利用報告書 / User's Reports

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【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.05.13】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

24OS0047

利用課題名 / Title

ワイドギャップ系薄膜材料の結晶性評価

利用した実施機関 / Support Institute

大阪大学 / Osaka Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials(副 / Sub)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed

キーワード / Keywords

センサ/ Sensor,電子顕微鏡/ Electronic microscope,電子回折/ Electron diffraction,エレクトロデバイス/ Electronic device,集束イオンビーム/ Focused ion beam


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

坪内 信輝

所属名 / Affiliation

産業技術総合研究所

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術補助/Technical Assistance


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

OS-001:3MV超高圧電子顕微鏡
OS-009:200kV回折コントラスト電子顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

本課題では、様々なワイドギャップ系の炭素、窒素系薄膜材料(ダイヤモンド、アモルファスカーボン、SiC、GaN等)の広い意味での各種拡張欠陥類(1次元的な線欠陥、2次元的な面欠陥、3次元的な成長欠陥)の構造を、微視的スケールで詳細な構造を明らかにすることを目的としている。その際、マテリアル先端リサーチインフラ(ARIM)微細構造解析プラットフォーム実施機関である大阪大学超高圧電子顕微鏡センター内の電子顕微鏡及び各種試料調整のための周辺装置を有効活用させて頂いた。 本年度はワイドギャップ系半導体材料のひとつの単結晶ダイヤモンドに関する研究を行った。より具体的には、単結晶ダイヤモンド中に含まれる各種欠陥類の中で、プラズマ気相合成法によるホモエピタキシャル膜の結晶成長時に、その表面にしばしば見られるいわゆる成長欠陥の形態とその内部構造の解明に関する研究を行った。ホモエピタキシャルダイヤモンド表面に出現する成長欠陥には様々な種類があることが知られているが、本課題では、その中で異常成長粒子と呼ばれる成長欠陥を対象として、その内部構造の詳細を、当センター内の収束イオンビーム(FIB)加工装置で透過電子顕微鏡用の観察試料を作成し、観察することにより明らかにする研究を行った。

実験 / Experimental

加工・観察のための切り出し試料としては、正方形型の板状の単結晶ダイヤモンド片を用いた。マイクロ波プラズマ化学気相合成装置を用いて作成した気相合成ダイヤモンドエピタキシャル膜の成長方向に伸びる貫通転位列の数密度や転位構造を調べるために、本プラットフォームにおける透過電子顕微鏡(日立製H-800およびH-3000)の利用を検討した。観察用試料の作成については、同じく本プラットフォームにおけるFIB試料作成装置(大阪大学の日立製FB-2000)を用いた。その際、必要に応じてイオンポリッシング装置(Gatan製Model651)を用いることも視野に入れた検討を行った。FIB装置による観察用試料作成については、これ迄に得られた最適作製条件の知見を活用して行った。

結果と考察 / Results and Discussion

マイクロ波化学気相合成法により、高温高圧合成の板状人工単結晶ダイヤモンド基板上にダイヤモンド膜をホモエピタキシャル成長させた。成長中に発生し、表面に露出する成長欠陥の一種である、いわゆる異常成長粒子の内部構造の断面TEM観察を行った。異常成長粒子は、ピラミッド型成長欠陥上に見られる場合とそうではなく単独で見られる場合がある。本研究では、前者の内部構造を、中央部付近を上述のFIB試料作成装置で[110]結晶方位を長辺方向として切出し、断面TEM用の観察用試料の作成を行った。したがって[110]方向が電子線入射方向となる。 断面構造の観察から、この異常成長粒子の全体としての形態は、エピ膜と基板との界面を起点として発生し、その後エピ膜の成長とともに、[001]の成長方向に円錐状に広がった形状であることが分かった。この異常成長粒子とエピ膜を含む広い領域の回折図形には、110入射に対応するダイヤモンド単結晶の回折スポットに加えて、強度が弱い複数のサテライトスポットが観察された。これらの回折図形で結像した暗視野像を観察すると、異常成長粒子内の比較的端の部分で白く光る像が得られた。さらに、電子線の入射方向を様々に変えて回折図形を観察した結果、この端部は、成長方向である[001]方向を軸として約50度回転した方向から電子線を入射させると、概ね110面相当の回折パターンとなった。このことは、この異常成長粒子の端部付近は依然として単結晶ではあるが、元の基板や周囲のホモエピ膜の結晶方位とは異なる方向を向いた単結晶ドメインとなっていることを示す。  さらに、別のサテライトスポットの暗視野像も観察したところ、中央部付近が明るく光った。同様に電子線の入射方向を変化させ回折図形を観察することで、異常成長粒子内部の中央部付近は、エピ成長界面に平行な方向が[112]、エピ膜の成長方向である[001]に対応する方向が[111]を向くような単結晶ドメインとなっていることが分かった。  以上の通り、ダイヤモンドエピ成長中に生成する異常成長粒子は、細かい単結晶粒の集合体である多結晶から構成されるようなものではなく、結晶方位が元の基板やエピ膜とは異なる、数個程度の複数の単結晶ドメインから構成されていることが分かった。このような異常成長粒子の内部構造に関して得られた知見を活用し、今後の高品質なダイヤモンドエピ膜成長技術の開発に繋げていく予定である。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

本研究は、大阪大学超高圧電子顕微鏡センターにおける「文部科学省マテリアル先端リサーチインフラ事業(大阪大学マテリアル先端リサーチインフラ設備供用拠点)」の支援を受けて実施されました。本研究を実施するに当たり、同センターの市川先生、安田先生、高木先生をはじめとする関連スタッフの方々に関連試料作製、装置取扱いから観察に至るまでご支援賜りました。ここに深謝致します。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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