利用報告書 / User's Reports

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【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.04.17】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

24NM0159

利用課題名 / Title

フッ素系高分子薄膜の表面解析

利用した実施機関 / Support Institute

物質・材料研究機構 / NIMS

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

コンポジット材料/ Composite material,質量分析/ Mass spectrometry,集束イオンビーム/ Focused ion beam


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

川口 大輔

所属名 / Affiliation

東京大学 大学院工学系研究科 化学生命工学専攻

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

田代薫

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

宮内直弥

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

NM-205:飛行時間型二次イオン質量分析装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

ポリテトラフルオロエチレンに代表されるフッ素ポリマーは、高い熱的・化学的安定性や低誘電率、撥水撥油性といった有用な性質を有する。特に、撥水撥油性は他の元素では実現できない魅力的な表面特性である。しかしながら、近年有機フッ素化合物の環境への流出と蓄積性が問題視されている。そこで、環境への負荷を軽減するために、フッ素の使用を極力少なくし、適材適所にフッ素を用いた撥水撥油表面の設計が強く望まれている。本研究では、最小限のフッ素で撥水撥油表面を設計することを目的として、代表的な結晶性高分子であるポリエチレン(PE)に着目した。PEの末端に導入したフルオロアルキル基が結晶構造から除外され表面に偏析することで、最小限のフッ素で撥水撥油表面を構築できるのではないかと考えた。そこで、ポリエチレン薄膜の表面組成を分析するために、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)を用いることにした。TOF-SIMSでは、試料表面の深さ数nm程度の領域から放出される二次イオンを分析することで、試料最表面の元素組成を知ることが可能である。これによって、ポリエチレンの末端に導入されたフッ素が薄膜の最表面に偏析しているかどうかを調査することができる。

実験 / Experimental

飛行時間型二次イオン質量分析装置PHI TRIFT V nanoTOF(ULVAC-PHI)を用いて測定を行った。シリコン基板上にスピンコートしたポリエチレンの薄膜(1 cm × 1 cm)を用いて測定を行った。Biのイオン源に対して30 kVの電圧をかけて発生させた、Bi32+を一次イオンとして用いた。イオンの照射領域を100 μm四方とし、2.00E+11 ion/cm2の条件でイオンを照射した。ネガティブモードで、サンプルに対して3070 Vの電圧をかけて測定を行った。

結果と考察 / Results and Discussion

図1はネガティブモードにおけるマススペクトルである。図1(A)は末端にフッ素を持たない通常のポリエチレンのスペクトルであり、m/z = 13(CH-), 25(C2H-)がポリエチレン主鎖のエチレン部分に由来する主要なピークとして観測された。一方で、図1(B)は末端にフルオロアルキル基を有するポリエチレンのスペクトルであり、m/z = 19(F-)に帰属されるピークが主要なピークとして観測された。このことから、末端のフルオロアルキル基が最表面に偏析していることが確認できた。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 (A)ポリエチレンおよび(B)末端にフルオロアルキル基を有するポリエチレンのToF-SIMSスペクトル


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

装置の利用にあたり、国立研究法人物質・材料研究機構 技術開発・共用部門 材料創製・評価プラットフォーム 表面・バルク分析ユニット/(併任)マテリアル基盤研究センター運営室 の宮内直弥様にご指導いただきました。心より御礼申し上げます。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 田代薫・岡添隆・川口大輔 「ポリエチレンの結晶ラメラを利用した撥水撥油表面の設計」 第73回高分子討論会 新潟大学 五十嵐キャンパス 2024/09/25-27
  2. 田代薫・岡添隆・川口大輔 「末端にフルオロアルキル基を有するポリエチレンを利用した撥水撥油表面の設計」 第47回フッ素化学討論会 東京科学大学 すずかけ台キャンパス 2024/11/14-15
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:1件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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