利用報告書 / User's Reports

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【公開日:2025.07.24】【最終更新日:2025.07.23】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22MS1082

利用課題名 / Title

電子供与基を有するチオールを配位させた非平面ポルフィリン鉄(III)錯体の磁気的性質

利用した実施機関 / Support Institute

自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials

キーワード / Keywords

ポルフィリン, 鉄錯体, カタラーゼ, チトクロームP450


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

池上 崇久

所属名 / Affiliation

島根大学総合理工学部物質化学科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators Excluding Supporters in the Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Supporters in the Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

MS-216:電子スピン共鳴(E500)
MS-218:SQUID(MPMS-7)
MS-219:SQUID(MPMS-XL7)


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

ポルフィリンは、安定な18π電子系の環状化合物であり、その環の中心に様々な金属を導入することができる。生体内に存在する酸化還元酵素は、ペルオキシダーゼ、カタラーゼ、チトクロームP-450などが知られており、その活性中心にはヘムと呼ばれるポルフィリンに鉄イオンが配位した錯体が存在している。ヒスチジンが配位したペルオキシダーゼの休止状態の研究についての研究は幅広く行われているが、チロシンやシステインがそれぞれ軸配位したカタラーゼやチトクロームP-450についての研究はあまり行われていない。本研究では、カタラーゼやチトクロームP-450の休止状態の物性を詳細に検討し、酸化還元反応開始のメカニズムを明らかにすることを目的とする。

実験 / Experimental

生体内でカタラーゼの鉄イオンはS=5/2の電子状態であり、実際に平面ポルフィリンにフェノールを配位させたところ、S=5/2の電子状態になることが分かった。そこで本研究では、meso位に4つのイソプロピル基を導入しさらに非平面化させたTiPrPH2の合成を行い、鉄イオンを中心金属として挿入した鉄(III)錯体TiPrPFeClを合成した。それらの錯体に、様々なフェノールを配位させたと[FeIII(TiPrP){O-2,4,6-(NO2)3C6H2}]を合成し、それらのX線結晶構造解析や1H NMRスペクトルやSQUID、ESRの測定を行い、非平面性と電子配置の関連性を明らかにすることを試みた。また、TiPrPFeClにベンゼンチオールを配位させた化合物を合成し、ESRスペクトル測定を行った。

結果と考察 / Results and Discussion

[FeIII(TiPrP){O-2,4,6-(NO2)3C6H2}]では、1H NMRスペクトル測定の結果から、高磁場側へとピロール位のシグナルがシフトすることが分かった。これはS=5/2からS=3/2へのスピンクロスオーバーが起こっていると考えられる。さらに、SQUIDを用いた固体状態の磁化率測定を行ったところ、同様に、S=5/2からS=3/2へのスピンクロスオーバーが起きていることが分かった。エックス線結晶構造解析の結果も併せてこの現象について考察すると、ポルフィリン環が歪み、また配位力が弱い軸配位子では、S=3/2の電子状態になりやすく、生体内のカタラーゼの休止状態において、S=3/2の電子状態の存在の可能性が示された。 また、TiPrPFeClにペンタフルオロベンゼンチオールを配位させたところ、極低温下でのESRスペクトル測定の結果から、鉄(III)錯体であり、さらに、S=1/2であることが分かった。これは、ヘムタンパク質であるチトクロームP-450の休止状態のスピン状態の結果と一致した。しかしながら、この錯体の配位状況などは、現時点で不明な点が多いため、今後もこの錯体についての検討を行っていく。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 下野 莉環, 神谷 優奈, 池上 崇久, フェノール類が軸配位した非平面ポルフィリン鉄(Ⅲ)錯体の磁気的性質, 2022年日本化学会中国四国支部大会 広島大会, 2PB-54, 広島 (2022年11月).
  2. 下野 莉環, 神谷 優奈, 森 重樹, 池上 崇久, トリニトロフェノールを軸位に有する非平面ポルフィリン鉄(Ⅲ)錯体の磁気物性, 日本化学会第103春季年会, K604-4pm-06, 千葉(2023年3月)
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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