利用報告書 / User's Reports

  • 印刷する

【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.05.10】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

24SH0016

利用課題名 / Title

摩擦撹拌プロセスによるAl基複合材の摩耗特性の改善

利用した実施機関 / Support Institute

信州大学 / Shinshu Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

コンポジット材料/ Composite material


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

尾和  智信

所属名 / Affiliation

長野県工科短期大学校 機械システム学科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

清水保雄

利用形態 / Support Type

(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

SH-012:高分解能3次元X線顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

Al合金は比強度,耐食性,経済性などに優れる材料であるが,鉄鋼材料に比べ耐摩耗性に劣る. 摩擦攪拌プロセス(FSP)を,接合を目的とする視点のみならず部材表面に比較的厚い改質層を生成できる技術として捉え直すと,その価値は大きい.本研究はこのFSPを適用し,固体潤滑材として汎用されるGraphiteをAl合金に添加・複合化させ,摩耗特性の向上を試みた.FSP複合材の組織,乾式すべり摩耗特性に及ぼす効果等を検討した.

実験 / Experimental

基材にはA5083アルミニウム合金を,そして添加材には市販のGraphite粉体(平均粒径60 μm)を用いた. A5083の切削屑を2mass%の粉砕助剤ステアリン酸と共に窒素ガス封入容器装填し,3軸方向加振型ボールミル(トポロジックシステム(株)製)で800rpm-5hrの粉砕処理後,80μm以下のふるい分級粉を350℃で真空焼鈍し基材粉末とした.これに対し,Graphite粉体を20vol%の割合で添加し,3Dボールミル((株)ナガオシステム製3DB-80)で200rpm-10min処理し混合粉体を完成した.A5083基材粉末もしくは混合粉末を金型に詰め,加熱温度200℃,加圧応力140 MPa,1hr保持を経て固め,最終的に3.5×50×1.6mmの板状成形体に仕上げた.
Fig.1の模式図に示すように,上記の板状成形体を一対の基材間の中央部にはめ込みFSPに供した.FSP条件は,工具プローブ:φ4, 高さ3.5mm, 偏芯量1mm, M4並目ねじ付, 直径18 mm, SKD61 製を用い,長手方向90 mm,主軸回転数880 rpm,送り速度25 mm/min,前傾角3°,負荷荷重3 kN とした.
組織観察には,光学顕微鏡,FE-SEM(日本電子㈱製JSM-7000F)およびX線顕微鏡(Zeiss製Xradia 620 Versa)による非破壊透過観察等を行った.摩耗特性試験は自家製のピンオンディスク型摩耗試験機を用い,φ200x10mmの焼入れSUJ2円板を相手材とし,φ10x30mm軟鋼円柱先端凹穴部に嵌合接合したφ8x4mm丸棒試験片を垂直負荷50Nで押し付け,乾式,摩擦速度0.25~2.5m/min,摩擦距離300及び1500mの条件で摩耗量と摩擦係数を測定した.

結果と考察 / Results and Discussion

Fig.2にFSP処理されたA5083-20vol% Graphite複合材断面光学顕微鏡組織と同中央部付近で測定した微少Vickers硬度の分布を示した.添加したGraphite粉末はFSP領域と基材との境界付近に若干偏析が認められたものの,FSP中央部は比較的均一に分散した.得られたFSP攪拌部の硬さは220~280 HVに達し,基材のそれの80HVより増した.これはFSP過程でGraphiteが素地と反応して炭化物相を形成しそれが分散された強化機構に拠るものではなく,基材の結晶粒の微細化に原因するものと考えれる.
Table 1に乾式ピンオンディスク摩耗試験の結果をまとめた. 試験片の摩耗高さは,摩擦距離が長くなると当然のことながら大きくなり,摩耗量も同様に増えて然るべきであるが,基材に関する一部結果に限り,試料端部に摩耗粉がバリとなって発生しこれが脱落せず付着したため、特異な値となった.摩擦速度が大きくなると摩耗量が増える傾向は肯定された.このことは,摩擦速度の上昇により発生する摩擦熱が増し摺動面温度が上昇して摩耗環境が過酷になるためである.Graphite添加FSP複合材では摩耗量は基材のそれよりも減少する傾向は認められた.その理由は硬度が増大し耐摩耗性が向上することに由来すると考えれれる.一方,摩擦係数に関しては,基材における結果と比較するとき,一般に固体潤滑作用があるとされるGraphiteを添加した複合材であるので改善効果が現れると期待したが,そのような明瞭な効果は認められなかった.そのことの原因は不明である。それの究明と併せ,耐摩耗性を改善する目的を達成するには,Graphiteに絞らず,より硬質なAl2O3やSiC等を導入した複合材での効果を検討することが今後の課題と考える.

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig. 1 Schematic of fabrication process using friction stir processing (FSP).



Fig. 2 Cross sectional microstructure of 20vol% Graphite FSP composite and its Vickers hardness distribution.



Table 1 Results of pin on disk friction wear tests.


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

信州大学先鋭材料研究所 清水保雄名誉教授および共同研究者 貝梅正二氏には,研究結果や評価手法について的確な指摘を頂いた.記して感謝する.


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

印刷する
PAGE TOP
スマートフォン用ページで見る