【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.05.17】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
24NU0054
利用課題名 / Title
蔡型クラスターをもつ超伝導近似結晶の作製と組成分析
利用した実施機関 / Support Institute
名古屋大学 / Nagoya Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
電子顕微鏡/ Electronic microscope,電子回折/ Electron diffraction,超伝導/ Superconductivity,トポロジカル量子物質/ Topological quantum matter
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
出口 和彦
所属名 / Affiliation
名古屋大学 大学院理学研究科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
準結晶とは原子配列が準周期性(周期的ではない特殊な規則の配列)をもち、結晶では許されない回転対称性(5回対称など)をもつ物質である。準結晶の電子状態は、結晶やアモルファスの電子状態とは質的に異なると期待されており、希土類元素を含む蔡型クラスターを持つ準結晶とその近似結晶(準結晶と同じ局所構造をもつ結晶相)について量子臨界現象・磁性・超伝導などの研究が行われている。準結晶の構造についての理解は進んでいるが、準周期性に特有な電子物性は未解明の部分が多い。我々は並進対称性の役割に着目した研究を進めるために新物質開発を行った結果、Tsai型のクラスターをもつAu-Al-La
1/1近似結晶が超伝導を発現することを発見した。本研究では、Tsai型のクラスターをもつAu-Al-La
1/1近似結晶のクラスター中心の構造を組成分析と粉末X線回折により明らかにした。
実験 / Experimental
利用装置:JCM-6000plus
実験方法:アーク炉を用いてAr雰囲気中で作成したAu-Al-La 1/1近似結晶の多結晶試料に対して、上記のSEMを用いた組織観察およびエネルギー分散型X線分光法(EDS)による組成分析を行った。
結果と考察 / Results and Discussion
Tsai型クラスターは図1に示すように(a)-(e)までのクラスターがマトリョーシカのように重なっている多重殻クラスター構造をもつ。Au-Al-La
1/1近似結晶は図1 (f)のように多重殻クラスターがbcc充填した空間群を有する体心立方晶の結晶である。また図1 (g)に示す準結晶と同じ局所構造をもつ結晶という意味で近似結晶と呼ばれている。Au-Al-La 1/1近似結晶の多結晶試料に含まれる相の組成を同定するためにSEM-EDS測定により表面組成の点分析を行った。図2にSEM写真とEDSのマッピングで元素分析した結果を示す。広く均一な領域Aと点在する領域Bがあることがわかった。それぞれの領域について組成分析した結果をみると、領域AではAu-Al-La 1/1近似結晶に対応する組成が得られ、一方で領域BはTsai型の準結晶・近似結晶以外の相であることがわかった。Au-Al-La 1/1近似結晶の試料は希土類のLaを13.4%程度含む相であることがわかった。Laの含有量はそれぞれAuの正4面体が中心に位置するAAL(I)は14%程度、希土類La原子が中心に位置するAAL(II) は16%程度であることから、Au-Al-La 1/1近似結晶のクラスター構造はAuの正4面体が中心に位置するAAL(I)に対応することがAu-Ge-Yb
1/1近似結晶の過去の実験結果から推測される。上記のクラスター中心の構造の違いは、粉末X線回折の実験結果と格子定数の再現することがわかった。これらの結果から超伝導を発現するAu-Al-La 1/1近似結晶はAuの正4面体が中心に位置するAAL(I)の構造をもつことを明らかにした。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1. Tsai型の多重殻クラスターと近似結晶の結晶構造, (a1)Auの正4面体が中心に位置するAAL(I)(a2)希土類La原子が中心に位置するAAL(II)(b)第2殻の正12面体(c)第3殻の希土類La原子の正20面体(d)第4殻の20・12面体(e)第5殻の菱形30面体 (f)1/1近似結晶(g)準結晶
図2. Au-Al-La 1/1近似結晶の(a)SEM写真と(b)EDSのマッピングでAu-Al-La 1/1近似結晶を元素分析した図と分析結果
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
なし。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 出口和彦,横尾恭真,谷口博基, 第29回準結晶研究会, 2025年1月22日.
- 横尾恭真, 桑野太郎, 谷口博基, 出口和彦, 日本物理学会第79回年次大会, 2024年9月17日.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件