利用報告書 / User's Reports

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【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.04.22】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

24UT1017

利用課題名 / Title

製造誤差が偏光分離メタレンズの性能に与える影響

利用した実施機関 / Support Institute

東京大学 / Tokyo Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

電子線リソグラフィ, エッチング, 形状観察, メタサーフェス, メタレンズ, 偏光,光デバイス/ Optical Device,電子線リソグラフィ/ EB lithography,電子顕微鏡/ Electronic microscope,膜加工・エッチング/ Film processing/etching


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

佐藤 匠真

所属名 / Affiliation

東京農工大学工学部機械システム工学科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

羽田 充利,岩見 健太郎

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

UT-503:超高速大面積電子線描画装置
UT-603:汎用高品位ICPエッチング装置
UT-604:高速シリコン深掘りエッチング装置
UT-855:高精細電子顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

メタサーフェスの一種であるメタレンズの製作を行い,製造誤差や熱処理の光学性能への影響を調査した.本研究で製作したメタレンズは,Fig. 1に示すような無偏光の光を入射した際に,直線偏光のx偏光とy偏光にそれぞれ分離して,異なる点に集光する偏光分離メタレンズである(Fig.1を参照).このメタレンズは,ガラス基板上にアモルファスシリコンのサブ波長構造の異なる幅の柱を多数配列することで構成される.ナノ柱の配列構造を描画し,エッチングにより構造を製作するためARIMの装置を利用した.

実験 / Experimental

表面にアモルファスシリコンをスパッタリング成膜したガラス基板に対して,サブ波長の柱構造を描画した.描画においてレジスト材としてポジ型のEBレジストZEP-520A-7を用いた.そして超高速大面積電子線描画装置(F7000S-VD2)を用いて描画を行った.F7000Sの内蔵ステンシル(CP)を用いてナノスケールの四角形パターンを短時間で描画することに成功した.描画後に現像,リフトオフプロセスを行い,汎用高品位ICPエッチング装置(NE-550),または高速シリコン深堀エッチング装置(MUC-21 ASE-Pegasus)を用いてアモルファスシリコン膜のエッチングを行い,誘電体の柱構造を製作した.最後に柱形状の観察を高精細電子顕微鏡(Regulus 8230)を用いて行った.

結果と考察 / Results and Discussion

製造工程における条件出しのために製作した偏光分離メタレンズをFig. 2に示す.
サンプル1は汎用高品位ICPエッチング装置(NE-550)で製作した中央がくびれた構造,サンプル2は根元が太く先が細くなったテーパ構造,サンプル3は設計に近く垂直性が高い矩形構造となった.
これらを用いて光学性能への柱形状による影響を調査した.それぞれの光学性能の結果をFig. 3に示す.
偏光消光比(PER)は直線偏光がどれだけ完全に分離しているかを表す指標であり,サンプル1からサンプル3にかけて徐々に上昇しており,最大で18dB程度の差が生じた.FWHMは半値全幅のことを示しており,焦点スポットにおける光強度を波長ごとにグラフ化し,そのなかで最大の光強度の半分の値となるグラフの幅の広さを示している.サンプル間で差が生じなかったことから製造誤差は位相の相対的な分布に与える影響が小さく,回折限界性能を低下させないと考えられる.また理論値と比較し,実験値では大きな値が生じた.回折効率はメタレンズ透過後の光量からどの程度焦点に集光するかを示した指標である.これはサンプル3が圧倒的に高い値を示し,他サンプルに比べて50%以上高い値を示した.このことから回折効率は柱の矩形形状と垂直性が重要であることが分かった.今後は条件出しで求められた条件のさらなる改善により,光学性能の向上を目指す.

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig. 1 本研究で製作したメタレンズ



Fig. 2 製造工程における条件出しのために製作した偏光分離メタレンズ。(a) Sample1



Fig. 2 製造工程における条件出しのために製作した偏光分離メタレンズ。(b) Sample2



Fig. 2 製造工程における条件出しのために製作した偏光分離メタレンズ。c) Sample3



Fig. 3 光学性能への柱形状による影響を調査した光学性能の 結果。(a) PER



Fig. 3 光学性能への柱形状による影響を調査した光学性能の 結果。(b) FWHM



FIg. 3 光学性能への柱形状による影響を調査した光学性能の 結果。(c) 回折効率


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

超高速大面積電子線描画装置,電子顕微鏡の利用にあたって細やかにサポートしてくださったARIMスタッフの方々に深く感謝申し上げます.


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 佐藤匠真,羽田充利,吉田健治,岩見健太郎*,「製造誤差が偏光分離メタレンズの性能に与える影響」,第 15 回マイクロ・ナノ工学シンポジウム(仙台国際センター), 2024 年 11 月 25 日
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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