【公開日:2025.07.02】【最終更新日:2025.05.12】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23KT1258
利用課題名 / Title
ナノ・ミクロンスケール金属の疲労現象の解明
利用した実施機関 / Support Institute
京都大学 / Kyoto Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
ナノ,ミクロン,負荷デバイス,疲労,リソグラフィ/ Lithography,膜加工・エッチング/ Film processing/etching,光リソグラフィ/ Photolithgraphy
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
澄川 貴志
所属名 / Affiliation
京都大学 大学院エネルギー科学研究科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
石坂大和,加藤雅大
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術相談/Technical Consultation
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
KT-210:ドライエッチング装置
KT-103:レーザー直接描画装置
KT-155:両面マスクアライナー
KT-259:深堀りドライエッチング装置(2)
KT-119:両面マスク露光&ボンドアライメント装置
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
ナノスケール金属の疲労試験の実施を目的として,疲労試験機能を有するMEMSチップの作製を行った
実験 / Experimental
作製するMEMSチップの形状を図1に示す.図1(a)はMEMSチップの全体図,図1(b)は可動部の拡大図である.可動部は,片持ち真直はり形状の2つの可動電極と駆動用固定電極から成る.駆動電極に電圧を印加することによって,2つのはりを動かす.TEMでの観察を可能とするため,はりの先端周辺には貫通孔を設ける.可動部の周囲には,TEMホルダーのプローブと接続し電圧を印加するための電極パッドや配線を配置する.配線形状の周囲を太さ10μmのトレンチ(溝)で囲むことによって周囲から電気的に絶縁されている.また,プローブと電極パッドとの電気接触が良好となるように,電極パット部にはAlを蒸着する.作製には,主としてフォトリソグラフィ技術およびDRIE技術を用いた.デバイス層厚さ80 μm,BOX層厚さ 0.5 μm,ハンドル層厚さ300 μmのSOIウエハの表面酸化層を除去および洗浄した後,ハンドル層面にCrを,デバイス層面にAlを蒸着する.各面の上からポジ型フォトレジストを塗布し,作製したフォトマスクを使用して露光および現像を行った.露出したAlおよびCrを,各種エッチング液を用いてエッチングし,Al電極および裏面エッチング用Crマスクパターンを作製した.表面に再度レジストを塗布し,露光および現像によってデバイス層エッチングパターンを作製した.表面からDRIEを施し,デバイス層を加工した後,リフトオフによって、はり先端部のみに試験対象であるAuをスパッタした.裏面からのDRIEによって貫通穴を作製した後,BHFによるウェットエッチングおよびHFによるドライエッチングによってBOX層を除去し,可動部を基板から切り離した.
主に利用したリソグラフィ装置:レーザー直接描画装置(KT-103)、両面マスクアライナー(KT-155)、両面マスク露光&ボンドアライメント装置(KT-119)
結果と考察 / Results and Discussion
図2に,作製したMEMSチップの光学顕微鏡観察像を示す.作製したチップの中では,図2のようなはりへの損傷がなく,はりの先端にAuがスパッタされたものが確認された一方で,スパッタ後のプロセスにおいてAuが剥離してしまったものや,反対に本来Auが取り除かれるべき箇所にAuが付着してしまっているものも観察された.今回の作製において,はりの先端のAuが剥離してしまったのは,レジストを剥離する過程で,はりの先端のAuも同時に剥離してしまったためだと考えられる.また,剥離液の浸透が十分でなかったことや,剥離したAuが基板に再付着してしまったことがAuの残留が生じた要因だと考えられる.
図3ははり先端のTEM観察像を示す.再付着したAuやコンタミネーションと思われる付着物が存在することが確認された.
図4はデバイス層DRIEパターンを転写したフォトレジスト観察像と,デバイス層DRIE終了後のウエハの観察像との比較を示す.デバイス層のDRIEにおいて,水平方向へのオーバーエッチングが生じ,はりが設計値よりも細くなってしまった.これは,レジストの現像前ベークおよび現像条件の影響だと考えられる.デバイス層加工パターンの現像時,意図しない部分に残留したレジストが観察されたため,追加で現像を行った.それにより,レジストパターンの中に厚みが十分でない領域が生まれ,DRIE中に基盤を保護するレジストが消失してしまい,オーバーエッチングが生じたと考えられる.現像不良が生じた根本的な理由としては,現像前ベークの温度条件の影響が考えられる.今回の製作において,現像前ベークを,加熱用のホットプレート上にアルミホイルを敷いて行っていたために温度が不安定となり,現像不良の原因となったと思われる.
今回の製作におけるプロセスの問題点は,①現像後ベークの温度不安定によって生じたオーバーエッチング,②試験対象であるAuの剥離および残留,の2点である.オーバーエッチングに関しては,先述の通り,現像不良が起こらないよう,安定した温度での現像前ベークを行うことで改善すると思われる.Auの剥離および残留は,レジストによるリフトオフではなく,貫通穴を有するSiマスクを用いたスパッタ手法へ変更しウェットプロセスを回避することで改善できると考えられる.
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1 作製したMEMSチップの形状
図2 作製したMEMSチップの光学顕微鏡観察像
図3 はり先端部のTEM観察像
図4 (a)デバイス層DRIEパターンを転写したフォトレジスト観察像と(b)デバイス層DRIE終了後のウエハ観察像
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
本研究は,JST CREST JPMJCR2092およびJSPS科研費JP22K18754の支援を受けたものです.
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件