利用報告書 / User's Reports

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【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.04.25】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

24NI0901

利用課題名 / Title

N2O触媒的還元を可能にするCu錯体の開発

利用した実施機関 / Support Institute

名古屋工業大学 / Nagoya Tech.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion

キーワード / Keywords

核磁気共鳴/ Nuclear magnetic resonance,電極材料/ Electrode material,高品質プロセス材料/技術/ High quality process materials/technique,核磁気共鳴/ Nuclear magnetic resonance


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

馬場 風花

所属名 / Affiliation

名古屋工業大学大学院工学専攻生命・物質工学プログラム

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

増田秀樹,猪股智彦,小澤智宏,和佐田祐子

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

小澤智宏

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

NI-009:電子スピン共鳴装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

N2Oは窒素循環の過程で生成する窒素酸化物の一種で温室効果がCO2の300倍であることが知られており、今後その大気中濃度上昇が問題になるとされている。自然界では、脱窒細菌の亜酸化窒素分解酵素 (N2OR)によって、代謝経路の最終段階でN2OはN2へ分解され無害化される。その活性状態ではCu(I)の酸化状態をとり、N2Oは2つのCuに曲がった形で架橋配位していることが示唆されている。この配位N2Oのπ*軌道に2電子が入ることでNO結合が切断され、近隣のヒスチジンや溶媒から1つまたは複数のプロトンを受け取ることによって反応が促進されると推測されている。この触媒作用機構はN2O分子の分解触媒を設計・開発する上で重要であるが、現在ほとんど知られていない。本研究ではN2O分解酵素の反応機構の解明を目的として類似のCu錯体を合成し、そのN2O分解反応について検討している。これまでに環状型トリアザシクロノナン配位子を用いてCu錯体を合成し、その還元状態における電子状態並びに反応性について検討を行った。本装置では電子状態の検討を行うための基礎データを収集するために、電子スピン共鳴装置を用いて測定を行った。

実験 / Experimental

配位子は1,4,7-triazacyclononane・3HCl(tacn・3HCl)とし、既報の方法に従って合成を行った。tacn・3HClをメタノールに溶解して溶液状態にした。別で10 mLメスフラスコを用いて1.0 M KOHエタノール溶液および、配位子と等量の CuCl2を溶解したエタノール溶液をそれぞれ調製した。50 mLナスフラスコの懸濁溶液に、1.0 M KOH溶液 0.6 mL、0.05 M CuCl2溶液 4.2 mLを順に滴下した後、室温で24時間撹拌すると青緑色懸濁液となった。これを吸引ろ過すると水色固体が得られ、アセトニトリルと混合して脱塩処理を行った後にアセトンで洗浄することで青色固体が得られた。この固体は元素分析から、tacnと2つの塩化物イオンが配位したCu(II)錯体であることがわかった。この固体をDMFに溶解しN2Oとの反応の前後で電子スピン共鳴(NI-009)を測定した。

結果と考察 / Results and Discussion

合成した[CuCl2(tacn)]錯体は5配位構造(一昨年度の単結晶X線構造解析による成果)であり、既報の分光学的データから予想された構造とほぼ一致したことから、目的物の合成が確認された。この錯体のDMF溶液を調製し、還元剤としてコバルトセンを用いて1電子還元を行った(Cu(I) 種の生成)。溶液はその後、プロトン源として水を入れてN2Oガスを吹き込んで反応を定量的に進行させた。反応後に溶液は、Cu錯体は2+の電荷状態に戻っていると考えられる吸収スペクトルを示したが、出発の[CuCl2(tacn)]錯体とは異なるスペクトルであったため、化学的な還元を用いた反応では、異なる化学種に変化することが示唆された。そこで電子スピン共鳴装置を用いて化学種の同定を試みた。測定結果から、2種類のCu(II)種が存在していることが示唆された(図1参照)。それぞれ[CuCl2(tacn)]錯体のデータ(既報)と比較して、パラメータがわずかに異なっており、配位している塩化物イオンの交換、あるいは構造の歪みが示唆される結果が得られた。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 反応後のESRスペクトル


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 馬場 風花・和佐田 祐子・増田 秀樹・猪股 智彦・小澤 智宏、”N3型環状配位子を用いたCu(II)錯体によるN2O還元反応”,日本化学会春季年会(関西大学), 口頭発表, 2025年3月28日
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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