利用報告書 / User's Reports

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【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.04.14】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

24UT1014

利用課題名 / Title

近接場光精密研磨

利用した実施機関 / Support Institute

東京大学 / Tokyo Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

近接場光、HDD用磁気ヘッド、膜加工・エッチング/ Film processing/etching、オージェ電子分光,膜加工・エッチング/ Film processing/etching,電子顕微鏡/ Electronic microscope,走査プローブ顕微鏡/ Scanning probe microscope,電子分光/ Electron spectroscopy,光導波路/ Optical waveguide,MEMS/NEMSデバイス/ MEMS/NEMS device,フォトニクスデバイス/ Nanophotonics device,エレクトロデバイス/ Electronic device,光デバイス/ Optical Device


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

杉浦 聡

所属名 / Affiliation

株式会社ナノフォトニックテクノロジーズ

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

橋本 和信

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

水島 彩子,太田 悦子

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

UT-603:汎用高品位ICPエッチング装置
UT-800:クリーンドラフト潤沢超純水付
UT-854:オージェ分光分析装置
UT-858:電子顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

 熱アシスト高密度ハードディスク(熱アシスト磁気記録 Heat Assisted Magnetic Recording、略称:HAMR)に用いる磁気ヘッドの磁気記録媒体に接する面の平滑度は、サブナノメートルの平滑度にまで高める必要がある。近接場光を用いて半導体や金属の表面をサブナノメートル以下の平滑度に光研磨する技術を、この磁気ヘッドに適用するため、基礎的な検討を行っている。Clを含む雰囲気中でグリーンレーザーを照射して平滑化を図る近接場光精密研磨実験を、レーザー光強度、照射時間、Cl濃度、温度等をパラメータにして行い、光研磨が行える実験結果を得た。一方、面全体の平滑化が行えるパラメータの把握が進み平滑度が向上するにつれて、表面に付着した数ナノメートルのゴミの影響が無視できなくなってきた。そのため、ゴミの発生源の特定と低減方法の検討を近接場光精密研磨技術の開発と並行して行った。

実験 / Experimental

 東大ARIM微細加工部門が所有する汎用ICPエッチング装置内に設置した試験ピースに、装置の外からレーザー光を照射し、試験ピース表面の凸部に近接場光を発生させて研磨する『近接場光エッチング』を行った。エッチングレートや平滑度を決めるパラメーターとして、レーザー光波長、照射光スポット径、スポット形状、偏光、光強度の確認を行った。シリコン半導体基板を用いて、Clを含む雰囲気中で波長532nmのレーザーを照射して平滑化をはかる近接場光エッチングの実験結果を図1に示す。光照射実験の前後で研磨面の様子をレーザー顕微鏡および原子間力顕微鏡(AFM)で評価した。光照射前のRa=0.217nmが光照射後にはRa=0.183nmに向上した。
 シリコン基板の扱いの各工程における、ゴミの発生の様子をAFM装置で調べた。有機洗浄における、従来通りの扱いと、非常に注意深く扱った差を調べた結果を図2に示す。特に注意を払わずに扱ったものに比べ、用いるビーカーとピンセットを予め念入りに洗浄したものはゴミの付着が少ない。さらに、ゴミの組成分析を、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)、およびオージェ分光分析装置で行った。近接場光エッチングを行う前のシリコン基板のEDXによる分析結果を図3に示す。ゴミの主な成分はCである。ゴミが付着しているシリコン基板を、Clを用いて近接場光エッチングを行った後のオージェ分光分析の結果を図4に示す。同じくゴミの主成分はCである。ゴミのないシリコン基板をClを用いて近接場光エッチングを行っても残留Clは観測されないが、ゴミがあるとCとClが反応したものと思われる物質が表面に残る。

結果と考察 / Results and Discussion

 近接場光エッチングを行った試験ピースをAFMで測定したところ、いくつかの実験パラメータで、表面粗さ(Ra)等の改善が見られた。また、全体の平滑度も向上した。計測の再現性、近接場光エッチングの前後で同じ個所を測定する方法を確立し、より正確な評価を行えるように工夫することが重要であることが判明した。このことも含め、基礎的な実験の課題抽出とパラメーターの影響の評価を進めている。
 試験ピースをAFM装置、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)、オージェ分光分析装置で測定したところ、
・表面に付着したゴミは、主にCである。
・ゴミの発生源は、環境(シリコン半導体のケース)、洗浄(有機洗浄等)、取り扱い(ラテックスグローブ、ピンセット)である。
・Clでエッチング処理を行っても、ゴミがなければシリコン表面にはClは残留しない。
事が判明した。
具体的には、
・環境:シリコン基板ケースの使い回しによって、基板表面にゴミが付着する。
・洗浄:有機洗浄に用いるビーカーの使い回しやビーカー自体の洗浄不足による汚染が発生する。
・取り扱い:ピンセットの汚染、ラテックスグローブで直接基板に触れることによる汚染がある。ラテックスグローブやピンセットはクリーンルームで通常使われるものであるが、グローブ表面のCやピンセットに付着した有機物が基板を汚染すると考えられる。Cに限らず他の元素を含んだ治工具でサンプルを扱うと、それらが基板に付着すると予想される。ラテックスグローブを不用意に近づけたり、サンプル端面に触れたり、ピンセットの汚染に注意を払わず扱ったサンプルではCが表面に付着した。
 一方、エタノールで拭いた清浄なピンセットで注意深く扱ったサンプルでは、検出されるCは非常に少なかった。
 これらの汚染を回避するためには
・注意深く扱う
・汚染のない治工具を選ぶ
ことが必要であり、難易度は高いが可能と考える。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 シリコン基板の光研磨実験測定例
左:光研磨前の表面AFM像、  右:研磨後の表面AFM像



図2 有機洗浄によるゴミの発生
左:清浄な道具使用、  右:汚染がある道具使用



図3 EDX測定結果
Si:96.4%、  C:3.3%



図4 オージェの測定結果
Si2:69.0%、  O:16.8%、  C:13.6%


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

東京大学ARIM微細加工部門技術専門職員の水島彩子氏と学術専門職員の太田悦子氏に、多くの助言と協力を頂いたことに感謝します。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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