【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.05.16】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
24JI0048
利用課題名 / Title
有機電子デバイスの高効率化に向けた無機・有機複合材料の開発
利用した実施機関 / Support Institute
北陸先端科学技術大学院大学 / JAIST
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
エレクトロデバイス/ Electronic device,電子分光/ Electron spectroscopy
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
大久保 貴志
所属名 / Affiliation
学校法人近畿大学理工学部エネルギー物質学科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
村上達也
利用形態 / Support Type
(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
JI-013:X線光電子分光装置
JI-014:大気中光電子分光装置
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
本研究では、有機EL素子、有機電界効果トランジスタ、有機薄膜太陽電池などの有機電子デバイスへの応用を目的として、無機・有機複合材料の開発を行っている。特に、ハロゲン化銅と多様なπ共役配位子を組み合わせることで、半導体特性を有する各種の配位高分子を合成し、その構造および電子状態の解明を通じて、電子デバイスへの応用を展開してきた。今回は特に、有機EL素子のホール注入層としての利用を想定した無機・有機複合材料について、光電子分光測定によりその仕事関数を決定することを目的とした。
実験 / Experimental
本研究室では、ハロゲン化銅とπ共役有機配位子を組み合わせることで、さまざまな無機・有機複合材料を合成し、その光学特性や電気伝導性などの物性評価を行っている。特に、ヨウ化銅(I)(CuI)と、有機EL素子のホール注入層として広く用いられているHAT-CN6を組み合わせることで、導電性を示す新たな無機・有機複合材料を合成できることを見いだしている。最近では、この複合材料をスピンコート法により成膜し、ホール輸送層として用いた有機EL素子が、HAT-CN6単体を真空蒸着法により成膜して作製した素子と同程度の発光輝度を示すことを確認した。すなわち、本研究で得られた無機・有機複合材料を用いることで、湿式プロセスによる有機EL素子の作製が可能であることが示唆され、将来的に印刷プロセスへの応用が期待される。そこで本実験では、CuIとHAT-CN6の組成比を1:3、1:6、1:9、1:12に変化させた溶液を用い、透明電極(ITO)基板上にスピンコート法で成膜した薄膜と、それらと同じ比率で混合後に溶媒を除去して得られた粉末材料について、光電子分光法(AC-2)により仕事関数の測定を行った。また、比較のためにCuIのみおよびHAT-CN6のみの薄膜と粉末サンプルについても仕事関数の測定を行った。
結果と考察 / Results and Discussion
図1はCuIとHAT-CN6からなる複合材料の薄膜サンプル(a)と粉末サンプル(b)の光電子分光測定の結果を示している。薄膜サンプルにおいては、CuI単体に比べてCuIとHAT-CN6の複合材料の仕事関数が大きくなっており、これはアクセプター性を有するHAT-CN6がCuIと相互作用することでHOMO準位が低下し、その結果として仕事関数が増加したためであると考えられる。一方、HAT-CN6の粉末試料は5.73 eVという非常に高い仕事関数を示したが、薄膜試料では5.21 eVと、CuIとHAT-CN6の複合材料よりも小さい値となった。HAT-CN6は一般に強いアクセプター性を示すが、今回の薄膜では成膜性が悪く、基板のITO(透明電極)の仕事関数が一部観測されてしまったことが原因と考えられる。今後は、CuIとHAT-CN6の複合薄膜について蒸着法などによって成膜性の高い薄膜を作製し、再度測定を行う予定である。これにより、CuIとHAT-CN6の複合材料が有機EL素子のホール注入層として有用である理由を明らかにしていく。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1、CuIとHAT-CN6からなる複合材料の薄膜(a)と粉末サンプル(b)の光電子スペクトル
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件