【サービス停止のお知らせ】ご迷惑をおかけしますが,どうぞ宜しくお願いいたします.
 11/16(金)14時~11/19(月):本サイトの閲覧できなくなります。
 ※11/20(火)より,URLが https://www.nanonet.go.jp/ に変更になります.(旧URLからは,自動的に転送されます.)
 11/22(木)14時~11/26(月)10時頃:本サイトの閲覧および問合せフォームからのお問い合わせ受付ができなくなります.
 

ナノテク情報

合成・材料

わずか2ステップで!? 2重らせん分子の簡単・便利な合成が可能に ~二つのペンタセン分子が捻じれ合った状態で結合~

 大阪大学と名古屋大学は2015年3月17日,大阪大学大学院工学研究科の関 修平教授,名古屋大学大学院工学研究科の八島 栄次教授らの共同研究チームが,N-ヘテロペンタセンを用いて一つの分子内に二つのらせんを有する分子(ダブルヘリセン)を簡便に合成する手法を開発したと発表した.本研究の一部は,文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム支援事業 名古屋大学・分子・物質合成支援制度を利用して行われ,成果はドイツ化学会誌Angewandte ChemieのInternational Editionで公開された(注).

 ベンゼン環をらせん状に連結した分子であるヘリセンには,右巻きと左巻きの二種類が存在し,それぞれの向きに起因する光学特性(旋光性,円偏光二色性・円偏光発光)を示す新規な光学材料として応用研究が進められている.しかし,ヘリセンのらせん構造を構築するこれまでの方法は,合成段階で多数の工程が必要であったり,原料に特別な修飾を施さねばならなかったりするため,一般的原料から簡便に合成できる状況ではなかった.

 本研究では,平面状分子であるN-ヘテロペンタセンを酸化的カップリングにより,直接連結することでダブルヘリセンの合成が行われた.本手法では,二つのN-ヘテロペンタセン分子(6位と13位の炭素を窒素で置換したペンタセン)を,双方の分子の6位の窒素と14位(または5位)の炭素の間で互いに脱水素して縮合することにより,一箇所だけが結合した中間体(十字型二量体)を経て,2ステップで,新たに生成する環状構造を挟んで二つのペンタセンが結合される.この環状構造の面は,元のペンタセン分子の面とは平行にはならないので,二つのペンタセン分子は捻じれた状態で結合されたダブルヘリセンとなる.6位の窒素と結合する他方の分子の炭素が14位の場合は右巻き,5位の場合は左巻きのヘリセンになる.本方法で合成されるダブルヘリセンには右巻きと左巻きの二種類の分子が混在するが,研究グループではこの二種類の分離にも成功している.得られた分子のダブルヘリセンの構造は,X線構造解析で確認されている.原料のN-ヘテロペンタセンは,6位と13位を窒素で置換した化合物ばかりでなく,6位を窒素,13位を酸素で置換した化合物でもダブルヘリセンが合成された.本研究のダブルヘリセンは,分子内に一つのらせんしか持たない通常のヘリセンに比べて骨格が硬く,高温でもらせんの向きを安定に保持できるという.

 開発された手法は,一般的原料を用い,ヘリセン合成のための新たな置換基を導入する必要が無く,簡便で適用性も広いので,ヘリセン以外の非平面共役系分子の合成にも応用が可能という.今後,研究チームでは,合成したダブルヘリセンの円偏光発光や電荷移動度特性などの固体状態における物性を明らかにし,有機ELや有機電界効果トランジスタなどへの応用を目指している.また,ヘリセンは圧力によってらせんがバネのように伸縮する可能性があるため,圧力印加に伴う物性変化の検討や,さらに,らせんの巻き方が大きいダブルヘリセンの合成も目指すという.

(注)Daisuke Sakamaki, Daisuke Kumano, Eiji Yashima and Shu Seki, "A Facile and Versatile Approach to Double N-Heterohelicenes: Tandem Oxidative C-N Couplings of N-Heteroacenes via Cruciform Dimers", Angewandte Chemie International Edition (Early View), 2015, DOI: 10.1002/anie.201502273, Published online: 18 Mar. 2015