利用報告書 / User's Reports

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【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.05.15】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

24IT0056

利用課題名 / Title

プラズモン共振器による発光増強のカソードルミネセンス定量解析

利用した実施機関 / Support Institute

東京科学大学 / Science Tokyo

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

電子線リソグラフィ/ EB lithography,フォトニクス/ Photonics


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

斉藤 光

所属名 / Affiliation

九州大学 先導物質化学研究所

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

梅本高明

利用形態 / Support Type

(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

IT-038:電子ビーム露光装置
IT-006:走査型電子顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

光共振器による材料からの発光増強の定量化は、重要な基礎的課題である。カソードルミネッセンス (CL) 分光法は、光の回折限界をはるかに超えるナノメートルの空間分解能で材料の発光特性を分析できる可能性がある。しかし、励起波長の選択性がないため、CL ではエミッター共振器統合システムにおける複数の発光プロセスを区別して評価することが難しかった。特に、光共振器がエミッターの発光だけでなく励起も増強できる場合、励起方法に依存しない発光増強の定量化はさらに複雑になる。本研究では、CL の励起効率に敏感な Hanbury Brown-Twiss (HBT) 干渉計を応用することで、この問題を解決できるか検討した。

実験 / Experimental

プラズモン共振器アレイを電子線リソグラフィーにより作製した。電子線リソグラフィーは、電子ビーム露光装置を用いて実施した。その際、走査型電子顕微鏡などによる観察により露光条件を最適化した。CsPbBr3/Cs4PbBr6 複合体(複合ペロブスカイト)粉末を合成し、熱蒸着によってプラズモン共振器アレイ上に堆積し、エミッター共振器統合系とした。この試料からCLスペクトルを取得したところ、共振器がない場合と比較して、共振器がある場合に複合ペロブスカイトからの発光強度が1.8倍になると評価された。しかしながら、この発光ピークには電子線によるプラズモン共鳴の直接励起の寄与が含まれている可能性があり、複合ペロブスカイトからの発光をより選択的に評価できる手法が必要であった。そこで、HBT-CLによる評価を試みた。

結果と考察 / Results and Discussion

図に示すように、HBT-CL計測における単位時間あたりの同時計数が大幅に増加しており、遅延時間(Delay)にわたって平均すると 4.1 倍の増加であった。共振器と組み合わせた試料では、電子線による直接励起されたプラズモン発光が同時計数のわずかな増加に寄与する可能性がある。そこで、複合ペロブスカイトからの発光(波長520 nm)を避けるようにカットオフ波長550 nmのロングパスフィルターを使用し、長波長側の 直接励起プラズモン発光のみで同時計数を評価してみると、観測された同時計数の増加にほとんど寄与していないことがわかった(図中の挿入図)。したがって、複合ペロブスカイトからのCLの増強は、この単位時間の同時計数によって、プラズモン直接励起の影響を受けることなく、評価できることが確かめられた。この結果は、同時計数では、電子遷移を伴うインコヒーレントCLが強調される傾向があり、直接励起プラズモン発光のようなコヒーレントCLによる同時計数イベントは生じにくいことを示唆している。この傾向は、CLにおけるコヒーレント発光とインコヒーレント発光の光子統計の違いに関する最近提案された理論によって説明できるかもしれない[1]。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


複合ペロブスカイト膜(青)および共振器アレイと統合した構造(赤)に対する HBT-CL 計測。(左) 1 秒あたりの同時計数と、指数関数トレースによるフィッティング。(左上挿入図) -10 ns から 10 ns までのより広い時間範囲で同じデータを示したもの。(右上挿入図) 550 nm ロングパス フィルターを通して取得した1 秒あたりの同時計数。(右)二次の自己相関係数に変換したもの。


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

[1]Yanagimoto, S.; Yamamoto, N.; Yuge, T.; Sannomiya, T.; Akiba, K. Unveiling the Nature of Cathodoluminescence from Photon Statistics. Communications Physics 8(1), 56 (2025).


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. Tomoyasu Fujimaru, Hiromu Tanaka, Masato Inamata, Midori Ikeuchi, Hidehiro Yamashita, Hiroya Miyazaki, Takashi Gondo, Satoshi Hata, Mitsuhiro Murayama and Hikaru Saito, Light Emission Enhancement on Nanostructured Surfaces Quantitatively Evaluated by Cathodoluminescence Coincidence Counting, ACS Photonics (in submission)
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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