【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.05.13】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
24OS0018
利用課題名 / Title
金属材料のTEM観察
利用した実施機関 / Support Institute
大阪大学 / Osaka Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
金属材料,電子顕微鏡/ Electronic microscope,イオンミリング/ Ion milling
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
大島 義文
所属名 / Affiliation
北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
国吉 洸矢
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
OS-001:3MV超高圧電子顕微鏡
OS-007:材料系電子顕微鏡用試料作製装置群
OS-009:200kV回折コントラスト電子顕微鏡
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
従来,TEM観察用の金属試料作製方法として電解研磨法が用いられてきた.しかし,観察対象となる材料によっては,電解研磨法法は化学的な手法であることから、試料の酸化や水素化物の生成などが問題となることがある.チタン材(Titanium)の場合、水素化物の析出相が生成すると、回折スポットの指数付けを誤ってしまう可能性がある.電解研磨法に関するその他の問題点として,適切な電解研磨条件を検討するのに時間を要すること,また、良好な試料作製には熟練を要することなどが挙げられる.本研究においては,TEM観察用の金属試料作製方法として、電解研磨法を用いず,物理的な手法である集束イオンビーム(Focused ion beam)法やイオンスライサによる研摩法を検討した.
集束イオンビームは,細く絞ったイオンビームを用いて半導体,金属,高分子材料などを加工する装置であり、特に半導体デバイスなどを透過型電子顕微鏡(Transmission electron microscope)で断面観察する時の試料作製によく用いられる。今回、チタン材のFIB加工を行った。しかし、薄膜すると、部分的に書けてしまうという問題があり(Fig. 1参照)、TEM観察で材料の組織構造を観察できるだけ薄い領域を広範囲に得ることが出来なかった。
実験 / Experimental
イオンスライサ(JEOL EM-09100IS, Fig. 2)を用いたTEM観察用試料の作製を検討した。イオンスライサは,予め決められた寸法に試料を切り出し(縦0.5 mm x 横2.5 mm x厚さ 0.1mm)、遮蔽ベルトを介して,この切り出した試料片の側面にブロードな広がったAr+イオンの角度を連続的に変化させながら照射することで、部分的に厚さを少しずつ薄くすることができる(Fig.3).Ar+イオンが照射した試料片中心部に穴が開くと,その穴の周辺部に広い領域で薄膜化されており,TEM観察が可能となる.今回,加速電圧8.0kv,Ar+イオンガンの傾斜角度を0°(ほぼ、試料片の側面垂直に)で2~3時間ほど削り出し、その後、傾斜角度を3.0°にしてイオン研摩を行うことでTEM観察に適した薄い領域を比較的広範囲に得ることが出来た(Fig. 4).難しい点は、試料片にイオン照射によって穴が開くかどうかの寸止めで照射を停止する点である。いったん穴が開くと、穴が急激に広がるため、せっかく得られた薄い領域が消失してしまうからである。本研究においては,市販品である日本製鉄株式会社製 工業用純チタン板を観察した.
結果と考察 / Results and Discussion
イオンスライサにより開けた穴の周辺部で,比較的均一に転位ループが分布していることを確認した(Fig. 5).これらの転位ループは,形状が類似していることから、観察試料作製時に導入されたアーティファクトではなく、本来、このチタン板に存在していた欠陥であると判断した。
転位ループは、長軸と短軸を有するアスペクト比がある形状である(Fig. 5).また、その長軸のサイズは, 500nmから2μmと似たようなサイズであった。でありこれは,転位ループの部分によって転位の種類(刃状転位,らせん転位)が異なるためと思われる.つまり,これらの転位は,プリズマティック転位ではなく,刃状転位の部分とらせん転位から構成していると考えられる
Fig. 6は、ほぼ<110>軸入射で得た明視野像と2波励起条件で得た暗視野像である。明視野像に、c軸とそれに垂直な底面の方位を示している。反射で得た暗視野像では、左下から右上に沿った転位線と右下から左上に沿った転位線を多数観察することが出来るが、一方、反射で得た暗視野像では、ほとんど見えない。ただし、左下から右上に沿った転位線の僅かなコントラストが残留している。このことから、これら両者の転位線のバーガーズベクトルが(a軸)であり、これは、a転位と同定できる。また、転位消滅条件であるで僅かな残留コントラストを示す、左下から右上に沿った転位線は、波状転位であり、右下から左上に沿った転位線は、らせん転位であると判断出来る。六方晶であるチタン結晶は、すべり系が複雑なため、転位線や転位ループを同定することが容易でない。うまく観察に適した結晶方位を持つ結晶粒を探し、どのような転位線や転位ループが存在するのか。さらには、転位や転位ループの原子分解能観察を行なうことで、より直接的に転位線や転位ループを同定するとともに、固溶原子の分布と転位芯や転位近傍の局所的な歪みを明らかにすることにより、固溶硬化のメカニズムを明らかにする。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig.1 TEM images of titanium material fabricated by FIB.
Fig.2 イオンスライサ(JEOL EM-09100IS)の外観
Fig. 3 イオンスライサによる試料作製
Fig. 4 イオンスライサにより作製した試料片のCCDカメラによるモニター(左側),穴の周辺部におけるTEM像(右側)
Fig.5 チタン板の暗視野像(a)低倍,(b)中倍
Fig. 6 (a)明視野像 入射,(b)暗視野像(c)暗視野像
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 国吉 洸矢, 市川 聡, 掛谷 尚史, 麻生 浩平, 神尾 浩史, 大島 義文、「結晶の強化機構解明に向けたTEM観察」にほんけんびきょうがっかい台67回シンポジウム、北海道大学、PM-25、2024年11月2日(土)~3日(日)
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件