利用報告書 / User's Reports

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【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.05.15】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

24KT2259

利用課題名 / Title

高感度フレキシブル3ωセンサのためのパリレン膜厚検討とデバイス特性評価

利用した実施機関 / Support Institute

京都大学 / Kyoto Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

フレキシブルセンサ,流体,熱物性,熱計測


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

廣谷 潤

所属名 / Affiliation

京都大学 大学院工学研究科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

KT-251:パリレン成膜装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

流体やソフトマテリアルの熱物性計測を目指して3ω法に基づく高感度なセンサを開発している。3ω法とは基板上に作製した薄膜電極に試料を垂らし、交流電流を流した時の出力電圧の角周波数3ω成分から試料の熱物性値を計測する手法である。本研究ではこれまで、従来よりも高感度に計測することを目的として厚さ1ミクロン以下のパリレン薄膜を基板とするセンサを作製に成功している。本課題では、パリレンの膜厚が薄いほど感度が向上することを理論解析によって確認し、より薄いパリレン薄膜を基板とする3ωセンサの作製を目指した。

実験 / Experimental

まず、3ωセンサの感度とパリレン膜厚の関係を理論解析で確かめた。ここで感度は、測定対象のサンプルの熱伝導率がわずかに変化するとしてその前後で出力信号がどの程度変化に相当する値として定義した。
続いて、パリレンの膜厚を制御するために、パリレンコーター(KT-251)に入れるダイマーの質量とパリレン膜厚の関係を実験によって確かめた。ここでは様々なダイマー量でパリレンをシリコン基板上に成膜して、その膜厚を光干渉膜厚計を用いて測定した。
最後に膜厚測定の結果に基づいて800 nm程度を目指してセンサを作製した。そして作製したセンサを評価するために水とイソプロパノールの熱伝導率を計測した。ここでは、サンプルの熱伝導率をフィッティングパラメータとして、理論モデルで導き出した解析解にロックインアンプで測定した3ω電圧の実験データをフィッティングして熱伝導率を計算した。

結果と考察 / Results and Discussion

まず、3ωセンサの感度とパリレン膜厚の関係を計算した結果をFig.1に示す。これより、1, 10, 100Hzのどの周波数でもパリレンが薄いほど感度が向上することがわかった。また、一般的に用いられている、ガラスを基板とする3ωセンサと比較すると、1 μm以下になると従来よりも感度が向上することがわかった。よって、1 μm以下を目指し、本課題ではこれまでに作製したものよりもさらに薄い膜厚800 nm程度を目指した。
続いて、ダイマー量とパリレン膜厚の関係をFig.2に示す。これよりダイマー量とパリレン膜厚には線形関係があることがわかり、これを線形近似することで、800 nmを目指す場合、ダイマー量は1.1 gに設定すれば良いとわかった。
そして実際にダイマー量1.1 gとしてパリレンを成膜し、それを用いて3ωセンサを作製し、膜厚0.77 μmのパリレン薄膜を基板とするセンサの開発に成功した。作製したセンサをFig.3に示す。作製したセンサを評価するために、熱物性値が既知である水とイソプロパノールをサンプルとして3ω法に基づく熱伝導率計測を行った。周波数を1〜100 Hzで変化させ、各周波数における電圧の3ω成分をロックインアンプで測定し、その値から液体の熱伝導率を算出した。作製したセンサを用いて算出した水とイソプロパノールの熱伝導率はそれぞれ0.532 Wm-1K-1, 0.138 Wm-1K-1となり、文献値から13 %以内の精度で測定することに成功した。文献値からの乖離の原因として、3ω法での理論モデルでは考慮していない薄膜抵抗内での熱伝導や各層間の界面熱抵抗などの影響が考えられる。今後はこれらの影響を考慮した理論モデルを構築して測定精度の向上を目指すとともに、パリレン薄膜のフレキシブル性を利用してソフトマテリアルなどの他材料の熱伝導率計測への応用も目指す。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig.1 Sensitivity vs. parylene thickness



Fig.2 Relationship of parylene thickness and mass of dimer



Fig.3 Fabricated 3ω sensor on parylene whose thickness is 0.77 μm


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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