【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.04.10】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
24TU0024
利用課題名 / Title
薄膜デバイスの微細加工プロセスの検討
利用した実施機関 / Support Institute
東北大学 / Tohoku Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
磁気センサ/Magnetic Field Sensor,TMRセンサ/TMR sensor,強磁性トンネル接合/Magnetic Tunnel Junction,量子スピントロニクスセンサ/Quantum Spintronics Sensor,CVD,スパッタリング/ Sputtering,光リソグラフィ/ Photolithgraphy,膜加工・エッチング/ Film processing/etching,高品質プロセス材料/技術/ High quality process materials/technique,センサ/ Sensor,スピントロニクスデバイス/ Spintronics device,量子効果デバイス/ Quantum effect device
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
熊谷 静似
所属名 / Affiliation
スピンセンシングファクトリー(株)
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
TU-063:i線ステッパ
TU-215:イオンミリング装置
TU-154:住友精密TEOS PECVD
TU-206:アルバックICP-RIE#2
TU-161:自動搬送 芝浦スパッタ装置(冷却型)
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
磁気センサはスマートフォンの方位計測、回転・変位の計測、インフラ等の非破壊検査、バッテリーなどの電流計測、人体の作る生体磁場の計測など、様々な場面で用いられる現代社会に必要不可欠な素子である。強磁性トンネル接合(MTJ)を磁気センサとして用いたトンネル磁気抵抗(TMR)センサは、室温動作、低消費電力、低作製コストといった特徴を有する磁気センサであり、これらの特徴から、TMRセンサを高感度・低ノイズ化することで他のセンサを置き換えられる可能性がある。
TMRセンサの感度(シグナル)はMTJに印加する電圧に比例し、一方でノイズは単位面積当たりの電圧に比例することから、TMRセンサの高感度・低ノイズ化のためには素子サイズ、ひいてはチップサイズを大きくすることが有効である。しかしながら、一般に大きなチップサイズに、多数のMTJを形成することは歩留まり上の困難さがある。本課題ではi線ステッパーによる高精度なフォトリソグラフィや、エンドポイント検知が可能なエッチング装置を用いるなど微細加工の条件を最適化し、TMRセンサ作製の歩留まり向上を目指した。
実験 / Experimental
4インチφ基板にMT多層膜の成膜を行い、従来の3 mm ×3 mmのセンサチップより大型な、7 mm×7 mmのセンサチップの作製を試みた。レジスト塗布を行い、i線ステッパ―(キヤノン/FPA-3030i5+)を用いてパターン露光を行った。現像を行いレジストパターンを形成し、イオンミリング装置(エヌ・エス 伯東/20IBE-C)を用いてイオンミリングを行った。ミリングストップ点の決定にはイオンミリング装置に設置されたSIMS質量分析を用いた。層間絶縁層の形成やAl電極などの形成を行い、磁気抵抗曲線をウェハ全面にわたって測定した。
結果と考察 / Results and Discussion
Figure 1に測定を行ったウェハの最小抵抗値(Fig. 1(a))と抵抗変化率であるTMR比(Fig. 1(b))を示す。4インチφ基板上に72個の7 mm×7 mmのTMRセンサチップが形成される設計である。トンネル障壁層であるMgO膜厚を右上から左下に向かってなだらかに膜厚が厚くなるように成膜しており、MgO膜厚を反映して抵抗値がなだらかに変化していることが分かる。72個すべてのチップの内、抵抗値の異常、すなわち抵抗値が周囲と比較して半分程度に小さくなっているものはわずか1個しかなく、99%以上の非常に高い歩留まりでセンサ素子が形成できている。
TMR比は126%~161%もの高い値が得られた。MgO膜厚の減少によりTMR比が低くなる傾向が見られているが、これはMgO層以外の寄生抵抗の影響であると考えられ、微細加工の分布ではないと考えられる。抵抗値の異常、すなわち周囲の値よりも半分程度小さくなっている試料でも周囲と遜色ない高いTMR比が得られているため、抵抗値の異常はトンネル接合のリークやMgO障壁層のの変質等ではなく、例えば電極層の形成不良によるMTJアレイの直列数の減少等が原因であると考えられる。いずれにせよ、非常に高い歩留まりでTMRセンサが形成できていることが分かり、7 mm×7 mmの比較的大きなチップでの微細加工条件の最適化に成功したといえる。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig. 1 作製した4インチφウェハ上のTMRセンサチップの磁気抵抗曲線の測定結果。(a)最小の抵抗値(Rmin)と、(b)抵抗変化率であるTMR比。
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
検討を進めるにあたり多大なるご協力を頂きました東北大学ナノテク融合技術支援センターのスタッフの皆様に感謝申し上げます。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件