みられた。今回は目視でのパターン形状の確認のためにパターンサイズを大きくした。これが多くの断線の原因ではないかと考えられる。断線が比較的少ないサンプルについて、黒体炉を用いて温度特性を測定した。測定したサンプルは赤外線吸収膜である炭素膜を形成する前であるが、基板である石英の赤外線吸収率が90%程度で十分高く、炭素膜無しでも赤外線温度計としての特性を示すことを期待した。測定したところ、わずかに赤外線に対する応答が見られたものの、非常に大きな電気的ノイズが見られた。また応答速度も非常に遅く、パターン全体の熱容量が大きすぎることが考えられる。今後パターン形状を見直し、ノイズと熱容量を低減し測定感度の向上を目指す。断線の特に少ない16接点のサンプルにはサーモパイルの温接点部に炭素膜を形成した。今後性能評価などを行なっていく。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
銅-ニッケルのサーモパイルパターンのみのサンプル。サーモパイルの接点数は16。
赤外線吸収膜として用いる炭素膜の形成前後の外観の違い。
サーモパイルの温接点側に炭素膜を形成した後の様子。
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
NIMS微細加工ユニットのスタッフの皆様、特に吉田様には装置の利用方法や成膜手順の提案などをしていただきました。大変ありがとうございました。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件