【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.05.02】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
24SH0021
利用課題名 / Title
マントル・地殻における物質循環の解明のためのFe3+定量手法の改良
利用した実施機関 / Support Institute
信州大学 / Shinshu Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
地球内部物質循環,かんらん石,鉄の価数
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
濱田 麻希
所属名 / Affiliation
金沢大学 理工研究域
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
江島輝美,鎌田実
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
(Mg,Fe2+)2SiO4の理想組成を持つかんらん石は、地球の地殻、上部マントルおよび隕石中を構成する主要鉱物である。理想的には鉄はFe2+のみがかんらん石結晶構造中に存在するが、近年の研究により構造中にOH-として取り込むことで微量のFe3+が生じるため、OH及びFe3+を含むかんらん石が地球内部へH+をもたらすことで,マントルにおける流体(H2O)の存在の可能性が示された(Hwang et al. 2008;Arai et al. 2021)。このため、多様な産地・種類の岩石におけるかんらん石中のFe3+含有量について調べることは、地球内部における流体の循環システムを明らかにする上で非常に重要である。しかし、これまでに鉱物中のFe3+を検出する方法はいくつか試みられているが(Kelley and Cottrell 2009;Gaborieau et al. 2020など)、装置の普及性や定量精度の問題がありまだ発展途上である。このため、かんらん石中のFe3+の重要性は認識されているものの、地球内部の物質循環の評価に用いるのに十分なデータの蓄積が行われていない。そこで、簡便で広く普及している電子線微小部分分析装置を用いた手法(EPMA法)を改良し、だれでも簡単にかんらん石中のFe3+含有量を高精密に求められるよう検量線を作成するために純度が高く,Fe3+含有量が既知のかんらん石の標準試料の合成を行う。またそれに加えて解析のためのプログラム改良のための造岩鉱物のL線強度データ取得を行う。
実験 / Experimental
用いた装置は信州大学工学部に設置されている、電解放出型電子プローブマイクロアナライザ―(JXA-iHP200F Hyper Probe,JEOL)である。
標準試料として作成した合成かんらん石は、幅500マイクロメートルほどであり、種結晶に近い黄褐色で比較的透明度が高く均質な部分と、その上に成長した透明度が悪い不均質な部分で構成されている。測定条件は加速電圧15 kV,照射電流20 nA,ビーム径1
micro meterである。
プログラム改良のためにの測定は,加速電圧15 kV,照射電流20
nA,ビーム径2-10 micro meterで実施した。用いた分光器はTAP、TAPLおよびTAPHで、分光器のL値が186 mmから193 mmまでの範囲を,ステップ間隔0.05 mm,1ステップ当たり測定時間10秒で測定した。測定に用いた天然試料はファヤライト(産地不明,Fa-UK),フォルステライト(パキスタン,Fo-Ps),ライフ―ナイトを含むファヤライト(静岡県,Lai-AtおよびFa-At),かんらん石(島根県,Ol-Oki)である。プログラム改良のためにはこれらに加え天然の標準試料である単斜輝石(Cpx KH-1,Cpx 69-27)およびパイロープ(Prp)の測定も行った。
結果と考察 / Results and Discussion
<標準試料合成かんらん石>
完成した結晶は種結晶付近では比較的均質であり、化学組成は(Mg1.794Fe2+0.206) S2.000SiO4(Fo89.7Fa10.3)であった。しかしその上部に形成した結晶はかなり不均質であり、鉄に富む部分は(Mg1.638Fe2+0.362)S2.000SiO4,(Fo81.9Fa18.1)であった。この不均質な結晶内には球状~チューブ状に気泡が混入しており、気泡に沿って鉄に富む結晶が成長していることが明らかとなった。育成に用いる原料棒(f = 8 mm)が太すぎたため、成長中に加熱をした際に棒の中心部まで均質に加熱されず結晶育成に必要な溶融帯の形成が不十分であった様子が見られた。そのために溶融帯内に気泡が混入し、化学組成が不均質になったと考えられる。今後原料棒の太さの調整等を行い、均質なカンラン石を作成する予定である。
<プログラム改良のためのデータセット>
L線のスペクトルから強度比を求めるプログラムは、木村・赤坂(1999)(旧プログラム)により作成されていたが、これは32bit版のパソコンにしか対応してなかった。このため、新たにpythonを用いて、旧プログラムと同様にL線のスペクトルから強度比を求めることができるプログラムを作成した。その結果、62bit版に対応した新プログラムでも旧プログラムと同じ解析結果を得ることができた。また、新プログラムでは複数のスペクトルの解析を可能にしたため、従来の解析よりもはるかに速い速度で解析が可能となった。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
謝辞
本研究は公益財団法人住友財団の基礎科学研究助成を受けたものです。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件