【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.05.13】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
24MS0004
利用課題名 / Title
大規模量子化学計算による二次元層状物質のモアレポテンシャルの評価
利用した実施機関 / Support Institute
自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions
キーワード / Keywords
二次元物質,モアレ構造,静電ポテンシャル,原子薄膜/ Atomic thin film
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
内野 隆司
所属名 / Affiliation
神戸大学大学院理学研究科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
江原正博
利用形態 / Support Type
(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
グラフェン,六方晶窒化ホウ素,遷移金属ダイカルコゲナイドなどの二次元層状構造の回転積層構造がつくる長周期構造と,その構造に由来する新たな物性,電子状態に関する関心が高まっている[1]。このような長周期構造は,モアレ模様と呼ばれる特異な周期構造を形成する。モアレ長周期に由来するポテンシャル(モアレポテンシャル)は,これまでの結晶構造に由来する周期ポテンシャルとは本質的に異なることが示唆されている[2]。近年,申請者らは,このモアレポテンシャルを,高分解能透過型電子顕微鏡(HR-TEM)の回折像を逆フーリエ変換することで実空間上で観察できる可能性を見出した。この実験結果をさらに補強するためには,何らかの理論計算を行う必要がある。しかし,このモアレポテンシャルは,厳密な並進対称性を有していないため,逆格子空間のブロッホ関数に基づくバンド計算では評価することができない。この問題を解決するため,本研究課題では,回転積層構造がつくる長周期構造を模擬したクラスターに関する量子化学計算を行い,その層状構造が生み出す,電荷分布,静電ポテンシャル分布などを実空間上で計算する。ただし,長周期構造を模擬したクラスターは,総原子数が300個を超えるため,その量子化学計算は容易ではない。そのため,このような量子化学計算は国内外でもまだ行われていない。そこで,今回,分子科学研究所,計算科学研究センターのグループリーダーである江原正博教授との協力研究により,さまざまな二次元層状物質に関する大規模量子化学計算を実行する。江原教授はこれまで,基礎科学から応用科学に亘る幅広い研究分野で,量子化学計算を活用した理論研究を行ってきた実績を有している。江原教授との協力研究により,まだ十分に明らかになっていないモアレポテンシャルに関する新たな知見が得られるだけでなく,二次元層状物質の実空間上での電子状態に関する理解がさらに深まるものと期待される。
実験 / Experimental
HR-TEM観察を行った六方晶窒化ホウ素の回転積層構造を模擬したクラスターを用いて,密度汎関数法による大規模量子化学計算を実行した。モアレポテンシャルの周期および分布は,回転積層角に大きく依存することが知られている。そこで,本研究では,積層角を変化させながら,モデルクラスターの部分構造最適化を行い,電荷分布や静電ポテンシャル等を計算した。その計算結果を,実験で得られたポテンシャル分布と対比させ,実験結果の妥当性を検証した。
結果と考察 / Results and Discussion
計算によって得られたモアレポテンシャルが,電子線回折の逆フーリエ変換から得られたポテンシャルとほぼ一致することがわかった。さらに,計算結果から,ポテンシャルの周期性は,相対する窒化ホウ素面の,窒素-窒素,およびホウ素-ホウ素の重なりの程度に由来することが明らかとなった。本計算結果は,電子線回折像の逆フーリエ変換がモアレポテンシャルを示すという推察を裏付けるものである。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
実験および計算結果は学術論文として投稿が終わり,現在査読中である。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件