【公開日:2025.06.16】【最終更新日:2025.06.16】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22NM0084
利用課題名 / Title
耐原子状酸素性材料の創生に向けたPOSS薄膜のX線回折評価
利用した実施機関 / Support Institute
物質・材料研究機構 / NIMS
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
X線回折/X-ray diffraction
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
後藤 亜希
所属名 / Affiliation
宇宙航空研究開発機構
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
行松和輝
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
廣戸孝信
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
低地球軌道(LEO)に存在する原子状酸素(AO)は、宇宙機とその周回速度である 8 km/s を相対速度として衝突し、熱制御材など高分子材料の表面を酸化および浸食する。シルセスキオキサン(POSS、RSiO1/2)は、AOとの反応でAOに対する浸食を受けづらい酸化(シリカ)膜を形成するため、耐AO性材料の候補として知られている[1,2]。これまでに開発されたPOSSコーティングは、AO 環境への曝露により安定したシリカ膜を形成したものの、物理損傷(クラック)も同時に生じてしまうことが分かっている[3]。POSSは側鎖としてさまざまな分子を修飾できるため、これを最適化することにより物理損傷の生じにくい耐AO性材料を創生できる可能性がある。 本研究では、POSSの耐AO性の向上(物理損傷の低減)に向けて、「フルオロアルキル構造」の導入に着目した。フルオロアルキル構造を主骨格とするフッ素系樹脂(FEP など)、炭化水素系樹脂と比べAOに対する浸食率が1桁程度低いことが知られている[4]。したがって、POSSにフルオロアルキル鎖を導入することで、AOとの相互作用を抑制できる可能性が高い。そこで本研究は、合成したPOSSの空間配置と結晶性を明らかにすることを目的とし、フルオロPOSS、アルキルPOSSをX線回折(XRD)法を用いて評価した。
実験 / Experimental
合成したフルオロアルキルPOSS(R=-(CH2)2CF3 (FP-POSS)、-(CH2)2(CF2)3CH3(FH-POSS))およびアルキルPOSS(R=-(CH2)7CH3(Octyl-POSS))をそれぞれSi基板に蒸着し、薄膜測定(grazing incidence、GI)法を用いXRD測定を行った(SmartLab、リガク、CuKα)。 面外(out-of-plane)測定とし、X線の入射角は0.2 degとした。
結果と考察 / Results and Discussion
フルオロアルキル(FP-、FH-)POSSおよびアルキル(Octyl-)POSSのXRDプロファイルを図1に示す。いずれのサンプルも回折ピークが見られ、結晶性を有することが分かった。FP-、FH-、Octyl-POSSの最強線のピーク位置はそれぞれ7.9、5.8、3.6 degとなり、out-of-plane方向のPOSS骨格間の距離はこの順に大きくなることが示唆された。特にFP-と FH-POSSでは、FH-POSSの方が鎖長が長いため、そのことがPOSS骨格間の距離に影響したと考えられる。また、結晶性と相関がある最強線のピーク幅(FWHM)は、それぞれ0.33(FP)、0.38(FH)、0.32 deg(Octyl)となり、側鎖の化学構造によらず同程度であることが分かった。今後これらのサンプルにAOを照射し、質量損失、シリカ形成厚、物理損傷について、XRDで得られたPOSS骨格間の距離や結晶性との相関を調べることで、耐AO性を向上させるための POSS 分子設計を明らかにしていく。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1. FP-、FH-、Octyl-POSSサンプルのXRDプロファイル
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
謝辞本研究の一部は、JSPS 科研費 JP21K04494 の助成を受けたものです。参考文献[1] Minton, T. K., et al. ACS Appl. Mater. Interfaces 2012, 4, 492-502.[2] Kimoto, Y., et al. J. Space Rockets 2016, 53, 1028-1034.[3] Goto, A., et al. CEAS Space J. 2021, 13, 415-432.[4] de Groh, K. K., et al. NASA Technical Memorandum 2019-219982, 2019.
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件