【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.05.17】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
24NU0072
利用課題名 / Title
SrTiO3をフラッシュ焼結した時に生じる非平衡点欠陥
利用した実施機関 / Support Institute
名古屋大学 / Nagoya Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
ナノ粒子/ Nanoparticles,電子顕微鏡/ Electronic microscope,ナノシート/ Nanosheet
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
森田 孝治
所属名 / Affiliation
国立研究開発法人物質・材料研究機構
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
山本 剛久
利用形態 / Support Type
(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub),技術相談/Technical Consultation
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
NU-102:高分解能電子状態計測走査透過型電子顕微鏡システム
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
電場支援焼結法の一つであるフラッシュ焼結法は、主に酸化物セラミックスを短時間で緻密化できる優れた焼結法として知られている。この焼結法では、ある臨界温度において電力が急峻に増加する現象が現れ、その電力量の増加とともに大きな緻密化が生じる。そのため、フラッシュ焼結時に生じる緻密化は、この電力投入によるジュール加熱に起因すると考えられていた。しかしながら、緻密化挙動の解析などから、電場下では非熱的な効果に起因する物質拡散量の増加についても指摘されつつある。物質拡散は材料中に含まれる点欠陥形成と関係するため、電場下における点欠陥形成に関する知見を得ることは、フラッシュ焼結時の物質拡散に関する理解を深めると考えられる。本課題では、SrTiO3をモデル材料とし、フラッシュ焼結時に生じる非平衡点欠陥形成(主に酸素空孔)について、主にTEMを用いた解析を行った。
実験 / Experimental
市販のSrTiO3粉末を用いて、一般的な手法で圧粉成型体を作製した。この圧粉成型体に電極としてPt箔を固定し、その電極間に100V/cmの電場を印加しながら昇温し、フラッシュ焼結を行った。得られた焼結体の中央部から試料片を切り出し、機械研磨、Arイオンミリング処理を行い、TEM試料を作製した。得られたTEM試料を用いて、微細組織、並びに、EELSを用いたTi L-edgeの計測を行った。Ti L-edgeのeg/t2gピーク分離の状態から点欠陥形成(酸素空孔)形成について確認した。
結果と考察 / Results and Discussion
フラッシュ処理後のSrTiO3焼結体組織を図1(a)に示す。結晶粒界3重点には液相形成に起因するアモルファスプールの存在は確認されなかった。このことから、フラッシュ焼結は固相状態で進行したと考えられる。一方、比較のために作製した無電界焼結体、および、フラッシュ焼結体の結晶粒内からTi L-edgeの取得を行った。Ti L-edgeは、Tiが酸素八面体の中心に位置していることから3d軌道が二つの異なるエネルギーを有するt2g、eg軌道に分裂する。そのため、酸素空孔の増加に伴う配位数の変化にともないt2g、eg軌道への分裂が不明瞭になる。SrTiO3無電界焼結体の結晶粒内から取得したEELスペクトルのTi L-edgeを確認したところ、t2g、eg軌道の分裂は、これまでに報告されている形態と類似していた(図1(b))。しかしながら、フラッシュ焼結体から得られたTi L-edgeでは、t2g、eg軌道の分裂が不明瞭となり、互いのピークの重なりが増加していることが確認された(図1(c))。これは、電場下において酸素空孔が増加していることを示唆している。フラッシュ焼結時に認められる物質拡散の非熱的な増加は、酸素空孔増加による陽イオンの拡散障壁の低下が要因である可能性が示唆されたものと考えられる。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1 (a) フラッシュ焼結を行ったSrTiO3焼結体のTEM明視野像、(b)無電界焼結体から取得したTi L-edge、および、(c)フラッシュ焼結体から取得したTi L-edge
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
該当なし
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件